表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と不死の皇女》
31/225

五話

「起きなさい。朝食が来たわ」


 目の前にはメーメの顔。頬が痛い。


「起こす時に全力ビンタはやめてほしいが」

「次から別の起こし方を考えておくわ」

「フライングニールキックとかも禁止だからな?」

「フライングエルボー……?」

「そういう意味ではない」


 起き上がり、頬を撫でた。クソみたいな起き抜けの悪さだ。


 窓の外は晴天。でもきっと、気温は低い。


 部屋の中を見渡すと、幼女たちが食事をとっていた。本来ならば微笑ましい光景なのだが、人でないことを考えると微笑むのはちょっとむずかしいな。俺は見た目には惑わされない。


 用意されていたフレンチトーストを平らげ、用意をして部屋を出た。俺が食事をし始めるのと同時に、彼女たちの食事が終わってしまったので急がざるを得なくなったのだ。


「元気でやってたか、ロウファン」


 隣の部屋からじいさんが出てきてそう言った。


「まあ元気だけど部屋隣かよ」

「いいだろ? お前の様子がすぐにわかる。幼女と同じ部屋で、変な気を起こさないか心配だ」

「起こさねーよアホか。で、アンタの方はどうなんだよ。用事ってのは終わったのか?」

「こっちは、たぶんお前が事件を解決するまで終わらない」

「は? どういうことだよ」

「ワシの役目は、お前をここに連れてきて、お前に事件を解決させることだ。それ以外はこの国のお役所にいる。できるだけの時間を使い、この国の学校の体制を変える手伝いをしている」

「じいさんが事件を解決すればすぐ終わるだろうに」

「そうでもない。ワシがやったって同じだ。だったらお前にやらせる」

「なんでそうなるかな……もういいや、なんとかするわ」

「そういうところに、ツーヴェル様が惹かれたのかもしれないな」

「んなわけあるか。行くぞ、お前ら」


 魔法少女を連れて、颯爽とその場を去る


「ぐううううううううううう!」


 が、外に出てその寒さに白目を剥きそうになった。頑張ったのに格好がつかない。実に俺らしい。


 とりあえず図書館へ。寒いからではない。


 コートを脱いでから、いくつか本を持ってきた。この国の歴史に関しての書物だ。


「なにを調べるの?」

「三百年前、この国が滅び体制が変わった時のことだ」

「今更調べてどうなるとも思えないけど」

「いや、結構重要になる。確か王国時代に民衆から反感を買って、国王一派は反王国派に殺された。つまり王族信仰派も同じように殺されたはずだし、信仰派は反王国派の動きに抵抗したはずだ。それなのに王様は殺された。信仰派が暴れまわったという話も聞かない」


 歴史書をめくりながら話を続けた。こうやっていても書物の内容は頭に入ってくる。ヴェルに教わった「器用に生きるためのコツ」の一つだ。

「警察にも歴史を訊いた。部屋にあった歴史書も見た。でも信仰派に関しての記述はほとんどない。それなのに信仰派は今でも存在している。でも疎まれてないんだ」

「疎まれていないとどうして思うの?」

「湖を定期的に除雪しても、誰かが信仰派を妨害するといった話は聞かなかった。警察も排斥するような素振りもないし、いたって普通に「信者がいる」という話をした。まるで反王国派と信仰派に溝がないかのような口ぶりだった」

「なにが、言いたいんですか?」


 今度はタルトが突っ込んできた。本から顔を上げると、八つの目がこちらに向いている。ちゃんと聞いてるみたいで安心した。


「確かに反国王派は存在していて、ソイツらのせいで国王は殺されたんだろう。ただし、それは暗殺という形で行われた。それに怒った信者たちが、反王国派を殺した」

「そこに残ったのは――」

「そう、王国信仰派だけだ。今も昔も、信仰派がこの国を牛耳ってる。共和国になってもなおそれは変わらない。だからこそ引っかかる。エメローラの身体があそこにある理由だ。おそらくだが、エメローラをあそこに氷漬けにしたのは信者じゃない。反王国派だ。信者たちは氷を溶かす方法を血眼になって探したはずだ。でもそれは見つからなかった。二週間前まではな」

「方法を見つけて魔導書を盗んだということでしょうか」

「正解だ。まあ、俺的にはだけど。あの氷をくり抜いたのは信者で、今は氷を溶かすための準備をしているとみていいだろう」


 歴史書を閉じた。この歴史書にも、信者がどうなったかは書いていなかった。しかしそれでは辻褄が合わないのだ。敬虔な信者が多いこの国で、信者が暴徒化しない方がおかしいのだから。特に昔は王がいて、王国がちゃんと存在していたのだから。今以上に熱心に信仰する信者が多かったはずだ。


 だが、情報がゼロというわけではなかった。


 国王はとても優しく、民衆にも分け隔てなく接していたらしい。ではなぜ殺されたかと言うと、その優しさ故に犯罪者も受け入れていた。そして、その犯罪者に寝首をかかれた。犯罪者を受け入れることに不満を持っていた反王国派もいたため、犯罪者と反王国派が国を崩壊させた。正しいかどうかは別として、国王が非道だったから国が滅んだわけではないようだ。これは前提に入れてもいいだろう。


 俺の推理が正しいとすれば、この事件は全て王国信仰派の信者が仕組んだことだ。だが誰がが行動を起こしたのかまでは特定不可能。それ以上に、この話を口外すればなにをされるかわかったもんじゃない。


 氷のくり抜いたのは魔導書の力だろう。属性に関係なく、魔導書の魔導力が必要だったのだ。信者が作った魔導物質ではないので、強力な魔導力で魔導物質を分解して切断するという方法を使ったんだろう。


 あとはエメローラをどこに安置したのか。これがなにより重要になる。


 安置場所に関しては足を使って調べるしかないかもしれないな。まあ、城を巨大都市に建てたりなんかしなくてよかった。町自体はそこまで大きくないし、二日もあれば調べられるだろう。


「よし、エメローラの安置場所を探すか。どこかに大きな荷物を置ける場所とかねーかな……」

「それならいい場所があるじゃない」

「あん? またお前はそういうテキトーなことを言って」

「一般人が入れなくて、大きな荷物を置いておける場所。この町が信者だらけだと言うのならば、警察の警備だって関係なくなる」

「今入れない場所って、スルヴァン古城か……!」

「ええ、そうよ。ただ、行くとすれば夜の方がいいでしょうね」

「だな、じゃあ夜まで時間を潰す方法でも考えるか。そうだ、今までにやった契約の儀式を教えてくれないか? これからも契約を続けるつもりだから、儀式は多く知っておきたい」

「いいわよ。道具を買って、部屋でやりましょうか」

「そうこなくちゃな。ついでに地図でも買っておくか」


 こうして、俺は魔法少女に儀式を教えてもらうことになった。


 俺が知らない儀式がまだ多いのだと実感させられる。一人二つずつくらいだろうか、頭に入れるだけで精一杯だ。戦術を練ろとか、イカサマを考えろとか、そこまで頭は回らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ