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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と不死の皇女》
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二十一話

 ルノレアンファス:コール、D9、成立。ドロップカード、1。


(後追いではダメ。ここで巻き返すしか方法はない……!)


「アナタはAを入れ替えた。いや、入れ替えるしかなかった」

「それはどうしてだ?」

「偏ってしまうから。このゲームで一番やってはいけないこと、それは右に、真ん中に、左にと数が寄ってしまうことです。一度寄ってしまった数を立て直すには最低でもニターンかかる」

「ニターンっていう数字はどこから?」

「持ち札が四枚しかないのと、カード自体が0から9までしかないから。一ターンでは一枚しか入れ替えられない、つまりニターンかけないと分散させられないんです。カードの引き次第ではもっとターン数が増えます」

「なるほど、いい考察だ」

「そこでアナタが1を捨てた理由を考えました。Aを取っておいては、おそらく少ない数字で偏ってしまう、ないし真ん中で偏ってしまうからです。だからコールはA、0です」

「なんだかんだと言ってはいるが結構博打だと思うぞ? いや、正解なのだがの」


 ルノレアンファスが0を出し、手札が二枚になった。


 カードを引く。0だった。


(悪くない。悪くないけど、これはもう無理矢理押し切るしかない)


 深呼吸を一度。5と0を入れ替えた。



 エメローラ:コール、A0、成立。ドロップカード、5。ハンドカード、00。



(二枚になると、より一層運の力が必要になる。推測もかなり運を必要とする。わからない時は本当にわからない。でも相手の捨てたカード次第では、逆にとてもわかりやすくなる)


「5と入れ替えたのか。こういう状況になると理解していたみたいな、手本のようなやり方だ」

「手本、ですか?」

「ああ。二枚になっても、真ん中を捨てれば、それと入れ替えたカードがなにかはわからなくなるからな。でも誤算が一つ」

「私に誤算があると?」

「今Aにあるカードと、さっき出した5なんだがな。最初から動いてなかったろ。ヌシは運がいい。でもその運もここまでかもしれんの。コール、A0だ」


 エメローラは黙ったまま、Aのカードを出した。


 だが、エメローラはまだ諦めてはいない。自分が持っている最後の一枚が、0よりも大きい数である可能性の方が高いからだ。可能性が高いからこそ、次のターンでは0だとコールされない。


 ルノレアンファスがカードを引き、二枚の真ん中に入れた。一回、二回、三回と強めに瞬きをした。そして、エメローラから見て左側のカードを捨てた。数字は4だった。



 ルノレアンファス:コール、A0、成立。ドロップカード、4。



(一番小さい数字である4を捨てた。4よりも大きい数。それでいて、彼女は一時期真ん中を集めていた。同じカードは新しい方が数が大きい方に置くというルールがあるから4という見方もできる。でもここは5か6しかない)


「コール、A5です」

「どうしてそう思った?」

「勘です。5か6か、迷って5にしました」

「女の勘は怖いねぇ」


 当たっていた。ルノレアンファスが5を出し、お互いに残りカードが一枚になる。


 二枚目の4という可能性は充分にあった。


(可能性とは別の可能性と共存する。一つしか選べないのであれば、自分が信じた道を突き進むのみ。ロウがそうであったように、私もそうしなければ、きっと魔導書に、魔法少女に勝つことはできない。そう、絶対に)


 引いたカードは8。0の右側に置き、0を出した。


(さあ来なさい。このターンで、終わらせる)



 エメローラ:コール、A5、成立。ドロップカード、0。



「はやり、ヌシはいい。とても」

「さっきも言っていましたね」

「ヌシは自分がクローンだと知っている。知ってもなお抵抗している。姫としての矜持を失っていなかった。今もまだ瞳は死んでいない」

「お褒めに預かり光栄ですね」

「こちらとしても0を出されたら打つ手がない」

「コールはどうされますか? 今までのこともある、コールは0だ」

「残念ですが、さすがに私もそこまで引きがよくはありません」

「そうか、ついてないな。ヌシも、ワシもな」


 ルノレアンファスがカードを引く。元あったカードの左隣に置き、6を出した。



 ルノレアンファス:コール、0、不成立。ドロップカード、6。



「6よりも大きいカード。789ですね。この三枚のどれか」

「さあどれにする? ヌシはもう決めておるのだろうが」

「ええ。私の誕生日はパイシーズの月、八日なのです」

「あー、なるほど。そうくるか」

「ええ、なので7でお願いします」

「おいおい、まったく脈絡がないではないか」

「えっと、私が好きだった小説の主人公の誕生日がサジタリアスの月、七日だったもので」

「そういう悲しそうな顔をするんじゃない。ワシが悪者みたいだろうが」


 そう言って、彼女は最後のカードを出した。


「私の勝ち、みたいですね。ありがとうございました」


 深々と頭を下げると、ルノレアンファスのため息が聞こえてきた。


「そうだよ、お前の勝ちだ」


 顔を上げると、負けたとは思えないほど晴れ晴れとした顔をしていた。




〈試練終了:勝者、エメローラ〉


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