表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェンディング・ワールド  作者: チー太良
第1章
1/3

機械仕掛けの神

俺はいつも通りの見慣れた道を歩いていた。


俺は今、絶賛登校中だ。別に喜んでいる訳ではなく、気分的にはその逆である。


何度この道を歩き、高校を登下校をしただろうか。


何度この道を同じ歩幅、同じ姿勢、同じ時間帯で歩いただろうか。


日常があまりにも日常的すぎると、悟ってしまうのは俺だけではないと思う。


なんて、つまらないことを考えているうちに学校に到着だ。


この高校には入学して半年ぐらいで飽きた。


2年前に苦労して入った自分を今は呆れた顔で笑える。


いつもの教師の声、チョークが黒板を叩く音、全ていつも通り。


教師の授業を右から左へ流しながら、頬杖をついて窓の外を見た。


この青い空まで、いつもと同じ模様に見える。



俺は刺激を求めていた。このクソッタレな日常に。



この世に生まれてきてから、なにかに感動したり、興味を持ったりした経験が限りなく0に等しい俺は、今では心にポッカリと穴が空いた廃人のようになってしまっていた。


だけど楽しいことや新しいことを求める欲は人一倍強いと思う。


これさえ失ってしまったら俺はどうなってしまうことやら。




「なーんか楽しいことねぇかな」




何故だろう、教室がやけに静かだ。


そして教室中の視線が俺に集中している。


恐る恐る教師の方に視線を戻すと、まるで茹でダコのように真っ赤な顔をした教師が拳を震わせながら立っていた。




「暗間、放課後職員室に来い。」







やっと説教が終わった。


まさか心の声が外に出てしまっているとは。


心の声が漏れるほどストレスを抱えているのは流石に重症だ。


これ以上何もかもに無関心だと流石にまずい。



「なにかあったけ……」



あった。プラモデルだ。


昔から何かを作ったりする遊びが好きで、プラモデルはそのうちの一つだ。


しかし今家にプラモデルがないことを考えると必然的に買いに行かなければならない。


俺は校門の近くの時計を見た。


7時を過ぎている。



「あのクソ茹でダコオヤジィィィ!!」



俺は言葉を発すると同時に走り出していた。雑貨屋に。







結局、俺がついた頃にはもう雑貨屋は閉店していた。


ここまで来たのに何も得られなかった憤りと悲しみと疲れで俺の心の中はメチャクチャだ。



「なんで俺がこんな目に……」



「でもいい運動になった! 幸せ! アハハハハ!!」


若干ヤケクソである。



暗く灯りの少ない夜道を、トボトボと歩く。


こんなつまらない日常も、何をしても失敗する運命にも、もううんざりだ。


なんならこのままいっそ……








いきなり背中を掴まれた感覚があった。




後ろを振り向くとそこには、小さな派手な格好をした少女が俺をのシャツを引っ張っていた。


なぜこんなとこにこんな小さな子が?


今まで後ろに人なんかいたっけ?


色々な疑問が俺の中を駆け巡ったが、まずは紳士的な対応を。



「お嬢ちゃん、迷子になっちゃったのかな? おうちはどこ?」



少女は開口一言こういった。



「暗間 一夜さんですね?」


「えっ!?」


この少女、俺の紳士的対応を無視した挙句、何故か俺の名前まで知っている。


驚きと恐怖で口を閉じれなくなっていると、少女はこちらの事情など知ったこっちゃない、といった様子で話し出した。


「私は迷子ではありませんし、お嬢ちゃんでもないです。まったく、近頃の若者ときたら――」


なにかグチグチと文句をたれているが、落ち着いてきた俺は質問した。


「き、君は一体、何者なんだ?」


少女は、はっとした後に


「あぁっ、そうだった。私はデウス……あっ!」


んんっと咳払いをして呼吸を整えると



「我はデウス・エクス・マキナ、《機械仕掛けの神》なり。」



「…………?」


俺は訳が分からなかったが、ここでようやく自分を納得させるための答えが出た。



彼女は厨二病である、と。



改めて彼女を見てみると、かなり派手な格好をしていた。


さっきは動揺してわからなかったが、コスプレだと思われる天使の輪や背中の羽など、それっぽいものはかなりよくできていた。


というか本物と言われたら疑えないくらい凝ったつくりだ。


だが感心している場合ではない、こういう人には優しくするべきだ、と俺の良心が言っている。


俺はやはりまた紳士的な対応でこういった。


「お嬢さん、あのね? こういうことをこんな年齢からしているとね? 今はいいかもしれないけど、後々死にたくなるほど後悔するからやめた方がいいよ? だからここら辺でやめて帰りなさい、周りには言わないどいてあげるから……」


少女は俺の言葉を遮って


「あー! 信じてないなー! まー仕方ないか。それじゃあ見せてあげる。えいっ。」


少女はいきなり飛びついてきたかと思ったら、俺からカバンを奪い、財布を取り出して1000円札を抜き取った。


「てめぇ! ひったくりってのはバイクとかでやるもんだろ!? つーか早く返しやがれ!」


俺の腕をひょいひょいと避けながら彼女は


「今から君の家にテレポートします。」


「何わけのわかんねぇこと言ってんだコノヤロウ!」


「私は野郎じゃない! よーし、いでよ! ヴェンディングマシーン!!」



あたりは白い光と煙に満たされ、彼女の前に四角く、大きな金色の物体が現れた。



それはボタンがたくさんついていて、硬貨と紙幣を入れる口がついており、下には取り出し口が付いている。


俺はこれに見覚えがあった。


これは割とそこら辺に置いてある


「自動販売機じゃねーか!!」


「自動販売機じゃなーい! ヴェンディングマシーン!! ほら、行くよ! つかまって!」


「つかまれってどこに……!」


少女がそのヴェンディングマシーン(笑)とやらに俺から奪った1000円札を投入口に入れると、俺と少女と自販機は青く光り始め、宙に浮いた。


「うわああああぁぁぁぁ!!」




気がついた時にはもう俺は俺のアパートの部屋の中にいた。


俺の隣には当たり前のように派手な少女が立っていた。


「どうなってんだ……これ……」


「どう? 信じてくれた?」


彼女は目を輝かせながらこちらをドヤ顔で見ているが、俺は無視をしてあたりを見回した。


やはりあの自販機も部屋にテレポートされてきていた。


それも、買ったばっかりのゲーム機の上に。


「アアアアアア!! なんてことをォ!!」


「ごめんなさいごめんなさい! 謝るから頭の輪っかを掴まないでぇー!」









やっと落ち着いた。


色々な疑問が湧きまくりだが、テレポートの件で俺は少し彼女を信用することにした。


「で、話ってのは何よ。」


「やっと聞いてくれるのね。じゃあ改めて自己紹介から。」


んんっと咳払いをして彼女は


「我はデウス・エ――」


「あーはいはい。そういうキャラ設定はいいから。」


「設定じゃないもん! じゃあ本題に入るね。あなたにはモンスターを討伐してもらいます。」


「……? は?」


「だーかーらー、モンスターの討伐。」


「いやいやいやいや、なんで俺がモンスターハンターしなきゃいけないわけ?」


「えーっと、私の世界で戦争が起きちゃってー、その被害がこっちの世界にも及んじゃってー、それで私の世界のモンスターがこの世界にこれから降りてきちゃうっていう……まぁよく分かんないんだけど!」


物凄いとばっちりだし、全部厨二病の痛い妄想にしか聞こえないが、さっきの件もあって、全てを否定することは出来ない気がする。


俺は落ち着いてから


「じゃあそのモンスターとやらをどうやって倒すんだ?つーか俺なんかで倒せるの?」


「君が生身のままモンスターの前に立てば2秒で木端微塵だね。」


俺は呆れた。


しかしマキナは続けて


「生身、のままだったらね?だからこれを使うの。」


マキナはまた自販機を出現させた。


俺の冷蔵庫が置いてあった場所に。


「丁度いい置き場所があったわ。」


「オイィィィ! 冷蔵庫どこやりやがたァ!?」


「あ、消えちゃったみたい……って、あぁ! ごめんなさい! 中身はヴェンディングマシーンの中にちゃんと入ってるからぁ! だから頭の輪っかを握り潰そうとしないでぇ!」


冷蔵庫がピカピカの新品になった。


ピカピカが比喩ではないところが異様だ。


「じゃあ話に戻るわね。あなたにはこのヴェンディングマシーンを使ってモンスターの駆逐活動を行ってもらいます。」


「こんな自販機、どう使えっての。」


「だから自販機じゃないっつーの。まぁいいわ、よくぞ聞いてくれました。これに『価値』を入れるとそれに値する何か、を何でも出してくれるの。だからこれに『価値』を入れてモンスターと戦う力を手に入れてほしいの。」


「だったらマキナがそれ使えばいいんじゃない。」


「できてたら私もそうするわ。だけどこの機械はあなたの所有する『価値』しか受け付けないの。」


「だからテレポートする力を手に入れるために俺の1000円が必要だったわけか。」


「そういうこと。なかなか飲み込みが早いわね。流石神に選ばれるだけのことはある。」


「でも俺今月金欠なんだよ。お前に1000円取られてさらに危険な状態なんだけど。」


「そこは大丈夫!この世界に存在するものには何でも『価値』があるからあなたの所有する『価値』を日本円に変換してあげるわ!」


「俺の所有物ならなんでもいい、か。だったら俺自身とかも変換できるの? 俺の『価値』はどれくらい?」


「ちょっとまっててね。」


マキナは俺の顔や体、全てをじっくりと、観察しだした。


「なんかすごい恥ずかしいんだけど!? そんなんでほんとにわかんの!?」


「もうちょっとだからじっとしてて。」


1分後くらいたったあと、鑑定が完了したようだ。


「あなたの価値が出たわ。あなたの価値は……価値は……」


マキナはなぜか顔を真っ赤にして笑いを堪えているようだ。


「価値は?」


「サンジュウ……」


「え?」


「30万円……」


「えええええええええええええええぇぇ!?」


「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」


マキナは涙目になって大笑いしている。


「30万円って……プッ……そこら辺のサラリーマンでも1500万円は価値あるっての! アハハハハ!」


俺は泣いた。割と本気で。


もっと1億とか1兆とかそんなバカげた桁数になるんじゃねぇかっていう期待を思いっきり裏切られ、しかも一般人以下の価値しかないという2連続ボディブローに、あっさりとKOされた。


「ああ! 本気で泣かないで! ごめんなさい! 笑いすぎた! でもおかしいなどんな人間でも1000万円以上は価値があるはずなのに……」


「ハハハ……アハハハハ……」


「大丈夫?」


「こんな価値しかない俺はモンスターにぶっ殺されても当然かァ……いいよ……やってやるよ討伐。」


「やってくれるの! ありがとう!」


そこは喜んじゃダメなとこだろ、と思ったがスルーして、


「で、そのモンスターとやらはどこに現れる?」


「ええっとね」


マキナはどこからともなく取り出した携帯で地図を見ているらしい。


「あったわ!ここよ!」


マキナが自慢げに指をさした場所はどこか見覚えがあった。


その瞬間、はっきりとその場所がわかって俺は絶望した。


「俺の……実家じゃねぇか……」























読んでくれて本当にありがとうございました。

全くの初心者で読みずらくて理解しずらい表現が多かったかもしれませんが、どんどん勉強してうまくなっていこうと思います。なのでアドバイスとかをお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ