二十五話〈ビューポイント:?〉
宿の一室に、女性四人が集まっていた。見た目は様々であったが、四人とも年齢は近そうである。
「それで、これからどうするだい?」
そう言いながら、オクトリアは木製のジョッキをテーブルに置いた。
「それを考えるためにここに集まったのではなくて? オクトはこれだからイヤね」
フォーリアが髪の毛を指先で弄ぶ。
「そ、そういうのはよくないと思うんですが……」
おどおどしながら、イツカが二人の仲裁に入った。
「やめなさいって。せっかく集まったのに、これじゃあ話し合いが進まないでしょうが。まあ、今度の方針なんて最初から決まっているようなものだけど」
ツーヴェルが呆れたように頬杖をついた。
仲が悪いわけではない。むしろ仲がいいと言った方がいいだろう。フォーリアは少々高飛車で皮肉屋でもあるが、オクトリアはそれを気にすることがない。それを知りながらも仲立ちをしようとする臆病なイツカ。呆れながら傍観するツーヴェルというのがいつもの構図だった。
「いいよイツカ、私は気にしてないから」
「そうそう、貴女が気負うことなどなにもないわ」
「そんなこと言ってもぉ」
「そのへんにしておけ。とにかく、私たち四人はスリエルを追う。その間、私たちは大陸の治安に関して介入できない。だから各大陸の首脳には話をしなきゃいけない。各国には首脳から話をしてもらおう」
「問題は、私たちだけでスリエルと戦えるのか、という部分ではありませんか?」
「そこ、なんだよな。力が強かったと言われていた時代でさえ、魔女三人でスリエル一人を抑えられなかった。力が衰えた今の魔女では、四人でも歯が立たないだろう」
「私たちならなんとかなるさ。なんたって、大陸を守る魔女なんだから」
「どうして貴女はいつも無駄に自信満々なのかしら……」
結論は最初から決まっていたはずだが、結論に関しての意見は様々であった。
「私たち四人のターゲットはスリエルのみだ。取り巻きの相手をしている余裕はない」
「取り巻きの相手をしている暇はないが、敵の取り巻きだって相当な実力者だ。その辺の魔導師、魔操師じゃ手も足も出ないんじゃないか? 対峙した私が言うんだ、間違いはない」
「取り巻きの詳細はわかるか?」
「十年前に姿を消した聖母マリアール。二百年前に大監獄を脱走したオズワルド。そして最後に、人食い勇者として世界を蹂躙してきたヘリオード。あと、遠くで見ていた者が一人。それが誰かまではわからなかった」
「そう、ですか。四人の中でスリエル、その取り巻きと対峙したのはオクトリアさんだけ。となれば確実でしょう」
「じゃあどうするの? 今の世界において、私たちと同等の力を持つ人間なんていないわよ?」
「お前らの式守を使わせて欲しい。魔女の式守をスリエルの取り巻きに当てる。勝てるかどうかはこの際度外視だ。なんとかしてもらうしかない」
「あら、じゃああの少年は貴女の式守なのかしら?」
「ロウか。アイツは、式守の器じゃない。ただの弟子で、ただの復讐者だよ」
「学園の事件に関しては感謝してるけど、あの子に相手ができるのかしら。取り巻きにいるヘリオードが世界を蹂躙するヘリオードなら、はっきり言って式守にも慣れない魔操師では相手にならないわ」
「それでもアイツはなんとかする。と、私は信じているよ」
「でも、式守にはしないんですよね?」
イツカは眉間にシワを寄せてツーヴェルを見ていた。
「そうだな、アイツの成長次第、って感じじゃないか? とにかく、ヘリオードはロウにまかせて欲しい。他の三人はお前らで決めろ」
「ちょっと! そうやって放り投げるのは貴女の悪いクセよ。そうね、私はオズワルドをもらおうかしら。あの子は女性には優しすぎるから」
「となると、私はマリアールさんでしょうか」
「私は式守がいないけど、なんとかして後ろに控えていたヤツを捉えたいね」
これからの方向性が固まった。
「そろそろ式守の一人でも作ったら? 魔女なのに式守がいないっていうのはどうかと思うのよね」
「そんなこと言ったらツーヴェルだって一緒だろう?」
「私には可愛い弟子がいるからいいんだよ。ってことで、オクトは早めに人員を確保して。じゃないと、動くに動けないから」
「わかった。それはそれで考えよう。今は、これだ」
オクトリアがジョッキを持ち、中身を一気に煽っていく。
「はー! やっぱりこれだよなー!」
「久しぶりに会ったんだ。それも、悪くないかもな」
「私は下に行っていろいろ頼んできますね」
「私は赤ワインね」
「ビール追加だ!」
「お前ら、イツカが優しいからってつけあがるなよ。ああ、私はブラッディメアリーだ」
「では行ってまいりますね」
笑顔のまま、イツカが部屋を出ていった。
こうして、魔女四人の夜は更けていく。
次の日の朝、騒がしい声のせいで四人とも出入り禁止になった。




