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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と不死の皇女》
33/225

七話

「とにかく失礼させてもらうぞ」


 驚いているじいさんを尻目に、俺たちは室内に入っていく。


「失礼します、オジさま」とエメローラ。

「失礼するわね」とメーメ。

「失礼します」「おじゃましまーす」「失礼しますわ」と、ルル、アン、タルトの順で入ってきた。幼女たちはベッドへ直行。人数が多いからそれでいい。


 俺とエメローラとじいさんはイスに座った。


「どうしてこうなった……」


 じいさんが頭を抑えて俯いてしまった。それもそのはず。目的は達成したが、その目的が生きていた。氷が溶けただけではなく、死んだと思われていたエメローラが生きていたのだ。


「逆に俺が訊きたいくらいだ。そもそも姫さんも死んでないし、氷を溶かすだけの魔導術が使えるだなんて聞いてないぞ」

「ワシだって予想外だ。が、まあ見つかっただけでもいいとしよう。あとは魔導書か」

「魔導書の件もなんとかしなきゃならないが、今は姫さんをなんとかしなきゃならないだろ。俺の推測が正しければ、この町は旧王家の信者ばっかりだ。俺がエメローラを攫ったっていうのがバレれば、なにをされるかわかったもんじゃないぞ」


「その推測を聞かせてもらえるか?」

「あん? まあ、あれだ。反王家派と王家信仰派が対立してたんなら、信仰派の信者が湖の除雪をさせてもらえるはずがない。定期的に行うことは不可能だ。三百年前も敬虔な信者が多かったら、王家だって簡単に滅ぼされてない。だから俺は思ったんだ。王家は確かに反王家派に滅ぼされた。でもそれを知った信仰派が反王国派を滅ぼした。湖の中に姫さんを埋めたのは反王家。見せしめだったんだと思う。そう考えた場合、湖の中の姫さんを攫ったのやつが誰かわかるだろ」

「なるほど、信仰派ってことだな。いい読みなんじゃないか?」

「すげー上から目線。ってことはじいさんもいろいろ疑ってたんだな」

「それなりにな。そうなると、住民に見つかったら吊るし上げられるだろうな」

「だからなんとかコイツをしなきゃいけないわけだ」

「あの、ちょっといいかしら?」

「なんだよ姫さん」

「私のことは姫さんじゃなくてエメローラと呼んでもらいたいの」

「こんな時にする話じゃねーだろ。でもまあ、わかった。これからはそう呼ぶ」

「ありがとう! で、アナタは?」

「俺はロウファン=ブラック。じいさんはギュンターク=ハルマイエ。ベッドの上の幼女たちは魔導書だが、説明は面倒だからアイツらに聞け」


 俺がベッドを指差すと「おっけー!」と言って、エメローラがベッドに向かっていった。なんつーポジティブかつアクティブな娘なんだ。


「だがな、ロウファン。あんまり喋ってる時間はなさそうだぞ」

「それはどういう……」


 窓の外を見ているじいさん。それにつられて外を見ると、黄色い光が何十個も浮かんでいる。上下に動き、こちらに向かってきているようにも見える。


「もしかしてもしかするのか、これ」

「十中八九間違いない。どこからか情報が漏れたか、姫様がいなくなって探しに来たか」

「どちらにしろ、今の状態を見られるわけにはいかないな。さてどうする?」

「俺に訊くのか? じいさんならいい案があるんじゃないのか?」

「馬鹿を言うな。姫様を連れてきたのはお前だろう。なんとかするのもお前の役目だ」

「かーっ、使えねぇなおい。俺を連れてきたのはじいさんなのによー」

「いいからほれ、考えんか」


 窓の外の明かりはどんどんと近付いてきている。考えてる時間はなさそうだが、なにかを考えなければさすがにマズイ。このジレンマ、どうやって消滅させてやったもんか。


 窓の外を見ながら、人差し指と親指を顎に当てた。それからエメローラを一瞥。


「よし、小細工は一切無しだ」

「ほう、考えついたか」

「考えたっていうもんじゃねーよ。強行策とほとんど変わらん」

「なんだ、逃げるのか」

「逃げてたまるか。ここで逃げたら余計に疑わしい。幸いというかなんというか、こっちには都合のいい魔導書が二つある」


 俺はベッドの方を見た。目が合った二人の魔法少女は、目が合ったことをなかったことにするように目をそらした。

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