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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と不死の皇女》
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十三話

 次の日、じいさんから貰った情報をまとめてから準備を進めた。やるなら今日だ。


 丸一日かかってしまったが、城に乗り込むには十分な準備がと取ったはずだ。


 先日と同じように、日付を跨いだのと同時に宿屋を出た。一応気を張って、周囲に人がいないことを確認した。あまり補助系の魔導術は得意じゃないが、必死に人の気配を探った。けれど誰も褒めてはくれなかった。


 やはり門番はいる。門番だけじゃない、城の中の警備も前回よりも強化されているらしい。しかも場内警備と門番を定期的に入れ替えることで、問題をすぐに見つけられるようにしていた。


「こりゃ厄介だな」

「そういえば、まだ今回の目的を聞いていないのだけれど」


 長い髪の毛を指先で弄びながらメーメが言った。


「そうだったな。今回は地下室を探し、その先に進む」

「その言い方、地下室があること前提で話が進んでるわね」

「よくわかったじゃないか。確定ではないが、おそらく地下室がある。もしくは転送用の魔法陣だ」

「その先でなにかが行われている、という推測をしたわけね」

「そうだ。二階や三階に行く必要はないが、この人数が見つからないようにするのは骨だ。警備員の数が多い。今回は俺とメーメ、エメローラの三人で行く。ルル、アン、タルトは魔導書に戻ってくれ」


 三人は特にも言わずに魔導書に戻った。三冊をホルダーに収め、もう一度様子を見た。


 タイミングは警備兵が交代して瞬間だ。隠密行動に徹し、けれど見つかったら気絶させる。交代した直後ならば、次の交代までは気絶させてもバレづらいはずだ。


 魔法少女にはいくつかの形態がある。人間型の魔法少女形態グリモワールフラメント。ただの本になる魔導儀典形態グリモワールマソレット。魔法少女の武器を自分で使う魔導書女形態グリモワールプレギエーラ。魔導書女形態は間違いなく強いのだが、宿主に依存するため使いづらい。タイマンならば、間違いなく俺も使うだろう。けれど、その機会があまりない。いや、たぶんこれからその機会は増えるだろう。俺も魔操師としてもう少し成長しなくてはいけないな。


 警備員が交代するのと同時に場内へ侵入。エメローラもちゃんとついてきている。少し教えただけなのに、こんなにも上手く魔導術を扱えている。なんという才能だろうと思ったあとで、それも当然かと自分を納得させた。


 地下室であれ転移方陣であれ、物理的にも魔導的にも隠されていることだろう。


 とりあえず一部屋ずつ見て回るしかない。


 手近な部屋に入り、地図を広げた。どうせ端から見ていくのならば、遠くの方から入り口に向かって来た方がいい。まずは一番遠くの部屋、右手の通路の突き当りにある図書室に向かった。


 見るからに怪しそうな場所なので、三人で隅々まで調べた。が、結果はハズレ。メーメの影の能力で本棚の裏も調べてもらったが意味はなかった。


 図書室を出て、片っ端から部屋を探索した。


 一通り探索し終わったところで、もう一度見取り図を広げた。


「なにもなかったな」

「言うな。ったく、なにが間違ってたっつーんだよ……」


 一階の見取り図を隅々まで見たが、見取り図と完全に一致している。隠し扉がありそうな場所もなかった。なにがいけなかった。なにが違うんだ。


 見取り図を地面に置き、あぐらをかいて座る。腕を組んでから、じっと地図を見つめてみた。


「いや、こうしててもなにも出てこないんだよなぁ……」

「ちょっとロウ、これを見て」


 メーメが見取り図を持ってきた。


「これ、三階じゃねーか。こんなん見ても地下室なんて出てこねーだろ」

「そうじゃない。三階の一部分だけ、少し横に凹んでる。一階と二階の見取り図と照らし合わせても、その大きさが顕著よ」


 言われたように、見取り図を重ねて光に透かした。


「これ、エメローラの部屋の付近じゃねーか……」


 本来ならばもっと広い部屋のはずだ。それが僅かに減らされている。


「そういうこと。とりあえずエメローラの部屋に行きましょうか。その付近を探せばなにか見つかるかもね」

「んじゃ、そうするか」


 見取り図を閉まって立ち上がった。尻のホコリを払い、出口に向かう。


「あ、あの」


 そこで、エメローラが口を開いた。


「なんだよ、早くしないと警備員たちに見つかる可能性が高くなる」

「いえ、あの、その。やっぱり自分の部屋に異性が入るのって恥ずかしいなって、思って」

「急に喋ったと思ったらなんだよそれ。今更だろ、恥ずかしがってる場合じゃねーから」


 しなを作るエメローラの手を取って部屋を出た。


「もう、強引なんだから」

「だからなんで恥ずかしがるのか。ええい、顔を赤くしてんじゃねーよめんどくせーな」


 彼女の手を引き込みながら、できるかぎり城内に魔導力を張り巡らせた。警備員の動きは変わらない。交代までもう少しだけ時間がある。


 周囲を警戒しながら、一気に三階まで駆け上がった。なんだかんだと言いながら、エメローラもきちんと足音を消している。自らの周囲の音を遮断する魔導術〈サイレント〉。ちゃんと教えておいてよかった。というか、隠密や戦闘に必要な最低限の魔導術を教えたのだが、それを苦もなく飲み込むとは思わなかった。普通ならば天稟というべきなのだろうが、彼女のそれはおそらく違う。


 天稟、天性、天恵。どれも、違う。当たり前のことで、魔導術を使うことが宿命のような存在なのだから。


 三階に到着、すぐさまエメローラの部屋に入った。


 角部屋の次の部屋がエメローラの部屋。その隣が王妃の部屋。王妃の部屋の横にもう一部屋。その部屋の隣は階段だ。


 この四部屋だけ肥大している。つまり四つの部屋のどこかになにかがある。が、どの部屋かは検討がついていた。だからこそエメローラの部屋に入った。


 彼女と最初に出会った場所であり、ここに仕掛けがあるのであれば、エメローラが寝ていたのも合点がいく。


 三人で室内を捜索していく。壁、天井、ベッド、ドレッサー、カーペットの下。そして、最後にクローゼットを大きく開けた。上が両開き、下が引き戸のクローゼットだ。


「なにもない……?」


 と、エメローラが言った。


「いや、ある。見てみろ、下の部分が染みになってる」


 クローゼットの中に入り、下の部分を押したり横にずらしたりしてみる。ガコガコと板が動くのを確認して、そのまま様々な方向へと動かしてみた。


 一度上に動かしてから左へスライドさせると、クローゼットの後ろに空間が現れた。その空間の向こう側の壁にはなにかのスイッチがついている。


「なんだこれ」

「魔導式の機械みたいね」


 壁に触れると真ん中が割れた。淡い光に照らされた小さな小部屋。人が三人入ればいっぱいいっぱいだ。


 小部屋の中にも押しボタンが何個か付いている。上と下しかないが、おそらくこの小部屋が上下するんだろう。ヴェルに聞いたことがある、エレベーターというやつだろう。文明が発達した都市部にしかないと聞いていたが、こんな辺境の地にどうして設置されているのか疑問だな。

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