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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と人喰い勇者》
24/225

二十四話

【ロウファン:2点、タルタロッサ:-4点】



 俺のターン。球を入れ終わると彼女が振り返る。


「1と2をオープン」


 1に黒球、2にも黒球。


「ようやく、この時が来ましたね」


 そう言いながら、彼女は3に指を置いた。そこは、俺が最初の方に赤球を入れ続けていた場所でもある。


「でも、ここじゃない。アナタならばこちらに入れるはずです」


 3から4へと指を移動させ「チェック」と言う。


 4のカップが浮き上がるとそこにはなにもなかった。全てのカップが浮き上がると、3に赤球が入っていた。


「いやー、そういう読み合いをしてくれると思ったんだよ俺は。だから素直ないい子だっつったんだ」


 素直だから深読みしちゃうんだよな、わかる、わかるぞ。相手が設置して自分が当てる。それは「読み合いを仕掛けられてる」のであって「自分から読み合いに引き込む」ことはできない。


 彼女はギュッと目蓋を閉じていた。考えているんだろう。ここから逆転する方法を。まあ、あるとすれば運を引き込むことくらいなんだけど。


 タルタロッサのターン。


 一度背を向けてから戻ってきた。


 勝負どころだが深呼吸などはしない。あくまでポーカーフェイス。こちらの内心を読まれるわけにはいかない。


「2と4をオープン」


 両方空……か。イチかバチか、自分の運を信じて見るのも悪くない。


 赤玉を引ければ七点差で俺の勝ち。黒球を取ってしまえばかなり長引く。


 考えるべきは「タルタロッサがどこに赤球を入れたのか」ではないだろう。「俺を陥れるためにどこに黒玉を配置したのか」だ。


「俺はここをチェックだ」


 3のカップを二回叩く。そして、カップが浮き上がった。


 スローモーションのように見えた。カップの中には赤い球。


「俺の勝ち、みたいだな」


「ふーっ」と、タルタロッサが大きく息を吐いた。すぐに「ふふっ」と、なんだか楽しそうに笑った。


「なんだよ、おかしくなっちまったか?」

「いいえ。面白い方だな、と思いまして」

「面白いか? 俺は結構ハラハラしたよ、わかったような態度でいるのは疲れる」

「そういう方でしたか。でも「心理戦じゃない」なんて言いながらこちらを煽ってみたり、面白いと思いましたよ。ちょーっとイジワルだなぁとも思いましたが」

「そりゃ悪かった。自分でもわかってる。でも心の有利は戦況の有利って師匠に教わったんだ。たとえ自分が負けていようとも、わかったような態度で、知ったふうな口を利き、余裕を見せて煽っていく。そういうやり方しか知らないんだ」

「それでいいと思いますよ。試練はそういう場でもありますから。信念を突き通そうとする人、野望を果たそうとする人など、どこか一つに向かって行こうとする人は試練も強い。そういうふうに出来てます」

「じゃあ俺は相当信念が強いんだな」

「野望かもしれませんけどね。そうこうしている間に目覚めの時間です。最後に訊いてもよろしいですか?」

「ん? なにを? いや別にいいんだけどさ」

「最後の一手。なぜあそこを指定したんですか?」


 俺は頭をガリガリと掻いた。


「あれは、半分は勘だ」

「残り半分は?」

「一番黒玉が多く入っていたのが3だったからだ。なおかつ2と3はまだ赤球を一回も入れていなかった。2が潰れた以上、今までのやり取りで刷り込みができていると判断したのなら3に入れるかな、と思っただけだ。だから半分は勘。俺は運がいいようだ」

「考えていないようで考えているんですね。今までの配置も記憶してるなんて」

「全部じゃない。どこが空だったとかそんな情報はいらないだろ? 必要な情報だけ覚えてればいいんだから簡単だ」

「いいえ、普通は簡単にはできませんよ」


 そう言って、タルタロッサが微笑んだ。


 刹那、強烈な光が俺の身体を包み込む。その光の強烈さにきつく目を閉じた。向こうに戻れば、もう一人重要な人物が到着する頃だろうな。


 やがて浮遊感がやってきて、俺の意識は遮断された。


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