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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と癒やしの咎人》
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最終話〈ビューポイント:ナディア〉

 ナディアは上体を起こしたまま、窓の外をじっと見つめていた。


「ナディア、もう身体はいいのか?」


 サンクノーリオが食事を運んできた。それをベッドテーブルに置き、イスに座った。


「ええ、問題ないわ。ただ、不甲斐ないなと思っただけだ」


 囚われ、魔導書を使えなくさせられた。魔導書が使えないナディアは、魔導師としては中の上といったところである。簡単に負けることはないが、複数人が敵となると話が変わる。同時に、ナディアは遠距離での支援がメインであった。一人で複数人と戦うのはナディアの得意とするところではなかったのだ。


「あれは、どうしようもなかったと思う」


 サンクノーリオが無表情ながらもそう答えた。表情は変わらないが、言葉には抑揚が込められている。


「兄さんの話ではスリエルが作ったホムンクルスということだけど、あんなに危ないホムンクルスがまだまだたくさんいるだなんて」

「あの時は五人だったか。いずれもナディア同等の魔導力を持っていた。勝てるわけがない」

「そう、ホムンクルスは五人いた。でも兄さんが倒したのは一人だけ。他の四人はどこに行ったのか……」

「おそらくスリエルの元に戻ったのでしょう。オズワルドのことを報告するために」

「自爆能力で全員が自爆すれば兄さんを倒せるとは考えなかったのかしら」

「一部始終を見ていたと考えても不自然ではある」

「ホムンクルスはスリエルの捨て駒、しかも自分たちが捨て駒であることを理解している。にも関わらず自爆せずに帰還した。魔導書を封印する力までもっていながら、それい以上のことをなにもしなかった」

「ロックスにはこの話を?」

「一応ね。そのうえで出た結論がいくつかある」

「抜け目がない」

「それはどうも。端的に言えば、すべてのホムンクルスが自爆能力を持っているとは限らないということ。あとはそうね、元々役割がはっきりしていて、他の四人はその役目を全うしただけということ。魔導書を封印したのも、兄さんと戦ったのも、自爆したのも同じホムンクルスであれば納得できる」

「だからこそ解せないこともある、と」

「そういうこと。でも今無駄に考えても仕方ないわ。少し休んでから兄さんの手伝いでもするわ。そこでなにかが得られればいいけど」


 サンクノーリオに向かって微笑んだ。


 囚われ、痛めつけられても特に変わった様子はない。最初から覚悟していたことだ。式守の妹であること、魔女に使われるということ。誉れと危険を表裏に持つ今の自分の立ち位置をわかっているからこそ、笑うことができたのだろう。


 そしてもう一度外を見た。そこからは忙しそうに駆けずり回る兄の姿が見えた。

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