二十三話
【ロウファン:0点、タルタロッサ:2点】
俺のターンになってカップに球を入れた。
しかし、カップを前にしたタルタロッサがため息を吐いた。
「アナタはそれでいいのですか?」
「なんの話だ?」
「アナタのために言っておきます。もう少し考えて行動した方がいいと思いますよ」
「よくわからん。カウントが減ってる、さっさとオープンとチェックをしろ」
「1と5をオープン」
1に黒球、5にはなにもない。
「3をチェック」
3のカップだけが浮き上がる。そこには黒球が一つだけ。
俺がこのまま同じところに入れ続けると思ったのだろう。いい感じにハマってくれたな。
「もう少し考える必要があるのはお前だろ? そろそろ俺が戦い方を変えることくらい予想できるはずだ」
「タイミングが良すぎるような気もしますが」
「そんなことはない。だとしてもお前はたぶん4と5か、1と5か、2と4の三つのどれかをオープンしたんじゃないか? 今まで1・5、2・3、3・4なんだしな。いや、今回じゃないかもしれない。最初に離れたカップをオープン、その次から隣合わせのカップを何度かオープン、そしてまた離れたカップをオープン。特に五つのカップの中に三つの球を入れるんだ、1・3・5って並び以外は全部球が隣り合う。なにも入ってなかったらそれをチェックすればいい。そうだろ?」
「よく、見てますね」
「見てるわけじゃないかもしれないぜ? そういう風に教わっただけかもしれない。でもそれはお前には関係ない。必勝法を師匠から教えてもらってるかもしれないし、このゲームの穴を教えてもらってるかもしれない。でもそれもお前には関係ない。さあ、続きをしよう」
こうして、ようやく同じ立場に立った。ここからだ。一気にまくってやる。
見逃さなかった。向こうを向く際にタルタロッサが下唇を噛んでいたのを。
俺はずっと同じ位置に置いていた。けれど今回だけは置かなかった。じゃあ次はどうだ、どの次はどうだろう。そうやって考えさせるだけでいい。純粋な勝負じゃ、千年以上生きてるコイツには絶対に勝てない。リスクを犯してでもこちらの壇上に上げなきゃ始まらなかった。
【ロウファン:0点、タルタロッサ:-1点】
後ろを向いて七カウント後に振り向いた。さっきよりも考える時間が長くなってるな。
そして、今度は俺のカウントが始まる。
「3と5をオープン」
3は空、5に黒球。
「4をチェックだ」
4には赤球。これで俺の点数が一点になった。残りの黒球は2に入っていた。
【ロウファン:1点、タルタロッサ:-1点】
タルタロッサの顔を見た。澄まし顔をしているが、テーブルの上で左手の親指を他の指で握っていた。ようは親指を内側にした状態で握りこぶしを作っているということだ。
今度は俺のターンだ。
どこにどの色の球を入れるって、そりゃ今までとは違う場所に入れるさ。何回も同じ場所に入れて、一回違う場所に入れたんだ。次だって別の場所に入れる。
3と4に黒球、5に赤球だ。
こちらを向いたタルタロッサが1と2をオープン。1をチェック、当然空だ。さすがに黒二つ赤一つの中で博打を打つ勇気はないらしい。その勇気がなきゃ勝てないゲームなんだけどな。その勇気のせいで負けるのもこのゲームの醍醐味だろう。
どんどんと顔色が曇っていく。きっと俺が最初の配置に戻すのを待っているんだろう。けどそうはいかないんだなこれが。
タルタロッサのターン。
俺は1と3をオープン。どちらも空、だから1をチェックして終了。
俺のターン。
タルタロッサは1と2をオープン、2には黒球。4をチェックしたがそこにも黒球。
【ロウファン:1点、タルタロッサ:ー4点】
タルタロッサのターン。カウントを一瞥してから口を開く。
「おいおい、最初の頃の堅実さはどこに行ったんだ? 1と2をオープンして2に黒球が入ってたじゃないか。黒球にさえ当たらなきゃいいから、三分の二の確立で博打にでも出たかよ」
「元々そういう試練です。だからアナタも両方空だった場合に空のカップをチェックしている」
「いやいや、そういう話じゃねーよ。空のカップをオープンしたんだからそれをチェックすればいいだろ? それともなにか、俺がこのまま赤球を取り続けるんじゃないかって焦ってんのか?」
「そうですね、間違いなく私はアナタを恐れています。運以上のなにかを持っているような、そんな気さえします」
「んなことはない。お前が素直ないい子だから、俺は感謝してるんだぜ」
2と4をオープン。4に赤球があったのでチェック。これで二点。
「リーチだな。悪いけど俺は手を抜かない」
「当たり前、ですね。心得ていますよ」
「潔い。そういうの嫌いじゃないぜ」




