023:創世神話
本格的な冬の寒さが訪れる。
庭の木々もゴーレム達もすっかり雪で覆われた。
ここ数日は吹雪いている日の方が多く、積もった雪が一階の窓より高い。
北海道より雪積もってんじゃない?
適当な事を思いながら窓の外を眺めていた。
「アリシア様、体調を崩されますので暖炉でお寛ぎください。」
リフィアに促されて、手が少し冷たい感じがしたので暖をとる事にした。
暖炉の前には、デカイ図体でガイアが横たわっている。
尻尾をぱしんぱしんしながら誘っているので、お腹のあたりを目掛けて遠慮なく飛び込んだ。
幼児の体当りを受けたぐらいではガイアはピクリともしない。
そのまま、自分を包むようにガイアは身体を丸くする。
ガイアのふわふわの毛並みに触れてもふもふを堪能。
ピクピクと耳が動いたので、ちょっとした悪戯心が働いて触ろうとすると、
ザーッ、ドザザザッドサッ!
屋根に積もった雪が滑り落ちる音がして、思わずビクッと身体を震わせてしまった。
雪が落ちる音程度でビックリするとは......いつからこんなにビビりになったのだろう。
少し、ほんと少しちびってる気がするけど気にしない。
ほんと、ちょっとだけだから!漏らしてないから!
このままガイアのもふもふに包まれている眠っちゃいそう。
何もしないまま一日が終わってしまいそうで勿体ない気がした。
お母様とお姉様は、少し離れたところで刺繍に集中しているし邪魔できないね。
困った、一人だけ手持ち無沙汰なのだ。
ガイアの毛並みを梳くように撫でて、このまったりした午後に何しようか考えていたら、フッと思考が止まった。
意識が戻った時には、窓はカーテンで閉じられていて、身体はベッドの中だった。
おーふっ、寝落ちしたんかー。
もう夜やんかー!
一日が終わったのを理解。
ちょっと悲しい。
「おはよう、アリシアちゃん。」
「おはようごさいます、おかあさま。」
添い寝してくれていたお母様が優しく微笑む。
「ゆうしょくおわりました?」
時計と言うものを見たことがないので、どのくらい夜なのかを把握したくて当たりを付けて聞いてみた。
「お夕食は終わりましたわ。これからお風呂に入ろうと思っていたところですよ。」
ふむ、夕食は終わっている。
これからお風呂。
と言うことは、お風呂の後に少し遊べるか。
激しい事はできないけど、おしゃべりとか本を読んでもらう事は出来るはずだ。
それとも、祈念式で行くユグドゥラシルの事をお話ししてもらおうかな。
「エルステアもアリシアちゃんが起きてくるのを待ってらしたのよ。一緒にお風呂に行きましょうね。」
「はい、おかあさま。おふろからでたらおはなしきかせてほしいの。」
「ふふふ、もちろんですよ。楽しみにしてらしてね。」
メリリアに、お姉様もお風呂に誘っていただくようにお願いして、お母様の手を取ってお風呂場に向かった。
夜はこれからですよ!いっぱいお母様に話をしてもらうのだ!
脱衣所でフィリアに服を脱がせてもらっているとお姉様も到着。
「アリシアちゃん、おはよう。いっぱい眠れたようで元気が溢れてますわね。」
「はい。すごくげんきです!」
今日は、リリアも一緒にお風呂に入るようです。
お姉様を脱がせた後に続いて脱ぎ始めました。
この家にいるメイドさんは誰の趣味かわからないですけど、全員豊満な胸に括れた腰、そしてプリッと張りのお尻をしてるのです。メイドさんのお仕事が忙しいせいか、皆さん無駄な贅肉の無い引き締まった身体なのだ。
当然、リリアさんもナイスバディ。
少し童顔なのに、脱いだら大変な人です。
普通に街を歩いてすれ違ったら、思わず振り向いてしまう自信があります!
リリアの肢体をじっくり拝見してから、お母様に抱っこしてもらってお風呂に入りました。
一昨日まで一人でお風呂場に駆けて行くのが許されていた。
それが昨日、床でツルっと足を滑らせてお尻を打ってしまい、転んだ自分を見て皆血相を変えたのだ。
もう少し大きなるまで、一人でお風呂場に行くのは禁止になった。
お母様を心配させちゃダメだよね。
ちょっと反省。
リリアも加えて、今日は皆並んで背中の洗いっこした。
一番チビの自分は端っこで、その次がお姉様、その後ろにお母様で最後がリリア。
リリアがお母様に洗ってもらう事に物凄く困惑して涙目になっている。
お母様は逆に笑顔で洗う気満々だった。
皆でゴシゴシ即興で歌いながら洗いっこ。
いつもお風呂に入ると眠くなってくるけど、今日は体力を持て余しているので超元気!
お姉様と髪の毛と身体の洗いっこ。
お母様がリリアに洗ってもらっているのでお手伝いしたり。
やっぱり最後のリリアを全員で隅々まで洗い尽くしてあげた。
ほんと、リリアさんナイスバディでした。
この身体が成人男子だったらどうなっていたか分からんね。
「リリア、皆に洗ってもらってどうでした?気持ちよかったでしょう。」
メイドがご主人様に洗われるって事がそもそも無いのだろう。
もしかして初めて人に洗ってもらったかも?
皆に泡まみれで洗われていたのでリリアの頬は紅潮している。
色々洗ってたら艶っぽい声出てたもんね。
「ありがとう存じます。奥様。このような勿体無い機会をくださいまして幸せでございます。」
「私、リリアでしたらいつでも洗って差し上げますわ。貴女にはいつも助けてもらってますもの。これくらいで返せる気がしませんわ。」
「お嬢様。勿体無いお言葉、ありがとう存じます。」
「これからは一緒に入る時は洗いっこしましょうね。」
リリアがとても感極まった顔をしている。メイドさんが表情を崩すのは見たことが無い。お姉様の言葉がよっぽど嬉しかったのだね。
「わたしも、おねえさまをおてつだいします!リリアあらいます。」
お姉様の大事なメイドさんです。自分も協力しないとね!
「アリシアちゃんは本当に良いですわ。一緒に洗いましょうね。ふふふ。」
「はい!おねえさま。」
ちょっとリリアが困った顔しているけど、いつもの感謝の気持ちだからね。観念して、受け入れてください。
「さぁ、皆冷えちゃいますから湯船に浸かりましょう。」
お母様の誘いに応じて湯船に浸かる。
あー寒い日には大きいお風呂が気持ちいいですね。
お母様に身体をよたれ掛けて堪能です。
しっかり温まったところで、お風呂から出ました。
今日も最高お風呂ありがとう!
脱衣所にはメリリアとリンナが着替えを用意して待ってます。リリアはサッと身体を魔法で乾かしてメイド服に着替えました。
お風呂モードが終了して、メイドモードにチェンジといったところかな。着替え終わると直ぐにお姉様の身体を拭きにいきます。ご主人様に尽くすメイドさんって感じで、頭が上がりません。
自分もフィリアに乾かしてもらって、薄い青のネグリジェを着せてもらって、上から暖かいガウンを掛けてもらいました。靴はモコモコのスリッパみたいな物が用意されていて、これで廊下を歩いても寒くないのです!
廊下で躓いて転んだらまた心配されちゃうので、お母様の手をしっかり握って寝室に向かいました。
これからお母様のお話をいっぱい聞くって考えると、お風呂上がりのポカポカと合わさって、気持ちがぴょんぴょん弾んできます。
寝室に入ると、いつもベッドに用意されている毛布にガイアがいない。
「ガイアおさんぽ?」
「ガイアはお父様と狩に出かけているのよ。」
この大雪が積もっていて吹雪いている夜に?普通だったら途中で凍死するよ?大丈夫なの?
「ガイアもおとうさまもしんぱいです。」
お母様、本当に連れ戻した方が良くないですか?何かあったら大変です。青ざめていく顔でお母様を見る。
お母様もお姉様も、あんまり心配そうな顔をしていないのですけど。
「ふふ、アリシアちゃん大丈夫ですわよ。お父様は雪の精霊とお友達ですから、迷ったり凍えたりしないの。」
えーと、何ですかそのフレンド効果?
お母様も大概チートだけど、お父様もやっぱりチートじゃん!
「アリシアちゃんも湖の精霊や、雪の精霊に遭遇してますもの、大人になると加護の効果が体験できますよ。」
うん?湖の精霊は叔父様のところに行った時の事かな?雪の精霊は窓から眺めていただけ出し、加護なんかもらってないぞ。
むぅ、よく分からん。
「さっ、お父様とガイアは朝には帰ってくるでしょうから、楽しいお話をしましょう。」
お父様とガイアの事は置いといてってか?
はぁ、規格外な事が多過ぎて順応するのがしんどい!
大人になれば分かるって言ってますし、考えるのはやめ。
「お母様、今日は祈念式のお話が知りたいですわ。」
お姉様と共通の認識です。
自分も興味あります!
「ゆぐどうらしるのおはなしも、しりたいです。」
メリリアとリリアが暖炉の前に長いソファを置いてくれる。お母様は用意されたソファに掛けると、自分達を手招きする。
「暖かいからこちらでお話しましょ。二人ともいらっしゃい。」
自分はお母様の膝の上で抱かれて、お姉様はその横に座った。お母様からいい匂いがする、思わずお乳を強請りたくなるけど我慢。
飲み出したら100%寝る!
眠たくないけど寝られる自信あり!
「それでは、まずユグドゥラシルのお話からが良いわね。」
お母様はゆっくりとユグドゥラシルが誕生した理由から話をしてくれる。お姉様も自分もお母様の優しく語りかける声に聴き入った。
「この世界はね、炎の神様の悪戯で焼き尽くされて、なーんにも無くなった時代があるの。」
「それを見た一番偉い神様はとても悲しんで、何とか元に戻したいと思って、水と風の神様を産んだのよ。」
「水の神様は、一番偉い神様に言われて世界を水で満たしていくの。そうすると、何も無かったところから生命の素が誕生しました。」
「風の神様は、その生命の素を水が無くなった場所や、お空にに飛ばして広げていきます。」
これは所謂、創世神話的な話ですね。
絵本で読んでもらった話と少し違うかも。
どこが違うと言われても、はっきり覚えきれてないので勘!
「飛ばされた生命の素は、それぞれの場所に根付いて世界を豊かにする準備を始めたわ。」
「一番偉い神様は生命が生まれそうになった事に凄く喜んで、二人の女神にもっと命が生まれるよう手助けしないさいと言って世界に遣わしました。」
「お母様、それは太陽と月の女神様ですか?」
「ええ、そうよ。エルステアはよく勉強していますね。」
お母様はにっこりお姉様に微笑む。
さすがお姉様です。もう既に覚えている領域を越えた自分とは違うのです。
「二人の女神が、海と大地を作ると生命の素がどんどん増えていって大地に木が沢山生え、海にも魚が生まれました。」
「そうして、月日が経つうちに大地には森が出来て動物が生まれ、世界は少しずつ元に戻っていたのよ。」
なるほど、この後動物が進化して人が生まれるって訳ですね。人類誕生みたいな?
「一番偉い神様は、元どおりになっていく世界を見て安心して、また炎の神様がまた悪戯しないように、十二柱を世界に建てて世界が燃えないように結界を作ったの。」
「その内のひとつがユグドゥラシルなのよ。」
12の柱ですか。金色の鎧を纏って、流星の拳で敵を倒す的な感じが勝手に浮かんできた。何たら十二柱とか守護神的な人かいるのかな。
「木々に囲まれたユグドゥラシルは動物達と仲良く過ごしていたけど、だんだん神様達が恋しくなって形代を作って心を慰めました。」
「形代はユグドゥラシルの分身だったけれど、不思議な事に自我が目覚め恋に落ちちゃうの。」
んんん?
ユグドゥラシルは建造物ではない?
神様?
でっかい木を想像してたけど。
何かおかしい。
固定観念が崩壊したよ。
「ユグドゥラシルは形代に自我が目覚めて驚いたけど、いつも側にいる形代が意思を持った事に喜んで、その気持ちを受け入れたの。」
結ばれちゃいましたね。
神様が創ったものだから何でもありだわ!
「ユグドゥラシルは形代にアリステリアと名前を与えて可愛がったわ。」
「その二人から産まれた子供がら、私達エルフ族のご先祖様なのよ。」
人類誕生と全然違ったぁー!
神様と神様の分身から産まれたのですねー!
その発想は無かったよ……。
「ユグドゥラシルとアリステリアは沢山の子供を育てて、その子供達が大人になって結ばれてまた子供が産まれてどんどん森が発展していくの。」
もう近親婚はダメとか、自分の世界の常識は捨てた方がいいわ。自分もお姉様もお母様だってこうして生きているわけだから、まったく問題ないんだろうね。
お母様の耳に優しく響く声。
いつまでも聞いていたい。
心が安心を覚えている。
ゆっくりと瞼が落ちていく。
まだ!お母様の話は終わってない!
寝てはならない。
何とか眠気に抵抗する。
お母様は、自分の様子に気がついたのか胸を出す。
甘い匂いがふわっと鼻につく。
無意識に、お母様の胸に吸い付いた。
「ふふ、アリシアちゃんはもうお眠ですね。エルステアは大丈夫かしら?もう少し続けますか。」
お姉様もお母様の肩に身を寄せて少し眠そうに瞼を擦った。
「もう少しお話が聞きたいですわ。」
お姉様も眠さに抗って話を聞こうと頑張った。
「それでしたら、お布団に入って続きをしましょう。」
お母様の誘いに自分は従った。
ふらっと眠そうな足取りでお姉様もベッドに向かう。
お母様を挟んで、三人で横になる。
もう既に自分は戦線離脱モードです。
5分と持たずに眠っちゃいそう。
「祈念式はね、二人が結ばれて……。」
結ばれて!の先を聞けず。お母様の胸の中で眠りにつく。
多分、明日になると半分くらい話を忘れてると思う。
ユグドゥラシルとは何なのか。
自分達のご先祖様という事は理解しました。
幼児の体力は限界が早い!
祈念式の由来は聞けずじまいでした。
残念ですね。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
少しずつですが物語も前に進み出しました。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!
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毎日更新継続中です!よろしくお願い申し上げます。




