十一話
「さて、じゃあ事前準備の話でもするか」
「準備することなんてある?」
「そうだな、騎士団が敵に回ったと仮定しよう」
「いきなりクライマックスすぎない? いきなり敵に回すって、アンタがなんかやらかさないとありえないでしょ」
「なきにしもあらず」
「いや、ホントにやめて。騎士団対魔操師なんて町が滅びるわ……」
「まあまあ話を聞けよ。で、例えば騎士団が襲ってきたとしよう。お前ならどうやって退ける?」
「規模にもよるけど、あの列車での統率の取れ方からすると、かなり人数が多いでしょうね。となると相手を退けるよりも、こっちが逃げた方がいいと思う。幸いにも周囲は森と海だしね」
「タルトは?」
「私も一緒ですね。戦う必要も無いですし、逃げる方が賢明に思えます」
「理由がないから戦わないか」
「ええ、騎士団が私たちにも影響がありそうな悪いことをしていたら別ですけどね」
「じゃあ悪いことをしていたら? 町の人たちを使って、世界に仇をなすことなんかを考えていたら?」
「戦う方を、選ぶかもしれません。ですが決定権はロウにありますが」
「正直、この町のことはどう思ってる?」
「この町のこと、ですか。いい雰囲気だと思いますよ。祭司様も優しそうでしたし、騎士団の方も誠実そうでしたし。ある一点を除いては、とてもいい場所かと」
「その一点は、たぶん俺と同じ意見なんだろうな」
「その一点ってなによ」
「もしかしてアンはわかんねーのか? それはさすがにマズイだろ。契約解除する?」
「ちょ、まっ、待って……」
若干涙目になってしまった。これはまずかったか。
「冗談だ。たぶんタルトが言ってる一点っていうのはこの町の立地条件にある」
「森の中に町があって、林業と漁業と農業で生計を立ててるのは普通でしょ?」
「違う。こんな人が来ないところなのに、しかも町というよりも村みたいな場所で、騎士団と町が共存していること自体が異質なんだ。同時に騎士団を統べるのが司祭っていうのも疑問が大きい」
「そうですね。聖十字騎士団でしたっけ。なにを守る騎士団なのかがまずわかりません。騎士団というのは、基本的に君主を守るために存在するものです。同時に司祭様。なにを奉り、司っているのでしょう」
「そういうことだ。活気がある、誠実で優しそうだ、共存できている。その全てが引っかかる」
「では逆に質問よろしいですか?」
「なんだ」
「騎士団が襲ってきた場合、ロウならどうしますか?」
「もちろん戦う。俺はここで暴れ回るつもりなんてない。そうなれば騎士団が襲ってくる理由は、俺のことが邪魔になった時だ。邪魔、どんな邪魔だ? 自分たちがやっていることに対して障害になりうると判断されたからだ。それなら、叩く」
「なるほどねー、でも障害になりうるって判断されなきゃいいんでしょ? アンタがただの旅人って設定で、特に行動を起こさなきゃそんなふうに思われないでしょ。なんの問題もないわ」
「だと、いいんだけどな。と、話が逸れたな。でだ、司祭のことはよく観察しておけ。同時に騎士団のこともだ。そして騎士団が襲ってきたらまず逃げる。対策はこれで完璧」
「対策、とは言わないような気もしますが……」
「とりあえずはこれでいい。ただし、三人一緒に行動すること。はぐれたら面倒くさいからな。あと、どんなことがあっても魔導術は禁止だ」
「おーけー、わかったわ」
「承知しました」
何事もなければそれでいい。が、俺の人生は割りと山と谷の連続だ。
断言しよう、今回もきっとなにかがあると。
いや、なにか起きて欲しいわけではないのだが……。




