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1分程度で読める、掌編小説集です。「こちら」から、他の掌編小説を読みにいけます。

稼ぐお金

作者: 行世長旅

男は困っていた。


金が無い……。もうポケットに3円しか入ってねぇ……。


仕事を辞めてからしばらくは失業保険を貰っていたが、貰える期間にも限度がある。それが立ち切られてからも結構な時間を無収入で暮らしていた彼は、金銭難に陥っていた。


貯金は全て切り崩した。売れる物は全部売った。今日まで最低限以下の生活を送って生きてきたが、さすがにもう限界だ……。


男は自身の現状をようやく理解した。

働かなければ生きていけないのだ、と。

人生の逆転劇などドラマのみの話で、現実ではまず起こり得ない。


仕方ねぇ……。日雇いでもいい、諦めて金を稼ぐか。

家から出るのなんて何日振りだろうな……。


そんなことを考えながら、家……段ボール小屋の中をうろつき回る。


あっ……、そうだ、服も1着だけでいいと思っていたから、今着ているやつ以外全部売っぱらっちまったんだ……。


そしてその唯一の服も、あちこち破れてボロボロの状態だった。これではとても外を出歩けないし、面接になど行けたものではない。


しゃーねぇ、まずは服を買うか……。

そこのリサイクルショップに着くまで何も無ければいいんだ。


そう決めた男は、扉……段ボールの影から周りをキョロキョロと見渡す。

そしてポケットに手を入れ、すぐにでも会計を済ませる為に現金を握り込んだ。

そこで男は気が付く。


3円じゃ何も買えねぇよ……。


男の決意も虚しく、再就職への一歩は踏み出すこと無く終わった。


金を稼ぐには金がいる。なんて理不尽な世の中なんだ……。


男は世の理に恨み言を呟きつつ、今日もその辺に生えている草で飢えを凌いだ。

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