虹の終わりには死体が埋まっていればいい
少し大人びてて少し周りの人とは物事の考え方が違うこの男。
考え方はあまり好きじゃないのに、なんだかんだいってよく一緒に行動している。
「あ、ねぇ、虹だよ。」
「ふぅん。僕はあまり興味ないね。女子は虹が好きなのかい?」
「女子は関係ないと思うけど。綺麗じゃん。」
「見た目はね。」
どういうこと?
聞き返そうとした時、ちょうど小学校低学年の男女何人かが、
「虹だ!虹だよ!」
「虹の終わりには、宝物が埋まってるんだよね!」
「探しに行こう!」
と言いながら走り去っていった。
「迷信だけど、あんなに綺麗な虹なんだから、素敵な宝物が埋まっててほしいよね。」
「……僕はそういう考えは好きじゃないんだ。」
「……どういう考え?」
「美しい物の下には美しい物がある、という考えだ。僕は虹の終わりには死体が埋まっていればいいと思う。」
相変わらず夢がない。
この男と私は考え方が全然合わない。
「いいじゃん。美しい物を見たら、美しい物を想像するでしょ。」
「ふぅん。……君は、もっと物事をしっかり考えたらどうなんだ?」
ムカつく言い方だな。
しっかり考えてるつもりだけど!?
「なによ、夢の見すぎだって言いたいの?」
「何の話だ。見た目が美しい人が、必ずしも中身も美しいとは限らないだろう。」
「……は?そっちこそ、何の話よ。」
「さっきの話だ。それなら、逆に考えてみたらどうだ?美しい物と美しい物が結びつくなら、醜い物は醜い物と結びつくことになる。」
「……」
「君のような、見た目が美しくない人は中身も必ず美しくないとは言えないだろう?」
「失礼な!美しくないって!」
「はて、じゃあ君は自分が美しいと言うのかい?」
「そうは言わないけど……」
こいつ本当嫌な奴。
女子にむかって“美しくない”だなんて!
ほとんど、ブスって言ってるようなもんじゃん!
「まあ、とにかくそういうことだ。見た目がすべてではないと思わないか?」
「……それは私もそう思う……。」
「素直でよろしい。」
この男は、たまにこうやってふっと微笑む。
あまり見せない表情に、顔が熱くなった気がしたけど……多分気のせいだよね。
「虹の終わりには死体が埋まっていればいい。」
「それもどうかなぁ……」
「いや、虹の終わりには死体が埋まっているんじゃないか?」
美しいものの下に美しくない物が埋まってることだってあるって言いたいのはわかるけど。
「縁起でもないこと言わないでよ。」
「だって、そうだろう?」
この男、次は何を言い出すんだ?
そう身構えていたら、ゆっくり近づかれて、目の前に立たれた。
そして、耳元で囁かれた。
「君は枯れた木だ。でも、僕が愛する素敵な宝物がたくさん下に埋まっているからな。」
その意味は容易に理解できた。
顔が熱くなったのは、今度は気のせいではないようだ。
まわりくどかったでしょうか?
読んでいただき、ありがとうございました。