35
新年度になりました。令和もよろしくお願いいたします。 John.F
街中で二人の男が暴れていた騒動。
それは地元のニュースにも載り、男達の他に学生がこの事件に関わっていたとの報道がされた。
実名での報道こそされなかったものの、世間の注目は静かに集まり始めていた。
警察でのやり取りを終え、帰宅した藤四郎のスマートフォンには、祐美がメッセージを送ってきていた。
席を立つ直前、彼女に教えていたアドレスに送ってきたのだろう。
『先輩~! 大丈夫ですかぁ? 祐美、とっても心配です……』
一般的な学生は、警察のお世話になることなど滅多にない。
そのせいで、彼女には心配をかけてしまったかと思い、藤四郎は返信をした。
『たいしたことはなかったから、大丈夫だ』
藤四郎が文字を打ち終え、送り返すと間髪入れずに返信がきた。
『よかったぁ……先輩が警察の人に連れて行かれちゃったとき、どうしようって思っちゃいましたぁ~』
返信の速さも相まって、本当に心配されていたのだと藤四郎は改めて実感した。
過剰なスキンシップと些か胡散臭い喋り方を除けば、良いやつなのなのだろう、と。
『途中であんなことになって、悪かったな。埋め合わせはするぞ』
そういった想いから、彼女に飴を与えるようなことを藤四郎は言った。
元々、祐美が藤四郎と話がしたいということで、時間を作った場だったのだ。
それをあのような形で台無しにしまったことには、彼も多少の負い目を感じていた。
『えぇ~!! 良いんですかぁ? やったーっ!!』
藤四郎が軽い気持ちで送った言葉が、思っていたよりも喜ばれてしまった。
『俺に出来る範囲でだからな……』
その反応から無茶な要求をされるのではないかと、藤四郎は釘を刺すことにした。
『大丈夫ですよぉ~! 先輩、明日は学校行けるんですよね? そのときに、一緒に登校してくれるだけで良いんです~』
『そのくらいなら、まあ……いいぞ』
『良かったぁ~。流石に祐美も“あんなこと”があった後じゃあ、一人で電車乗りたくなかったんですよぉ』
元気な一面を見せていた彼女も、電車での件で少なからず傷付いていたのだ。
学園へ通うためには、毎朝電車を使わなければならない。
怖い思いをした祐美にとって、その空間が既に恐怖の対象になっているのだろう。
被害者である彼女が、トラウマを抱え不便な生活を強いられるのは理不尽なことだ。
問題を力によって解決することしか知らない藤四郎は、そういった気遣いが足りていなかったことを痛感した。
原因を武力でねじ伏せたところで、被害に遭ったものの苦しみを拭い去ることはできない。
その解決方法を、藤四郎はまだ知らなかった。
『じゃあ、明日から暫くは一緒に登校するか。時間は――』
ならば、せめて彼女がトラウマを払拭できるまでは付き添うべきだろう。
そう藤四郎は思い、暫くの間、祐美と共に登校することを決めたのだった。
翌朝。
藤四郎は眠気の残る身体を奮い立たせ、祐美と待ち合わせをしている駅へと向かった。
「せんぱ~い!」
祐美は藤四郎の姿を見つけると元気に遠くから手を振って駆け寄ってきた。
肩の辺りで二つに綺麗にまとめられた金髪が、走る度にユラユラと揺れている。
朝にも関わらず元気な彼女は、その身嗜みにも妥協はないようだ。
「おはよう。朝から元気だな……」
その一方で、朝の藤四郎のテンションは低い。
身なりも不潔でさえなければ、朝はわりと適当に済ませる方だった。
彼女とのあまりのテンションの違いに、朝から重たいスイーツを食べさせられたような気分にさせられた。
「えへへ~。先輩と一緒に学校に行けるって思ったら早起きしちゃいましたぁ!」
頬を緩ませて嬉しそうな顔をする祐美。
そんな表情を見ていると、いくら藤四郎といえども悪い気分はしなかった。
「……それじゃ、行くかぁ」
「は~い!」
藤四郎は、一つ息をつくと祐美に声をかけた。
手のかかる妹分のような祐美を連れ、二人は学園へ向かう最中、他愛もない話をして過ごした。




