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030:中継地ユーゼス/バンテリアス領

叔父様と合流した一行・・・頑強な警備体制で進軍です。

 叔父様が十人の騎士を従えて合流してくれたようです。


 お父様、叔父様、ランドグリスお兄様にロアーナ、レイチェル、ニルソン、そして十人の騎士達。と、ガイア。総勢十七人と一匹で馬車を護衛してくれるのだ。ほんの少し前まで、六人プラス一匹だったのに一気に増えて心強い。


 ここの領地の警備隊の声は、もう聞こえてこない。


 自分にお姉様、ライネもさっき起こった騒動のおかげで、おしっこを漏らしてしまったようだ……。お姉様に至っては、ドレスのスカートも濡れてしまったので、全部脱いでお着替えする必要があった。


 お姉様の尊厳を守るため、決して着替えている様子を見ないよう、お母様のお乳を頬張って背中を向ける。


 メリリアに呼ばれ、そそくさとリリアが着替えを持って馬車に入ってきた。――早く! お姉様を着替えさせてあげてください! 優秀なお姉様でもまだ小さいのです。あんな怖い事が起きたのだから、しょうがないのですよ。……はい。


 ビチャッと床に濡れた服が落ちる音が聞こえた。

 けど……自分には聞こえてませんよ。全然聞こえてません。安心して着替えてくださいな。


「エルステア様のお着替えが済みました。次はアリシア様のおしめを替えましょう」


 無事、お姉様の着替えが完了しました。

 もう一安心です!


 座席に寝転がされて、ドレスのスカートが捲られ下着を脱がされる。おむつを替えようとするお母様の手が止まった。想定外に外に漏れていたようで、結局ドレスも着替えた方が良いと言われた。


 パン○ースとか、ムー○ーマンみたいな超吸収素材のおむつではない。昔馴染みの布おむつなのでキャパオーバーすると強く押さなくても浸み出してしまう。


 これも仕方のない事なのだ。うんうん。


 どうでもいい自己弁護をしている間に、リリアがまたドレスと下着を取りに足早に出て行き戻ってくる。


 自分の着替えはお姉様に見られていても平気です。むしろこちらの恥を晒す事で、お姉様を守っている気になりますので! 自分まだ幼児ですから、これっぽっちも恥ずかしいと思わないです!


 メリリアにドレスと下着におむつも靴下も全て脱がされ、馬車の中ですっぽんぽん。うっ、さっきまでの勢いはどこへ行ったのか、流石に特殊過ぎるこのシチュエーションはちょっと恥ずかしくなってきた。


 お母様に濡れたところと女の子の大事な部分、おしりを丁寧に拭いていただいて新品のおむつを付けた。新品おむつの肌触り最高ですね!


 そのままお母様からメリリアに交代。下着、ドレスを着せてもらい、靴下、靴を履いて着替え終わりです。


 ライネもおむつを交換してもらって、皆んなスッキリ爽やかになりました。


 お母様もドレスを着替えるそうで、またリリアがお上品なスピードで行って戻る!

 すいませんね、ご迷惑掛けてしまって。自分が漏らしたせいで、お母様の膝の上が湿っていました。


 漏れないおむつを開発しよう! とか思っても、残念ながら自分にはそんな知識も能力も無く……。


 とりあえず、おむつの事は置いといて、お母様もお着替え完了しました! これで今度こそ、皆んなスッキリです!




 メリリアが外に出て行き、馬車の中の支度が済んだ事をお父様に伝えに行った。


「旦那様がお呼びでございます。お嬢様方もご一緒に向かわれますか?」

「ええ、ここに残すのは今は良くないわ。共に向かいましょう」


 外にいる騎士達に、自分達が漏らしてしまった事が知られていないと良いのだけど。馬車の目の前にズラリと揃っていたら流石に馬車から出るに出られないと思う。


「貴女達、お父様のところに行きます。お母さんの後ろからついてくるのですよ」


 お母様が先に出て、続いて馬車から降りた。


 側にはメリリアとリリアが居るだけだ。辺りには騎士は1人も見当たらないので安心した。遠くの方に人だかりが出来ているから、あれが騎士達なのかな。


「こちらですよ、お母さんの後ろから出て来てはダメですよ。いいですか?」

「はい、お母様」


 お母様の陰に隠れるように連なる馬車の先頭に向かう。前が全く見えないので、お母様の足元だけ見て前に進む。


 しばらく歩いてついて行くと、ピタッとお母様のスカートの揺れが止まる。


「叔父様、御機嫌よう。救援ありがとう存じます。馬車に何事もなくて良かったですわ」

「おお、ユステア。無事で良かった。子供達は無事か?」

「お陰様で傷ひとつございませんよ」

「そうか、それは良かった。我等が来たからにはもう安心だ。これより其方達の護衛に加勢する」


 叔父様に挨拶をしたかったけど、お母様は前に出ようとする自分を制止し、ニッコリ微笑む。


 前に出てはいけないみたいです。何か理由があるはずと思いその場に留まった。その様子を見てお母様はウインクする。


 お利口でしょ! ちゃんと察しましたよお母様!

 理由は分からないけど……。


「ユステア、この先にまた何が起きてもおかしくは無い。レオナールと騎士の一部を先行させ進む事にする」

「わかりましたわ、ディオス。この子達の馬車の周辺はランドグリスとガイアにお願いしてもいいかしら」

「ああ、そのつもりだ。レオナールの騎士は既に後方の荷馬車の護衛についている」


 ガイアも戦力の1人なんだ。いつも暖炉の前でゴロゴロしているか、庭で駆け回って遊んでいるだけなんだけど頼れるんだね。


「ガゥッ! ガゥゥッ!」


 ガイアがいつのまにか自分の後ろに回り込んで吠えた。


 あっ、そこに居たの?

 ごめんごめん、悪く言ったつもりはないよ。


「ガゥッ!」


 当然だと言わんばかりに吠えてきた。

 さっきまで自分の描いたラクガキに未練たらたらだったくせにー!




 叔父様達が先を行くのを見届けてから馬車に戻る。


 前方の安全を叔父様達が確認して進むことが出来たので、無事に中継地点の街ユーゼスに到着できたようです。道中で何か起きていたかもしれない。


 けど、お母様の胸と馬車の揺れが見事に融合し、至福の眠りを味わっていたので分かりません。


 ここに皆んないるので良いのだ!

 これ以上、厄介事には関わりたくないのです。


 既に陽は落ち暗くなっているはずなのに、ユーゼスの街は賑わっている……。見たこともない色々な種類の看板が付いたお店がたくさん並んでいて明るかった。――まるで、新宿の歌舞伎町とか名古屋の栄の繁華街並みに光っていて眩しい。


 ユグドゥラシルに向かう人達が利用する街だけ、あって栄えてるんですね。夜じゃなければお店を回ったり出来たんだろうか。ちょっと残念。


 しばらく道なりに進んでいると馬車が停車した。


 少し待ってから、また馬車が動き出す。どうして止まったのか気になり、窓のカーテンからチラリと外を見る……。そこには、道のど真ん中で踏み台に乗り二本の旗を振っている人が見えた。


 ほぁっ? あれはもしや、手旗信号!?

 馬車の交通整理を旗もってやってるの? マジで?

 幾つもの道が中央で交差しているのに、二本の旗で馬車を捌いてますよ!


 旗を振っている人が進む方向を示すと、道に白く光るラインが浮き出る。魔法で白線引いてる感じ?何これ、旗振りおじさんめちゃカッコいいじゃん!


 魔法とか魔道具があるくらいだから、信号機くらい作れるんじゃないの? 何故、手旗信号なのだ……おまけに魔法で白線敷いて誘導とか半端ないわ。


 中途半端に文明が発達してたり退化してたり、すごいちぐはぐな世界ですね。


 冷蔵庫とか洗濯機、炊飯器のような家電類は今まで目にした事はない。当然だけど電気に電線、電信柱も見た事が無い。家にある明かりやランタンは魔道具だし。


 やっぱり魔法が使えないと何かと不便そうだ。


 手旗信号の旗振りおじさんを眺めながらぼんやりそんな事を思った。


 またしばらく馬車は道なりに進んでいく。この街って結構規模が大きいようで、着いてからの移動が長い気がする。街に着くまで寝ていたから、この街そのものの規模が分からないっていうのもあるけど。


 馬車がようやく止まり扉がノックされる。


「ユステア、到着したぞ。皆出てくるがよい」


 お父様の声が聞こえると、メイノワールが扉を開けてくれた。外の光が差し込んでくる。


 お母様はお父様の差し出された手を取り馬車を降りる。そのまま今日泊まるであろう宿泊施設に入っていく。柱や扉、窓枠に装飾が施されていて結構お高そうなホテルって感じだ。


 お姉様は叔父様にエスコートされて降りていく。


 さぁ自分の番ですね! 誰がエスコートしてくれるのですか。と思っていたら、ランドグリスお兄様がエスコートしてくれるようです。


 おぅ、一番そういう事に無関心そうな方にエスコートされますよ! とは言え、お兄様からいただいた超巨大ぬいぐるみは未だ健在で大事にしてますよ。もしかしてお兄様は小さい子がお好みですか?


「ランドグリスおにいさま、ありがとうぞんじます」

「ははは、アリシアはなかなかに女の子だな。ぽんって馬車から飛び降りてくるかと思ったが驚いたよ。」


 ははは、そうでしょうそうでしょう。飛び降りてみたい気もしないでもない。けど、間違いなく着地した瞬間にスカート踏んづけて顔面強打するのは想像に難くないのだ。――無茶はしないのですよお兄様。


「これから皆んなで夕食だが、アリシアはまだ起きていられるのかい?」

「このまちにくるまでねむってました。いまはおめめぱっちり、げんきですよ」

「そうであったか。ならば大丈夫であるな。では、俺が案内しよう。お嬢様、どうぞこちらへ」


 ランドグリスお兄様が冗談交じりで手を差し出す。

 その手を取って、夕食へ向かった。


 体育会系イケメンお兄様に招かれ歩く。

 俯瞰で想像して吹き出しそうになった。

 ランドグリスお兄様が悪い訳ではないのだ。

 自分の妄想力が火を噴いてしまった。


 ――これ、なんて乙女ゲームですか?


 心の中で悶絶しながらこの状況を楽しんだ。

 ランドグリスお兄様はキリッと笑顔を向けながら夕食会場に案内してくれた。


 乙女ゲームっぽい主人公を短いながら体験。

 だが、これ以上気取って調子に乗れば、中身おっさんでしたーってボロが出るのがオチ。そんな事して人生バッドエンドは御免なのです!


 妄想はここまでにしておこう……。



 ランドグリスお兄様に席まで案内してもらい、お母様に抱っこされて椅子に座った。


「ランドグリス、アリシアちゃんを連れてきてくれてご苦労様です」

「このような可愛いお嬢様をエスコートする大任をいただき光栄でござます」

「あらあら、ランドグリスも女の子の扱いが達者になったのですね」

「聞き捨てならんな、ランドグリス! 我の娘は百年待っても嫁にはやらぬぞ!」


 お母様とランドグリスお兄様の会話にお父様が横から割り込み騒ぎ出した。


 お父様の勢いにランドグリスお兄様が圧倒されている。


 うんうん、どこの世界でも親バカっていますよね。

 自分は嫁に行くとか行かないとかそういう次元にいないけど、お姉様が嫁に行くとかなったら……お父様だけじゃなく自分も阻止しますね! シスコン? そうですけど何か?


「旦那様、お食事の用意が出来ましたのでお運びしてよろしいでしょうか」

「うむ、構わぬぞ。我は腹が減ってしょうがないのだ。持ってまいれ」


 お父様がメリリアに指示を出すと、我が家のメイド達によって料理が運ばれてくる。


 いつもと変らない光景に安心感を覚えた。でも、ここ一応、宿泊施設というかホテルだよね? 何で自分達でご飯を用意しているのだろう。ちょっと不思議だ。


 食事の席には、お父様、お母様、お姉様に叔父様とランドグリスお兄様、そしてガイアだけだ。一緒に同行していたロアーナとニルソンは扉の前で待機している。レイチェルとその他の騎士達は既に宿泊施設内の部屋を警備しているそうだ。


 中々厳重な警備体制です。もうこれだけ人がいれば安心して眠れる気がする! いっぱい騎士を連れてきてくれて、ありがとう叔父様。


 夕食の席では、ママ母の話やグレイの成長具合などいろいろ叔父様やランドグリスお兄様から話が聞けた。


 ママ母様は自分やお姉様が居なくなってから、女の子が欲しくてしょうがなくなっているとか、グレイは魔法を習いだしたけど上手くいってないけど、剣の腕は小さいながらにかなり上達しているだとか、離れてから半年以上経った皆の様子を教えてくれた。


 もう少し自分も成長出来たら……会いに行きたいなぁ。




 出してもらった料理を美味しく食べた後は、お茶を飲みながら明日からの行程をお父様が説明してくれる。


「明日はバンテリアス領を早々に抜け、グルガイス領の境界門まで進む予定だ。可能であれば、ユグドガイズ領まで入りたい。強行する事になるがよろしく頼む」

「こちらは問題ない。バンテリアス領の動きがやはりあまり良くないな。我らは早朝に境界門付近まで向かい様子を探ってこようと思うがどうだろう」

「境界門に何かあるとは考え難いが、万全を尽くしたほうが良いだろう。レオナール、手間をかけるが頼む」


 ふむ、明日は境界門を二つも通り抜けるんだ。距離感全然分からないけど、とりあえずそういう事なんですね。


 うんうんと頷いて話を聞いていた。


 お姉様の膝の上で大人しくしていると思ったライネは、既に眠っているようだ。この子、寝ると完全に無防備なのだ。野生感がまるでないけどいいのかな。


「ガウゥゥッ! ガゥッ!」


 ん?大丈夫って言ってる?


「ガゥッ!」


 なんかガイアが得意気に吠えているから、きっと問題ないんだね。でも、ガイアを見習ったら暖炉前の住人が増えるんじゃ……。


 明日の行程を確認が終わり散会する。


 男性は2階の部屋で女性は三階の部屋だ。


 大きくてちょっと豪華そうな宿泊施設なのにお風呂はないそうだ。湯舟に入って嫌な事も全部忘れたかった……とても残念。


 1階からメリリア達がお湯と大きい桶を部屋に運んできてくれる。お母様から順番にお姉様、そして自分と身体を拭いてもらい、きれいなおむつとネグリジェを着せてもらう。


 身体を温かいお湯で拭いてもらうだけで、気分が爽やかになった。


 いつも通り、ベッドに横たわったお母様からお乳をいただく。お母様が隣にいるだけで、自然と気持ちが落ち着いてくる。吸い込まれるように眠りに落ちた。今日はいい夢が見られそうです。




 ――中継地ユーゼスの出発は早かった。


 まだ陽が昇っていない中、叔父様達は出発していく。


 自分達は簡単な朝食を取ってから、後を追いかけるように出発する。


「レオナール、報告は小まめに頼む。状況によっては迂回路も検討したい」

「ああ、任せておけディオス。最悪の場合は境界門を潰してでも通過しよぞ」

「ベイトンが血相変えてすっ飛んで来るやもしれんな。彼奴にはたっぷり礼をせねばなるまい」

「ディオス、レオナール。あまり無茶をしないでくださいね。この子達もいるのですから」


 お父様と叔父様のかなり過激な言葉に目を丸くする。


 うん、本当に無茶はダメですよ。


 でもちょっとくらいなら……邪魔する奴はボコボコにしてやっても良いと思います!


「では、先に行っているぞ!」

「よろしく頼む。境界門で会おう。」

「叔父様、お気をつけて。」

「おじさまいってらっしゃい。」


 先行する叔父様の頼もしい背中が小さくなるまで目で追って、お母様と一緒に宿泊施設に入った。


 万全の体制で望むバンテリアス領の境界門――。


 ユーゼスで安心して一晩過ごせるように安易に通過できるのか、それともまた酷い目に合いそうなるのか。どちらに針が触れるのか……不安な気持ちが頭を過る。

ユーゼスの街を満喫する事なく次のポイントへ。

先遣隊を放ち厳重な警戒態勢で臨みます。

バンテリアス領の動きは何を意味しているのか。

アリシアちゃんの不安は解けないままです。


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いつもお読みいただきありがとうございます。

合わせて誤字報告や感想、掲示板へのコメントありがとうございます!


読んで面白いと感じていただけましたら是非、ブクマや評価をいただけますと幸いです。

毎日一話更新を、現在も継続中です!!

どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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