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ヴェンディング・ワールド  作者: チー太良
第1章
2/3

価値

「俺の……実家じゃねぇか……。」


そう、なんとモンスターが現れると予測された場所は、俺の両親の住む実家であった。


この事で俺はもう弱音を吐いている余裕はなくなってしまった。


絶対にモンスターを倒さなくてはならない。


「マキナ、モンスターの現れる場所は実家だとして、いつごろ現れるんだ?」


俺の必死さに驚きながら、マキナは答える。


「んー、正確には分かってないけど、今から……3日後の午後とは予想されてるよ。」


「もっと曖昧なもんだと思ってたけど、結構絞れてるんだな。なんでわかるんだ?」


「今回の件はちょっと特殊でね、モンスターがこの世界に来ることがあらかじめ予測されてたの。いつもは今回のようには行かないんだけど。」


「『今回は』ってこれからもモンスターくんの? 」


「あ、まだなんでモンスターがこの世界に来ちゃうのか説明してなかったね。」


なぜモンスターが来てしまうのか、それはマキナ達の世界の戦争の仕方に原因があった。


あちらの世界の戦争のやり方は、魔法で大量にモンスターを作り出し、それを敵地にテレポートさせ戦わせ合う、といったものであるからだそうだ。


そしてそのテレポート魔法を使うには送り込む場所の座標の指定も必要なのだが、大量にテレポートさせればさせるほど、術式に綻びが生じて座標が狂ってしまい、何千万といるうちの数体がこちらの世界に間違ってテレポートされてしまうらしい。


マキナは学者のように生き生きと語ってくれたが、酷すぎるとばっちりだ。


「で、今回はその間違って送られる個体が送り込まれている途中で割り出せたから、具体的なことがわかるってわけ。ご理解頂けたかしら?」


「ちょっと待て、その、戦争のやり方に問題があるならそれを変えればいいだろ。」


「一夜くんってバカなのか頭がいいのかよくわかんないね。」


マキナは呆れた顔で俺を見て言った。


「いい? 戦争中に『ちょっと戦い方に問題があるから休戦して考えない?』って言われて誰がはいわかりましたって言うのよ。戦争っていうのは意見の食い違いか単純な戦力拡大で行われるから、そこに会話なんてものは存在しないの。」


「いやお前なんちゃらの神とか言ってたよな? そこは神の力でなんとかならないのかよ。」


「機械仕掛けの神!! 無理よ。私の国も結構な損害が出てて余裕はないし、権力だって、他国を動かせるほどのものでは無いし……あ! でもでも、私だって偉いんだからね!!」


「お前が国の頭首かよ!? 国ほっといて大丈夫なのか!?」


「あっちのことは今部下に任せてるわ。」


戦争がなくならない理由と改善策が生み出されない理由がなんとなくわかった気がする。


脳筋とアホしかいない世界では仕方がないのかもしれない。


いずれはあちらの世界の戦争も終わらせなければいけない、と俺は固く決心したが、まずは目先の事件を解決しなければ。


「じゃあ3日後に向けて俺も準備しなきゃいけないわけだけど、お前も当日は協力してくれるんだよな?」


マキナは少し困り顔で言いにくそうに説明しだした。


「えっとぉ、私たちは……その……こっちの世界では能力が使えないように拘束具をつけられてるの。それがこの頭の輪っか。あ、でも勘違いしないでよね! 私だって元の世界では山ひとつ消し飛ばすくらいの力はあるんだからね!?」


なんということだろうか、こいつは元の世界では神でも、この世界ではただのコスプレロリ少女になってしまうらしい。


俺が呆れと哀れみの表情でマキナを見ていると彼女は怒りながら涙目で反論しだした。


「拘束具で弱体化してたって、何も出来ないわけじゃないもん! あ! ほらほら空だって飛べるし、あそこにあるヴェンディングマシーンだって保管しておけるわ!」


彼女は浮き上がりながら、自分の存在意義を主張しているようだ。


やはり俺1人で何とかしなければならないようだ。





ギャーギャー喚いているマキナをなだめつつ俺は準備の計画を立て始めることにした。


まず戦うには武器が必要だ。それも神クラスが作り出す幻獣を倒せるとびきりやばいやつが。


俺のベットで俺の冷蔵庫に入っていたジュースを呑気に飲みながら寝っ転がっているマキナに俺は質問した。


「おい、マキナ。あのヴェンディングマシーンとやらは金さえ入れればそれに見合ったものが何でも手に入るんだよな?」


「そーだよ。」


「じゃあモンスターを一撃で倒せるヤバイ武器とかも手に入るよな?」


マキナは小馬鹿にした口調で言った。


「まぁ、可能だけど、それほどの力のものとなると……お客さん、コレがね? 少々高くなってしまうんですよ。」


マキナは右手を俺に向けながら、手のひらを見せて親指の先と人差し指の先をくっつけながら続けた。


「じゃあどれくらいの値段か調べてみようか……うーん……あ! あった!」


マキナが見せてきたスマートフォンのようなものに映し出されていたのは、黄金に輝く、1本の剣だった。


「例えばこの聖剣エクスカリバー、こちら5億円となっております。」


マキナはどこかの通販番組のような口調で、自分のものでもないのに得意げにそう言った。


やはり簡単にはいかないようだ。


マキナは手に持ったスマートフォンのようなものの液晶を指で上にスクロールしながら、武器の値段を調べたあと困った顔で俺に言った。


「やっぱりあっちの世界のモンスターを倒すとなると適当な武器じゃかすり傷も与えられないかもね。でも強い武器はやっぱり価値が高くて召喚できないね。」


今から全力でバイトやら何やらをしたって絶対に間に合わない。


しかし金は必要だ。さてどうしたものか。


考え込んでいると、マキナがなにかひらめいてこちらに近寄ってきた。


「いい事考えた! アルバイトしよう!」


「無理だよそんなことしたって、ここでアルバイトしたって金が入るのは月の終わりだし、第一、そんな雀の涙ほどの金じゃどうにも……」


「誰が『この世界で』アルバイトすると言った?」


「え?」


「私の世界でアルバイトをするの! その名も……異世界アルバイト!!」


これが、俺が人生で初めて異世界に行くことになった理由だ。











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