六話
「拠点はここに置くとして、問題はどうやってマリアールを探すかだな」
レイジが腕を組んだ。この場所にいる確証はなく、推測でここに派遣された。探すと言ってもほぼ闇雲になってしまう。
「とりあえず周囲探索が一番手っ取り早いわよね」
アイリが意見を述べる。
「各自で散らばるのもよくないだろうな。二手に分かれるか」
「バランスよくするなら私とレイジ、その他の三人でチームになってもらった方がいいわね。それで問題はある?」
レイジとアイリが会話に参加していない三人を見た。三人もそれでいいと、ちぐはぐなタイミングで頷いた。
「時計はあるな。それなら三時間後にここに集合。俺とアイリは南へ、他三人は北だ。それじゃあこれで会議は終わりだ」
簡潔ではあったが、やることが決まれば行動は早い。
建物をあとにして、二組のグループに別れて歩き出した。
「で、よお。マリアールって強いのか?」
歩き始めてすぐ、キョウスケが疑問を投げかけてきた。
「もしかしてずっとそんなこと考えてたわけ?」
いつものように、ゼンが呆れ顔で返した。
「聖女聖女とは言うが、それ以上のことがなにもわからないじゃねーか。いろんな人間に好かれてたっていうことくらいしかわからん」
「一応だけど、記録にはマリアールが戦闘に参加したっていうのは残されてないよ。公の記録しかしらないから、実際どうなのかなんてのはわからないけどね」
「式守五人も派遣しておいて、戦闘力がありませんっていうのも不思議な話じゃねーか?」
「だからそれは、スリエルに下ったマリアールが魔獣を操る可能性があるからで――」
言いかけて、ゼンが口をつぐんだ。顎に指を当て、歩きながらなにかを考えているようだった。
「イズミはどう思う?」
「マリアール様に戦闘力があるのかどうかってこと?」
「うん。もしも大量の魔獣が使役されるとしたら、間違いなく式守五人じゃ足りないんだ。そこが想定された範疇であるのなら、もっと人海戦術的な策を取った方がいいんじゃないかと思ってね」
「確かにそうだね。そうなるとマリアール様には戦闘力があって、それを退治するために私たちが派遣された、と考えるのが自然だと思う。でも戦闘力があるとすればスリエルに与えられた力だと思うから、私たち五人でも、どっちにしろ勝ち目はないんじゃないかな」
「そこも疑問点なんだよ。どうやっても五人じゃ無理なのに派遣された。その真意がよくわからない」
「五人がなんで派遣されたか。そればっかりはイツカ様本人じゃないと……」
「結局、僕たちはマリアールを探すっていう任務を続けるしかないわけだ」
「で、マリアールって強いのか?」
「話聞いてててよ!」
そんな会話をしながら、三人は北へ、北へと歩き続けるのだった。
瓦礫の中を歩いているが、行き帰りの時間を考えれば一時間半程度の距離で引き返すのが妥当である。時間を気にしながら、一時間半を迎えた。一応周囲の探索をして、来た道を引き返すことにした。
得られる物といえば「なにもない」ということだけであった。だが逆に、特に異常がないという情報を得られたとも言える。
帰るまでに三時間と少しかかった。拠点の前にはアイリとレイジがすでに待っていた。
「遅いぞ」
「十分程度じゃないか。許容してよ」
「まあ、無事ならいい。そろそろ日も落ちてくる。食事をとって、見張り番を決めよう」
建物の中に入り、見張り番を決めることになった。二時間ごとに見張りを交代する。見張りは一人。レイジ、アイリ、キョウスケ、ゼン、イズミの順番になった。
食事は全員で食べた。と言っても、自分たちで持ってきた非常食だ。
レイジが外に出て、他の四人は自分の部屋へ向かった。
イズミもまた割り当てられた部屋に入った。
ベッドに座り、天井を見上げた。レイジの目を思い出すと、今でも胃のあたりがキューっと痛む。
ゼンが言っていたことを思い出す。なぜ五人がここに派遣されたのか。考えられるのは斥候や調査であるがどこか引っかかる。
両手を広げてベッドに倒れ込んだ。この状況で自分にできることなど限られている。休める時に休み、眠れる時に寝る。それだけだ。
そう考えると瞼が落ちてくる。眠れる時に休めるようになっておけ、というのはイツカの言いつけだ。
こうして、イズミの一日が終わっていく。不安と疑問を抱えたまま、暗闇の中へと落ちていく。




