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028:ユグドゥラシルへ続く道/バンテリアス領

ユグドゥラシルへの道は続くよどこまでもー

「領主様の道中の安全を願っております。女神エンリエータの加護があらんことを。」


「不在の間、この西の境界門の出入りを禁止する触れを出した。従わぬ者は厳罰に処せ。皆の者、くれぐれも頼んだぞ。」


「はっ!この命に代えても門をお守りいたします!」


 お父様、なかなか物騒なお話をされていますよ。


 たしかに、領主一族が全員総出で外に出ちゃうから何かあったら困るもんね。


 代理領主とか任命されてたりするのかな?


 子供なので、お父様が何をどう対応しているのかまで教えてくれない。結構平和な気がするけど、お父様の警戒はなかなか厳重な気がする。


「出発!」


 お父様の号令でゆっくりと馬車が動き出した。


 窓の外を見ると、兵士達が左手を胸に当てている。


 たぶん、啓礼だよね。


 全員で揃って行うとやっぱりカッコいいね!


 自衛隊とか警察、消防とかビシッと啓礼する姿は良いよね!残念ながら、学生の頃に航空自衛隊に志願して落ちた身としては、今でも啓礼に憧れちゃうわ。


 外の兵士の真似をして自分も啓礼して返してみた。


「あらあら、アリシアちゃんカッコ良いですわよー。お母さんにもカッコいい姿見せてくださいな。」


 啓礼した姿を強請るお母様。


 最近、ワンアクション毎にお母様が反応して見たがるのですが。悪い気はぜんぜんしないので、お母様にも啓礼の真似事をして見せた。


「アリシアちゃん素敵ですわ。もうなんて可愛いのでしょう。」


「お母様、アリシアちゃんは何でも様になりますの。」


「ピピーッ!」


 お姉様もライネも反応した。

 メリリアは笑顔で見ている。

 いいよーいいよーもっと見てくださいな。

 皆が喜んでいるのだし道化にでも何でもなるさー!


 皆で旅行に行けたテンションで、可愛いポーズをいっぱいサービスした。




 境界門の中をくぐり抜けると、陽射しが差し込む。


 ここから中継地のあるバンテリアス領になるそうだ。


 途中で叔父様達と合流し中継地ユーゼスに入る段取りになっている。


 本当に久しぶりだよね叔父様にお会いするの。


 相変わらず、お父様と同じようにマッチョに磨きが掛かっているのかな?


 ランドグリスお兄様とお父様が、今朝方にお互いの筋肉を褒めたたえている光景にはドン引きでしたけどね。玄関ホールで上半身裸になって何をやっているのかと。


 まぁ、ランドグリスお兄様が細マッチョで良い感じだったのは眼福でしたけどね。


 筋肉いいよ、筋肉。


 この身体じゃ、どう頑張ってもマッチョになれる気もしないし、マッチョになったらお母様もお姉様も卒倒しそうだから、他人の筋肉を愛でて楽しもうじゃないの。




 バンテリアス領は農業が盛んなのか、辺り一帯畑が広がっている。


 小さい森が点々としていて、その中には小さい家屋がいくつか見える。


 なんかエルフの里がいっぱいあるような感じだ。


 街道にはビッシリ石畳が敷かれていて側道まである。


 叔父様の家から自分の家までは土の道だったよなぁ。


 中継地があるって事は、そこそこお金持ちな領地なのかもしれないね。


「おかあさま、ばんてりあすはおかねもちなの?」


 素朴な疑問をお母様に聞いてみた。


「そうねー。そこまで余裕があるとは思えませんけど、気になりますの?」


「みちにいしがいっぱいなの。」


「あら、アリシアちゃんは凄いところに気が付くのねー。賢いですわよー。」


 お金持ちの領地ではないらしいけど、石畳の道の理由は聞けてない。お金が無くてこんな良い道作れるの?


「この道はね、ユグドゥラシルへ向かう巡礼者達の行き帰りをし易くするために国が造ったのですよ。毎年3回、綻んだところをちゃんと整備しているから、綺麗な道が維持されているの。」


「そうだったのですね。おしえてくださってありがとうぞんじます、おかあさま。」


「ふふ、アリシアちゃんはいろいろ興味を持ってくれるからお母さん嬉しいですわよ。気になった事は何でも聞いてくださいね。」


「はい、おかあさま。」


 国が道路整備をやってるんだ。

 なかなか近代的?

 国土交通省の整備局みたいな感じかな。


 という事は、整備する時期になると怒涛の工事ラッシュで、馬車が渋滞しまくる事もあり得る訳だ。


この世界でも馴染みの光景があると思うと顔がニヤケてしまうよ。


 いろいろ発見してはお母様に聞いてるのを繰り返しているうちに、脳みその知識量が増えすぎたせいでオーバーヒート。ちょっと頭が火照ってきて眠くなる。


 お母様におしめを代えてもらい、しばし眠る事にした。


「アリシアちゃん、いっぱいお勉強したから疲れちゃったのね。ゆっくりおねんねしてね。」


 起きたら叔父様達と合流しているのかな?


 それともまだかな?


 そんな事を考えながら、お母様に背中をさすってもらっているうちに意識が落ちた。



 起きた時には、少し陽が陰っている。


 もう夕方くらいかな。


 馬車の揺れが思った以上に気持ち良かったようだ。


 寝る前に感じていた火照った感じもしない。


「おはよう、アリシアちゃん。気分はどうですか?」


「はい、すっきりげんきです。」


「お目覚めですのね。ふふ、アリシアちゃんの寝顔、とても可愛かったですよ。」


「ピィピッ!」


 馬車の狭い空間なので、お母様とお姉様そしてライネから可愛いコールの波状攻撃。これは思った以上に勘違いしてしまいそうでよろしくないと思います。


自分は確かに可愛い容姿だ。だが、この言葉を鵜呑みにして調子に乗ってはいけない。


「おじさまはもうこられたのですか?」


「ふふ、叔父様はまだ着いてはいないようですわよ。おそらく、明日のお昼くらいになるかもしれませんわね。」


 自分達の車列は馬車9台。叔父様の家から帰ってくる時より多い。


 先頭はお父様の荷物でメイノワールが馬車を動かしている。続いてお母様の荷物が積まれた馬車をリリアとリンナが担当。その次が自分達の乗る馬車でリフィアが手綱を握っている。


後ろから続く馬車には自分とお姉様の荷物が載っている。手綱を握っているのはメイノワールが雇った御者さんだ。その後ろ5台の馬車はメイノワールやメリリア達が仕事で使う道具や料理道具、食料、テント、着替えなどが満載になっている。


 お姉様の祈念式用の衣装や装飾品は、大事があると大変なのでこの馬車に積まれている。


 この馬車を護衛するのは、お父様にランドグリスお兄様、ロアーナ、レイチェル、ニルソンの5人だ。


 車列が長いからこの人数で大丈夫なのかと不安に感じるけど、お父様がいるから大丈夫だよね。きっと何か来ても追い払ってくれるはず!


 今日は、思ったより移動できなかったそうで野営する事になった。


 叔父様との合流予定地までまだ距離があるそうだ。


 街道から少し外れた場所に馬車を止め、皆が馬車から資材を降ろしていく。


 護衛騎士達とメリリア達が連携して、一斉にテントが張られていく。


 テントと言っても自分が知るキャンプで使う物とはちょっと様子が違う。


 どちらかと言えばグランピングって奴かな?


 テントの中は結構広くて、豪華な装飾や天蓋はないけど、いつも使っているのと同じくらい広いベッドがあって、テーブルや化粧台絨毯まで敷かれている。


 なんか凄いね。こんな経験は正直ないです。


 テントの周りでお母様が魔法を唱えている。


 お姉様はその隣で見ているようで、実習を兼ねて教えてるのかな?ちょっと仲間外れな感じで寂しい。


 同じくライネもお姉様に着いていけなかったようなので、抱き寄せてお母様を見ていた。


 お母様が魔法を唱える終わると、テントと馬車を囲うように黄色い楕円の膜が張られた。


 何となく推測だけど結界的なものなんだろうね。これで寝ていても安心的な?


 お母様とお姉様が戻ってきたので、皆で夕食を取る。


 夕食も家で食べる料理と遜色のない物が出てきた。完全な準備が整うとここまで出来ちゃうものなんですか......。


 野営ってなんかこうじゃないよね。


 もう突っ込むのも諦めて大人しくご飯を頂いた。


 今日はさすがにお風呂は無いようなので、メリリアが身体を拭いてくれる。


 ちょっと懐かしいかも。お風呂が解禁される前は良く拭いてくれたもんね。


「メリリア、ありがとうぞんじます。とてもうれしいです。」


 普通だったら記憶に残らないような事でも、覚えていられるって良い事だ。


「もったいないお言葉です。アリシア様。」


 メリリアはそう言いながら、優しい風の魔法で身体を乾かしてくれた。


「それじゃ、そろそろ寝ましょうね。貴女達も馬車移動で疲れたでしょう。しっかりお休みになるのよ。」


 お母様はまだお父様達とやる事があるそうなので、テントを出て行く。


 ライネを間にしてお姉様と寝る事になった。


 うー、いつも隣にいるお母様がいないと不安だなぁ。


 メリリアは不寝番でいるしガイアもベッドの側に横になってるけど......。


 もうちょっとしたらお母様戻ってくるかな?


 少しだけ待ってみよう。


 お姉様もライネもお布団に入るとサクッと寝てしまった。二人とも窮屈な馬車の中で疲れてたんだね。ライネなんて、外が楽しそうなのか退屈なのか知らないけど、何度も外に出ようとしたし。


 だが、自分はまだ寝ない!


 お母様、カムバックー!!




 バチッと頬を叩かれて目が覚める。

 なかなかの一撃です。

 ライネですか?

 自分の頬に乗っかっている何か振り払う。


 振り払った何かを見ると、お姉様の手です。


 お姉様、ちょっと寝相がよろしくないですよ。

 布団もちょっとはだけています。そっと、布団をかけてあげると嬉しそうな笑顔になりました。


 お姉様の寝顔もとても可愛いですね。

 もしかして寝顔見るの初めてかもしれない。

 少しだけ、可愛い寝顔を見ていた。


 部屋の中を見渡すと、薄っすらとベッドを照らす明かりだけで結構暗い。


 テントの入り口にいるはずのメリリアやガイアの姿も見えない。


 当然、お母様もまだ戻ってきていない。


 何か凄く嫌な予感がするけど、ここから動くのも怖い。

 この身体では何かあった時にはどうにもならないので、ジッとしておくのが一番だ。

 緊急性の高い出来事であれば、自分を抱えて逃げているはずだし。


 せめて耳だけでも澄まして外の様子を知ろうと試みる。


 地面を蹴りつける音が幾つか聞こえる。

 強く蹴る音、速足のように感覚の短い足音。

 何か急を要する事態が起きているのは間違いない。


「ウォォォンッ!ウォォォォンッ!」


 あの声はガイアだ。

 遠吠えのように吠えている。

 普段のガイアでは聞いたことのない吠え声。


 何か見つけた的な感じかな?


 ガイアの声が聞こえてから、一斉に足音が遠くなっていく。ここから皆、離れていっているように感じた。


 大丈夫?マジでここ人いなくなっちゃってたりしないよね?結構不安になってきて、少しちびってる気がする。


 でも、まだ大丈夫。漏らしてない。


 意を決して、外の状況を見ようとベッドを出る。

 恐る恐る、テントの入り口に足を歩ませた。


 心臓の鼓動が速くなる、胸元をギュッと掴んで耐える。


 入り口まで着いて、大きく息を吸って布を捲った。


「アリシア様!?どうなされました?」


「ヒィァッ!」


 突然の大きな声に変な声が出て、腰から崩れて......漏らした。


 眼前に映ったのはメリリアだ。テントの中ではなく外にいたようです。

 もう、驚かせないでくださいよ、心臓止まるかと思いましたよ。


「みんなどっかいっちゃったから。」


「申し訳ございません、アリシア様。何ともありませんので、ベッドにお戻りくださいませ。」


 腰が抜けているような感じで立てない。


メリリアが抱きかかえてくれようとするので、袖を掴んで声を出す。


「おかあさま、もどってこないの。」


 少し涙が出ている気がする。


 お母様が戻ってくるの頑張って待ったし、さっきから外の様子も変。


 これ以上はこの身体で不安を抱えるのは難しい。


 メリリアの袖をありったけの力を込めて握り、思いっきり号泣してしまいそうなのを必死で抑制する。


「もう少々で奥様もお戻りなると思います。お待ちになりますか?アリシア様。」


 もう少し待てば戻ってくるなら我慢するしかない。

 黙ってメリリアに頷いた。


「奥様がお戻りになる前にお召し代えいたしましょう。」


 メリリアに抱えられてテントに入っておしめを替えてもらう。漏らしたのはバレていたようです。

 流石に、アレは無理でしょ。普通に漏らしますよ。ライネだって同じ事された漏らすはず!


 あられもない下半身にされ、びちょびちょのおむつを取り出してもらう。

 少し温められたタオルで、脚の付け根からお尻、股の間を拭いてもらった。


「お戻りになられたようですよ、アリシア様。もう安心していただいて大丈夫かと思います。」


 えーと、今この状態で帰ってくると漏らしたの見られますよね。いつも替えてもらってるから恥ずかしいとかないけど.....。


「アリシア様、着替えが済みましたのでこちらで奥様をお待ちしましょう。」


 ナイス!メリリア!お母様が戻る前に着替え完了です。

 ベッドの側に置かれた椅子に座って待つことにした。


 その直後、テントの入り口の布が開かれて、人影が中に入ってきます。


「あら、アリシアちゃん。起きてらしたのですのね。眠れませんでしたか?」


 お母様の姿を見て、椅子から飛び降り抱き着きます。


 いつものお母様の匂いに混じって土埃の臭いがした。

 やはり、外で何かあったんだろう。


 でも、今はお母様が戻ってきてくれたことで頭はいっぱいです。


「おかあさま、ひとりでねるのはいやです。いっしょにねてください。」


 抑制し続けたことで反動も大きく、今まで溜まっていた感情を一気に放出しお母様に懇願した。


 放出しないと感情がコントロールできなくなる。


 とりあえず、お母様に抱き着いて泣けるだけ泣いた。


「少し待たせ過ぎてしまいましたね。もう安心ですよ。一緒にお布団に入りましょうね。」


 お母様は、メリリアに自分を預けると自身の身体に水の魔法をかけて被った。


 直ぐに風の魔法で乾かすと、フワッといつものお母様の匂いがする。


 いつもなら凄いとか、さすがお母様と感嘆するのだけど、今はそんな余裕はなかった。


 ネグリジェに着替えたお母様の手を直ぐに握ってお布団へ促す。いつもの匂いに安心して、いつも通りにお乳をいただいて眠る準備をした。


「不安にさせてごめんなさいね、アリシアちゃん。もう大丈夫ですから。」


 お母様にギュっと抱き寄せられる。


 起きてしまわなければ、お母様に謝らせる事にはならなかった。自分の軽率な行動で困らせてしまった気がして、目に涙が溜まってくる。


「もう悲しい顔をしないでくださいまし。」


 お母様がそっと指先で涙を拭ってくれると心が少し落ち着いてきた。


 もうこれ以上心に波をたてるのはよそう、静かに目を閉じて意識を落とした。

盗賊?それとも魔獣の襲撃?

皆が警戒する緊迫する事態に目を覚ましてしまい

錯乱してしまうアリシアちゃん。


一体何が起きたのか!?


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いつもお読みいただき有難うございます。

キャラクターイメージのラフも第3弾まで出来ました。

リクエスト受付中ですので是非ご参加ください。


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初めて読まれた方で面白いと感じていただけましたら、

是非、ブクマもしくは評価を頂けますと幸いです。


毎日1話更新中!


どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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