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狂ったような笑い声が街中に響いた。
それを聞いた人々は、一様に何が起こっているのか理解が追いつかない顔をしていた。
バイクを止めて放送に耳を傾けていた藤四郎も蓮の奇行に耳を疑った。
それもそうだろう。
普段であれば地域に関わる連絡事項や間の抜けた音調の童謡が流れてくるスピーカーから信じがたい惨状が聞こえてきたのだ。
『私は違うッ……私はやってないんだぁ!! 助けてくれぇ!!』
『私だって、私だって何も悪いことはしてないっ!! 知らなかったんだっ!! 本当だっ!!』
次々と命乞いするような声があがる。
その悲痛の声からスピーカーの向こうで何が起こったのか容易に想像がついた。
響いた銃声。その先にいたであろう蓮の父親、銀城柾は撃たれたのだろう。
「そこまで、やるのか。そうまでして……銀城蓮」
藤四郎は、絞り出すような声で言った。
銀城蓮が何事かを企んでいるのは気付いていた。
藤四郎と彼が対話をする機会は殆どなかった。
それでも、ここまで銀城蓮がやるとは思ってもいなかった。
藤四郎は、今までに一種の“覚悟”を持った人間を見る機会はあった。
桜花組に関わる人間、それと対峙した人間。
彼等は己の決めた何かを守るためならば、どのような手段だろうと取る。
そういう雰囲気のようなものを纏っている。
銀城蓮を始めて見たとき、藤四郎にはそう見えなかった。
我を通すために、他人を殺してでもやり通そうという気概は感じなかったのだ。
根拠のない自身に満ちた若者。
それが銀城蓮に対する印象であった。
現に蓮は最初、父親を殺すことに本能的な戸惑いを見せた。
だが、その背を押す存在が彼の傍らに居たのだ。
たかが一歩、されど一歩。
人間という生き物として許されざる領域へと、彼等は足を踏み入れてしまった。
『――宝来の民達よ。知りたくはないか? 僕達を裏で嘲笑っていたのは誰か。不満はないか? 君達が苦渋を舐めている横で、彼等がどのように生きていたのか。さあ、正義は君達の側にある。知りたければ来るといい。裁かれるべき者達は中央議事堂で待っているよ』
優雅な音楽と共に、蓮の言葉が紡がれる。
「わざわざ自分から言ってくれるとはな。“来い”ってことか」
中央議事堂。
蓮はそう言っていた。中央議事堂は、街の運営に関わる会議等が行われる公共施設だ。
藤四郎が探していた“中央”とは此処のことだろう。
まさか騒動の元凶が、この街の中枢に陣取っているとは思いもしていなかった。
「行ってやろうじゃねぇか、待ってろ。銀城蓮ッ……!!」
藤四郎はバイクのエンジンを蒸かし、ハンドルを切る。
藤四郎は肌に感じる風が妙に冷たく、肌を突き刺すように感じた。




