最終話
「新しい師匠って……」
そう言いながらドアの方へと振り向いた。
「久しぶりだな、ロウファン」
「やっぱりかよジジイ……」
俺たちをスルヴァンに無理矢理連れていったあのジジイだ。
「そう言うな、新しい師匠だぞ? ツーヴェル様から言われたとはいえ、お前のことは気になっていたからちょうどいい」
「気になってたって、気色悪いこと言うなよ」
「お前の才覚を認めている、ということだよ。お前はこれから、ワシとともに魔操師として成長していく。その覚悟はあるか?」
「覚悟が必要なことをさせるってことか?」
「それはお前次第だ。が、このままでは英雄ヘリオードとは戦えない。それはお前が一番よくわかっているはずだ」
わかっている。徹頭徹尾、俺はアイツには敵わない。ジジイに教えを請えば戦えるというのなら、俺はそれにすがるしかない。
「わかった。俺はアンタについていく。アンタは信用できるからな」
いろいろ引っ張り回されたが、それでもコイツのおかげで俺は強くなれた。ヴェルのもとにいるよりも確実に階段を登れる。
「いいだろう。それじゃあツーヴェル様、ロウファンを借りていきますぞ」
「おういいぞ。好きに扱ってくれ。死んだら……それはそいつが弱かっただけの話だ」
「御意。それではいくぞ」
「行くってどこにだよ」
「ウエストレギオン、サイバール山脈だ」
サイバール山脈。ウエストレギオンでも高レベルの魔獣がいると言われている場所。今の俺では倒せないような、凶悪な魔獣がたくさんいるだろう。
「あの」
レアが立ち上がった。
「私も、連れて行ってはもらえないでしょうか」
「エメローラ……いや、今はレアだったかな。キミには少々辛い修行になる。できれば姉妹たちと一緒に、ツーヴェル様の元で暮らして欲しいものだ」
「私でもなにかできることがあると思うのです。お願いします、ギュンターク様」
「ツーヴェル様、どうなさいますか?」
じいさんがヴェルの顔色を伺う。
「いいんじゃないか? レアにもレアなりの覚悟があるんだろう。それに、レアの命を救ったのはロウだからな。ロウについていきたいという気持ちは尊重してやりたい」
「わかりました。しかし、ついて来られなくなったその時、ワシは問答無用で切り捨てます。ご容赦くださいませ」
「大丈夫だ。女っつーのはな、以外と強い生き物なんだよ」
「そう言われると……そうですね、わかりました。ロウファン、レア、すぐに支度をしろ。すぐにここを発つ。時間はないぞ」
「わかった」
「わかりました」
パンっと、ヴェルが手を叩いた。
「それじゃあ話は終わり。解散して各大陸に戻ること」
こうして話は終わった。そして、俺たちの新しい生活が始まる。今までとは違う、きっと過酷な生活を強いられるだろう。
それでもいい。俺は最初からヘリオードさえ倒せればそれでいいのだから。そのために、できることは全力で挑んでいかなければいけないのだ。
そう、なにを犠牲にしても、俺は俺の野望を果たすと、あの時に決めたのだから。




