表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と不死の皇女》
30/225

四話

 こういう時でも、直面している問題のことが頭に浮かんでくるあんまりよくない。絶対ちゃんとした仕事についたら即戦力になるな。過大評価でも別に構わない。なぜならば俺はちゃんとした仕事にはつかないだろうから。


「俺は、魔操士として生きていくしかないからな」


 学があるわけでもないし、なによりも追うべきヤツがいる。おそらく、たぶん、俺はアイツと刺し違えて死ぬ以外に人生を全うする方法がないんだろうと思う。それくらいじゃなきゃヤツを倒せないのが事実だ。違うな、刺し違える覚悟でも、おそらく今の俺じゃヤツには勝てないんだ。


 それにはやっぱり、じいさんにすがるしかないんだよな。魔導書の使い方を覚えるしかない。ヴェルが俺に教えようとしなかったことをじいさんに教わるんだ。魔導書から力を引き出す方法を、自分のものにするところから始めなければいけない。


「おっと、そろそろ上がるか。これ以上はのぼせる」


 しかしあのじいさんはどこに行っちまったんだ。部屋も別々っぽいしな。


 部屋に戻ると、四人の魔法少女は一人もいなかった。アイツらも風呂に行ったか。


 ベッドに寝転び天井を見た。


 明日はどこへ行こうか。じいさんには最初になにを聞こうか、なにを最初に教わろうか。そんなことを考えているうちに眠気がやってきてしまった。


 ダメだ、ここで寝たら……。


「メーメになにをされるか、わから、ない……」


 もう限界だった。目蓋が落ちてくる。耐えきれず、目の前が真っ暗になり、俺はその暗闇の中に堕ちていく。






 夢を、見た。


 両親が死に、ヴェルに引き取られた後の記憶だ。


 正確に言えば引き取られたわけじゃない。俺が頼み込んだんだ。アナタと同じ力が欲しいって。最初は「ガキなんかゴメンだ」と断られたが、俺の名前を聞いてから「仕方ない」と言って俺を連れていってくれた。


 魔法の使い方も体術もヴェルに教わった。一応学校にも行っていたが、ヴェルに教わった方が楽しかったのと、ヴェルが教える魔法が高度だったので学校で教わる魔法は復習にしかならなかった。学校へ行っていた理由は純粋な学業のためだった。最低限の学力くらいは身に付けろ、と言われたからだ。


 まあ、成績は下から数えた方が早いくらいにはダメダメだったが。


 ヴェルはスパルタで、魔法も体術も食らって覚えろというのがヤツのやり方だった。そりゃもう大変だった。生傷が絶えないとはこのこと、と言わんばかりに傷だらけだった。毎日毎日傷を作った。だが、ヴェルのやり方は嫌いじゃなかった。ヴェルのやり方は分かりやすかったし、俺にもあっていた。小難しいことを説明し、理論値を頭に叩き込まれるよりも、まずは身体で覚えて実践値を貯めたほうが楽だからだ。


 ぶっきらぼうな言い方とは反対に、ヴェルはそこそこ優しかった。傷はちゃんと回復してくれたし、飯は美味かった。家事は分担だったけど、それはそれで楽しかった。


 楽しい中にも、俺はどんどんと強くなっていった。強くなるにつれて「ヘリオードをこの手で屠りたい」と思う気持ちが強くなっていった。


 高等部には進まず、卒業と同時にヴェルの元を離れた。別にあの人が嫌いだったわけじゃない。俺はヘリオードを探したかっただけだ。そのためには魔女の元を離れる必要があった。魔女はヘリオードを退けてしまうからだ。


 時にパン屋でバイトして金を稼いだ。時に農業に従事したこともある。時に賞金首を捕まえて、時に魔法を教えて金を作った。


 その中で、遺跡調査のバイトをしたことがある。もうなにも残っていないだろうと思われてはいるが、定期的に調査しているとのことだった。


 本当になにもなかった。宝どころか、ゴミとかそういうのもない。本当に人が入ってこない場所なんだなとしみじみ思わされた。だが、ある一室にて床が崩落、俺は数階下の地下へと落下してしまった。


 そこで出会ったのがメームルファーズだった。


 祭壇に祀られていたその魔導書を手に取った瞬間、魔導書は魔法少女の姿へと変化した。契約するかしないかを迫られ、俺は迷わず契約する方を選んだ。復唱しろと言われ、復唱したらしたで白い空間に放り込まれた。


 そこで、俺は初めて契約のゲームを……しなかった。


 そう、俺はメーメとはゲームをしていない。理由はわからないが「ゲームは絶対にしなければいけない」というわけではないらしい。上位の魔法少女であれば契約の儀式を無効にできるようだ。つまり、メーメはあんなふうだが魔導書の中で上位クラスなのだ。


 メーメがなぜ儀式なしで俺を受け入れたのかはわからない。訊いても答えてくれないから、一々訊くのも面倒になる。


 その後、メーメに虐げられながらも魔導書の扱いを覚えた。そこから「ヘリオードを倒す」という漠然とした目標から「魔導書を集めてヘリオードを倒す」という目標に変わった。魔導書を使うようになってから、普通に魔法を使うよりも遥かに強いということがわかったからだ。


 悪徳商法ばかりするカルト宗教。その教祖が持っていた経典が魔導書だという噂を聞き、すぐにその宗教を分裂させた。もちろん物理で、だ。


 その魔導書がルルだったのだが、ゲームにならずに俺が勝って終わってしまった。楽できるのはいいことだ。


 ルルと契約してから、一度ヴェルの元に戻った。魔導書の扱い方を詳しく訊くためだ。


 ったのだが、前と同様に教えてはくれなかった。


『誰かに教えを乞うな。自分で探せ。そうした方がお前の力になる』


 ずっとそう言われ続けてきた。ヴェルのことは尊敬しているし信頼しているが、なにかを教示して貰おうという気が一切起きなくなった。


 でも、それ以外のことは教えてくれるし、なんだかんだと言って俺に強力してくれる。


 ヴェルのことは好きだ。もちろん、人として。女としてはさすがに見られない。本当の年齢さえも教えてもらえないくらいだしな、ババアは勘弁だ。ロリババアにも興味はない。いたってノーマル。年齢的にはちょっと下くらいがちょうどいい。男は年下が好きな生き物なのだ。一般的には、だが。


 しかし、自分の生き方に疑問を持たないかと言われると微妙なところだ。平穏に暮らしたい、楽に生きていきたいと思う自分もどこかにいて、でも戦果の中で戦っていきたい、ヘリオードを殺したいという気持ちもかなり大きい。


 メーメの顔が浮かんできた。その瞬間、頬に強烈な衝撃がやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ