027:旅支度
ユグドゥラシルの祈念式に向かいます!
昨日から執事のメイノワールも、メイドのメリリア達も大忙しだ。
いよいよ、明日ユグドゥラシルで開催される祈念式に行きます。
家族全員で参加するため、馬車に積込む物が大量なのだ。
ガイアはお留守番?
「ガゥゥッ!!」
着いていけるんだ。良かったね。
「ガゥッ!」
つい先日、お父様にナーグローア様から連絡が届いてユグドゥラシルに向かっているそうです。またナーグローア様に会えるのが楽しみだけど、ゴーレムは持っていけないだろうなぁ。再戦は別の機会かな。
祈念式はお姉様が主役なので、結構荷物が多い感じだ。
アクセサリーに洋服、下着、靴、化粧道具やらとどんどん衣装箱に詰め込まれている。
自分のでもサイズが小さいとはいえドレスが嵩張っているようで衣装箱が3つにもなっていた。
男の時なら二泊三日であれば、スーツ1着、シャツ2枚、下着2枚、電動シェーバーくらいあれば後は何とでもなるし、箱ひとつでも多いんじゃないかな。
小旅行でも確かに女性は荷物多いよなぁと思っていたけど、自分の荷物を見ていて納得。
女の子って小さくても大変なんだね。
リーン、リーン
ニーフが飛んでくる音が聞こえてくる。お姉様がこちらに向かっているようです。
常にニーフがお姉様の側にいるから、遠くても分かってしまう。なんか鈴を付けられた感じだ。
「アリシアちゃん、旅の支度は順調ですか?」
「はい、おねえさま。メリリアがよういしてくれてます。」
「エルステア、ナーグローア様からいただいた物は忘れてはいけませんよ。」
祈念式にとナーグローア様から贈られたカッコい装備になるブレスレットとステッキですね。
あれから一度も自分はカッコよくなったお姉様を拝見していない。もう一度あの姿は拝めるんだねー。本当に楽しい事だらけな旅になりそうですよ。
「はい、お母様。ブレスレットはこちらに付けてますし、ステッキは既にリリアに運び込んでいただきましたわ。あと、お父様とお母様からいただいた物も入れてあります。支度は問題ないと思いますわ。」
「そうですのね、エルステアはしっかりしていて安心ですわ。私も支度は整いましたでの、お茶にしましょうか。」
お母様に誘われて、皆でお茶を飲みに一階に降りていく。
玄関ホールには馬車に積み込まれるのを待っている荷物が沢山置いてある。
全部積んでいったら馬車何台分になるのだろう。
軽く5台以上いっちゃうんじゃないの?
ユグドゥラシルの祈念式では各地から人が集まると聞いているけど、こんなに荷物を積んだ馬車が道を走っていくとなると混雑必須なんじゃないだろうか。馬車の交通渋滞とか見たことないですよ。
メリリアにお茶は飲めないのでミルクを入れてもらいしばし休憩。
いや、特に何かをしていた訳じゃないけど休憩なのだ。
お姉様の膝の上には幻獣のライネが眠っている。
ふわふわの羽毛に包まれた丸い鳥。
起きている時はお姉様の後ろをピッピ、ピッピと鳴きながらついていく姿が何とも愛らしいのだ。
今日は、人と荷物の移動が激しいのでお姉様にずっと抱かれて移動です。
ライネはあまり人見知りをしないので、自分が抱いても嫌がったりしないので良く抱かせてもらっている。ふわふわの羽毛が何とも気持ちがいい。あまり抱きすぎるとガイアが怒るので、ほどほどにしている。
今日も、自分の椅子にピタッとくっついて横になっている。
旅の途中は頼りにしてますよ、ガイア。
そう思ったら、ピクリと耳を向けてフンっと鼻を鳴らす。
本当に自分の思っている事が通じている気がするんだけど......気のせい?
「記念式の三日前に温泉街に着くのですよねお母様。」
「ええ、ここから温泉街までは五日くらいで着きますわ。途中で一度中継地のユーゼスで補給をしていく感じですわね。ユーゼスも大きい街で賑わっていますのよ。」
中継地という事は、自分達の方面から祈念式に向かう人が沢山集まるってくるってわけか。
すっごいごった返しになりそうですね。皆馬車で来るだろうし。
「そうそう、今回の護衛には叔父様も来てくれるそうよ。」
「えっそうなんですか!?」
うわー、超久しぶりじゃないですか。何カ月ぶりかな。
グレイも来るのかな?あっでも護衛だから無理か。
「グレイもくるのですか?」
「グレイオスはまだ小さいですから護衛には来れませんわね。叔父様にお会いした時に遊びに行く機会をお願いしてみましょう。」
別にグレイの事がどうとかじゃないけど、年の近い遊び仲間がいると楽しいので。
「だいじょうぶです、おかあさま。むこうがきてくれたらいいのです。」
「ふふ、アリシアちゃんはお高いのですものね。叔父様にお伝えしておきますわ。」
つっ伝えなくてもいいのに。まぁ来てくれるなら遊んでやらんこともない。
と言ってもなんかすごい成長していたら嫌だなぁ。男の子は大きくなるのほんと早いし。
「おお、皆揃っておるな。支度の方は問題ないか?」
「ええ、ディオス。皆ほぼ終わっておりますわよ。貴方はどうなのかしら?」
メイノワールを連れたお父様が部屋に入ってくる。二人ともちょっと疲れたような顔してますけど、何か大事でもありましたかね。
「うむ、こちらも問題無く終わったぞ。記念式に出るのも何十年振りすぎて、地下に置いてあった其方の道具を解除するのに少々てこずったがな。何とか持っていけそうだ。」
「私のために力を尽くしていただいてありがとう存じます、ディオス。久しぶりの出席になりますわね、ちょっと緊張してしまいますわ。」
「其方なら問題ないであろう、我の方が何倍も緊張しておるぞ。」
お父様とお母様のイチャコラが始まったけど、静かにミルクを飲んで寛いだ。
「お父様、叔父様達はいつ頃こちらに到着されますの?」
「うむ、本日中に護衛騎士の数人がこちらに到着するであろう。レオナールは明日合流する手筈になった。我の領地を出るまでは安全であるから心配はいらぬぞ。」
お姉様はお父様の言葉に頷く。ちょっと表情が心配そうだ。お父様もお母様も一緒だし心配いらない気がするけど、お姉様はなかなか用心深いですね。
ミルクを飲み終えたタイミングで、ライネが起きてきた。
「ライネ、いっしょにあそびましょう。」
「ピピッピッ!」
お姉様が膝の上から床に降ろすと、ふわふわの羽をばたつかせてライネ近づいてくる。
よちよち歩きのライネが一生懸命こっちに向かってくる姿はなんと可愛いのです。
今のところ飛べる感じがしないけどいつか飛ぶんだよね?背中に乗せてもらって空を飛んじゃう事もできるのかな?ちょっと期待してたりする。
ライネとガイア、ニーフと部屋の中で遊んだ。
お姉様も後から参加して遊んでくれた。
今日は、おしっこしたら直ぐにお母様に伝える事が出来た。
遊びに夢中になっておしっこしたのを三回黙っていたら、おむつが決壊したことがあってから直ぐに伝えないといけない事を学んだのである。
うんちをした時は、かなり気持ち悪いので直ぐに宣言するのだけど、おしっこだけはルーズになりがちだったのでいい教訓になった。
正直、全然おむつ取れる気がしない......。
ライネも生まれたばかりなのでおしめをしている。
ケージで飼っていればおしめの必要ないけど、放し飼いなのでおしめが必要なのだ。
自分と同じでおしっこトレーニングまで道のりは長そうですね。
がんばろうな、ライネ。
「ピピィッ!」
勝手に仲間意識を持つ自分が健気だよな。
お母様のお乳を飲んで一休みしたらもう日は暮れていた。
いつもの生活サイクルに変更はない。
今日もしっかり遊んで寝た!
ちょっと眠い気もするけど、お母様に連れられて夕食の席につく。
既に、護衛騎士一行は到着しているらしい。
夕食会場から賑わう声が聞こえてきた。
「ごきげんよう、皆さま。」
「ごきげんよう。」
「ユステア様、アリシア様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
夕食の席には、良く知った顔が並んでいる。
ランドグリスお兄様、ロアーナ、レイチェル、ニルソンだ。
ロアーナとレイチェルは自分達の護衛騎士に正式に任命されたそうで、今日からこの家に常駐するそうです。
「初めまして、アリシア様。本日より貴女様の護衛を務めさせていただくロアーナと申します。」
「ロアーナ、よろしくおねがいします。」
レイチェルはお姉様の専属騎士で既に挨拶を済ませているようです。
ニルソンはグレイの専属騎士だけど、祈念式の護衛として駆り出された。
「三人とも優秀な成績で学園を卒業した者だ。経験はまだ浅いが頼りになるぞ。」
「そいつは鍛え甲斐があるな。祈念式が終わればしっかり稽古をつけてやろう。」
「ありがたき幸せ。どうぞよろしくお願いします。」
ロアーナ達がキラキラ輝いた目でお父様を見ている。
お父様ってやっぱりすごい人なのかな?
あの目は明らかに尊敬というか崇拝している感じだよね。
うーん、本当にうちの両親は謎が多いなぁ。
「明日もあるからな、今日は早めに休息を取って備えてくれ。」
「はっ!かしこまりました。」
夕食は歓迎の意味も込めて、皆で一緒に取った。
普段は護衛騎士は執事やメイド達と同じように席を一緒にすることはないらしい。
変な仕来りですよね。皆で食べた方が美味しいのに。
当然、お風呂も一緒ではないらいしいけど、この家は別!
メイドも一緒にお風呂に入るのだからと言う事で、護衛騎士の二人も強制で一緒する決まりになった。
「仕方ありませんわね。では、中と外を交代で護衛してくださいませ。」
どちらか一人は必ずお風呂場の扉を護る必要があると頑なに言うので、日替わりで交代するという事で落ち着く。
お風呂に入る人数がどんどん増えて賑やかになりました。
今日は、ロアーナとメリリア、リンナが一緒です。
脱衣所まではリリアが同行。
扉の前をレイチェルが護ります。
メリリアに身ぐるみ全部剥ぎ取られ、お母様の準備が整うまで待機。
ここで先走って一人でお風呂に突入してはいけないのです。
お姉様を待っているライネと一緒にジッとしてます。
「お待たせ、アリシアちゃん。さぁお風呂に行きましょうね。」
いつも通りお母様に抱えてお風呂に入ります。相変わらずお母様のお肌はツルツルでいい匂いです。お風呂から上がると更にいい香りがするのだけど体質なんですかね?ちょっと気になるのですけど。
皆で身体を洗いっこして、湯舟に浸かります。
ロアーナがさっきから緊張しっぱなしで面白いです。
「ロアーナ、アリシアちゃんを理解する必要があるでしょう。」
自分の護衛騎士に任命されたという事で、肌と肌が触れ合うスキンシップを取れと。
お母様の言葉に従うロアーナは自分を抱えます。
まぁほんとにロアーナも胸がそこそこある。
うーん、エルフは基本巨乳なの?
そうであれば、お姉様も自分もデカくなる可能性有り?
巨乳美少女になれる未来が待ってるってヤバいね!!
そんな期待をしながら、ロアーナの胸の感触を堪能した。
小さいのも正義って言いますが、叶うならば大きく育って欲しい。
ちょっとグッタリしたロアーナには目を逸らしお風呂を出た。
さすがに主とお風呂なんて教えられていないだろうね。
初任務、初お風呂の初体験尽くしで、気疲れしちゃったようです。
明日からの任務に支障が出ない事を願いばかりです。
これがきっかけで護衛騎士が嫌にならないといいけど。
ロアーナとレイチェルは、メリリアにそれぞれの部屋に案内されます。
せっかくなので一緒に付いて行った。
既に荷物は運び込まれていて、シーツも新しい物に取り換えられているそうです。
以前覗いた時より女の子のお部屋らしい雰囲気の部屋になってました。
基本的に着替えは自分達で行い、食事は護衛騎士用の部屋で交代で取る。
とは言え、明日からしばらく家にはいないので、不寝番などその他のルールは帰ってきたら細かくお話するそうです。
本番は明日からなので、今日は二人とも旅に備えて寝てもらうみたいです。
メリリアの説明を聞いている途中で既に睡魔が一歩ずつ歩み寄ってきてます。
ライネは既にお姉様の腕の中でお休み中。
自分も歩くのも覚束なくなって、お母様に抱っこしてもらってベッドまで運んでもらった。
寝室の暖炉で丸くなっているガイアにお休みの挨拶をして布団に潜り込む。
ユグドゥラシルへの旅路で知らない事や面白い事が待っている。
そんな期待を感じながら、お母様のお乳を口に咥えて眠りに落ちた。
さらに人が増えていくアリシア家。
大人数でユグドゥラシルへ出発!?
向かう場所には魔王様もスタンバイです!
祈念式では何が待っているのか!?
乞うご期待。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
やっとひとつの区切りになるパートへ進みました。
これに懲りず応援いただけますと幸いです。
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毎日1話更新、継続中です。
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