表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と腐った聖人》
75/225

二十五話〈ビューポイント:?〉

 宿の一室に、女性四人が集まっていた。見た目は様々であったが、四人とも年齢は近そうである。


「それで、これからどうするだい?」


 そう言いながら、オクトリアは木製のジョッキをテーブルに置いた。


「それを考えるためにここに集まったのではなくて? オクトはこれだからイヤね」


 フォーリアが髪の毛を指先で弄ぶ。


「そ、そういうのはよくないと思うんですが……」


 おどおどしながら、イツカが二人の仲裁に入った。


「やめなさいって。せっかく集まったのに、これじゃあ話し合いが進まないでしょうが。まあ、今度の方針なんて最初から決まっているようなものだけど」


 ツーヴェルが呆れたように頬杖をついた。


 仲が悪いわけではない。むしろ仲がいいと言った方がいいだろう。フォーリアは少々高飛車で皮肉屋でもあるが、オクトリアはそれを気にすることがない。それを知りながらも仲立ちをしようとする臆病なイツカ。呆れながら傍観するツーヴェルというのがいつもの構図だった。


「いいよイツカ、私は気にしてないから」

「そうそう、貴女が気負うことなどなにもないわ」

「そんなこと言ってもぉ」

「そのへんにしておけ。とにかく、私たち四人はスリエルを追う。その間、私たちは大陸の治安に関して介入できない。だから各大陸の首脳には話をしなきゃいけない。各国には首脳から話をしてもらおう」

「問題は、私たちだけでスリエルと戦えるのか、という部分ではありませんか?」

「そこ、なんだよな。力が強かったと言われていた時代でさえ、魔女三人でスリエル一人を抑えられなかった。力が衰えた今の魔女では、四人でも歯が立たないだろう」

「私たちならなんとかなるさ。なんたって、大陸を守る魔女なんだから」

「どうして貴女はいつも無駄に自信満々なのかしら……」


 結論は最初から決まっていたはずだが、結論に関しての意見は様々であった。


「私たち四人のターゲットはスリエルのみだ。取り巻きの相手をしている余裕はない」

「取り巻きの相手をしている暇はないが、敵の取り巻きだって相当な実力者だ。その辺の魔導師、魔操師じゃ手も足も出ないんじゃないか? 対峙した私が言うんだ、間違いはない」

「取り巻きの詳細はわかるか?」

「十年前に姿を消した聖母マリアール。二百年前に大監獄を脱走したオズワルド。そして最後に、人食い勇者として世界を蹂躙してきたヘリオード。あと、遠くで見ていた者が一人。それが誰かまではわからなかった」

「そう、ですか。四人の中でスリエル、その取り巻きと対峙したのはオクトリアさんだけ。となれば確実でしょう」

「じゃあどうするの? 今の世界において、私たちと同等の力を持つ人間なんていないわよ?」

「お前らの式守を使わせて欲しい。魔女の式守をスリエルの取り巻きに当てる。勝てるかどうかはこの際度外視だ。なんとかしてもらうしかない」

「あら、じゃああの少年は貴女の式守なのかしら?」

「ロウか。アイツは、式守の器じゃない。ただの弟子で、ただの復讐者だよ」

「学園の事件に関しては感謝してるけど、あの子に相手ができるのかしら。取り巻きにいるヘリオードが世界を蹂躙するヘリオードなら、はっきり言って式守にも慣れない魔操師では相手にならないわ」

「それでもアイツはなんとかする。と、私は信じているよ」

「でも、式守にはしないんですよね?」


 イツカは眉間にシワを寄せてツーヴェルを見ていた。


「そうだな、アイツの成長次第、って感じじゃないか? とにかく、ヘリオードはロウにまかせて欲しい。他の三人はお前らで決めろ」

「ちょっと! そうやって放り投げるのは貴女の悪いクセよ。そうね、私はオズワルドをもらおうかしら。あの子は女性には優しすぎるから」

「となると、私はマリアールさんでしょうか」

「私は式守がいないけど、なんとかして後ろに控えていたヤツを捉えたいね」


 これからの方向性が固まった。


「そろそろ式守の一人でも作ったら? 魔女なのに式守がいないっていうのはどうかと思うのよね」

「そんなこと言ったらツーヴェルだって一緒だろう?」

「私には可愛い弟子がいるからいいんだよ。ってことで、オクトは早めに人員を確保して。じゃないと、動くに動けないから」

「わかった。それはそれで考えよう。今は、これだ」


 オクトリアがジョッキを持ち、中身を一気に煽っていく。


「はー! やっぱりこれだよなー!」

「久しぶりに会ったんだ。それも、悪くないかもな」

「私は下に行っていろいろ頼んできますね」

「私は赤ワインね」

「ビール追加だ!」

「お前ら、イツカが優しいからってつけあがるなよ。ああ、私はブラッディメアリーだ」

「では行ってまいりますね」


 笑顔のまま、イツカが部屋を出ていった。


 こうして、魔女四人の夜は更けていく。


 次の日の朝、騒がしい声のせいで四人とも出入り禁止になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ