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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と人喰い勇者》
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二十二話

 浮遊感がやってきて、地面に降り立った。


「よお、お前がタルタロッサか」

「はい、あなたがロウファンですね。何度かお顔は拝見しておりました」

「ま、そういうやり取りは終わってからにしよう。俺は契約しに来たんだ」

「本当によろしいのですか? 失敗すれば死ぬんですよ?」

「死なねーよ。成功するし」

「なるほど、自信があるようですね。それでは始めましょう」


 俺とタルタロッサの間にテーブルと机が出現した。机の上には、ひっくり返されたコップが五つと、直径三センチほどの球体が三つ。赤が一つと黒が二つだ。置いてある。「どうぞ」と言われたので遠慮なく座らせてもらった。


 胸の前に数字が現れた。数字のゼロだ。きっとこれが点数なんだろう。


「カップインジョーカーのルールはご存知ですか?」」

「大丈夫だ。魔導書が仕掛けてくる契約用のゲームはいくつもある。が、その中でよく使われるらしいゲームだけは師匠に教わった」

「わかりました。それでは参りましょう」


 従属の試練の一つ、カップインジョーカー。


 五つのカップに三つの球を入れ、お互いに球の在り処を当て合うというもの。ルールはいたってシンプルだ。


 一つのカップに一つの球しか入れられない。相手が隠す側の時は自分は当てる側。隠す際は相手が後ろを向く。球を隠し終わった後、当てる側は二回だけカップを開けられる。カップを二回開けた後で、一つだけカップを決める。最終的にカップを決めることをチェックと言う。チェックしたカップに球が入っていれば、得点が入るというのが試練の流れ。


 二回カップを開けた時に球が入っていればその球を指定して点数を取ればいい。けれど赤い球は一点、黒い球はマイナス三点と点数が違う。点数が五点に到達すれば勝利、相手が五点になるかマイナス十点になったら負け。あとは点数差が七点になった時、マイナスに傾いていた方が負け。黒い球が二つあるということからわかるように、この試練は「いかにマイナスを取らないか」が勝敗を分ける。無理矢理赤い球を取りにいく必要はなく、最初に二回開いた時に赤い球が見えたら点数を上げる。それくらいの気持ちでやるのがいい。


 これは相手との心理戦というよりも自分との戦いになる。最初に二回カップを開く時に赤い球を引ければそれでいい。が、引けなかった場合はかなり難しい。特にファイブトゥワンのようにインチキをするのが難しいのだが。


 隠す時に球を隠せばいいと思ったこともある。けれどチェックの後は五つのカップを全部開けるので、隠したことがバレてしまうのだ。


「さて、どうするかね」


 両手の平を合わせて手を揉んだ。


「まず、私から見て左端、アナタから見て右端のカップを1、私から見て右、アナタから見て左端のカップを5としましょう。これをオープン、これをチェック、というよりもわかりやすいでしょう」

「おーけーそれでいい、わかりやすい」

「次に先攻と後攻、どちらがよろしいですか?」

「どっちでもいい。これは心理戦でもなければ相手との勝負でもない。当てるか当てられるかじゃない。一方的に当てて勝つんだ」

「なるほど、肝が据わっているというよりも、魔導書についての造詣が深いのですね」

「お褒めに預かり光栄だよ」

「ではロウファンが先攻でよろしいですね?」

「ああ、いいぞ。むしろ先攻ってどっちだよ」

「確かに紛らわしいですね、では先に隠してください。隠すのも制限時間は十秒、オープンとチェックも合わせて十秒です」

「了解」


 クルッと、タルタロッサが後ろを向いた。


 俺とタルタロッサの間の空間に、黒い数字が現れた。テンカウント、ってことだろう。


 この試練……もといゲーム。最初に二回カップを開けるのがかなりキモだ。タルタロッサがどういう思考で動いてくるのかもわからない。ファイブトゥワンと違うところは終わりが見えないところ。長く続けようとしなくても長くなってしまうこともあるだろう。長くなると言っても制限時間が短いからサッと済みそうだ。


 とりあえず、黒い球を1と2へ、赤い球を3へ入れた。


「よしいいぞ」


 またクルッとこちらを向いた。


「それでは1と5をオープン」

「おいおいノータイムかよ」

「カップインジョーカーは相手との心理戦をするよりも効率重視で動いた方が勝てたりするんです。経験則、ですかね」


 両サイドのカップが浮いて、1にあった黒い球が露わになった。


「では3をチェックで」

「これまたはえぇな」


 真ん中、3のカップが浮いた。続いて残りの2と4も浮き上がる。


「まずは一点ですね。では私が隠します」


 俺のイスが自動的に反転した。びっくりするくらいテンポよく進む。が、一点取られたのはかなり痛いな。



【ロウファン:0点、タルタロッサ:1点】



「どうぞ」


 隠すのもノータイムか。こういう作戦なんだろうな、というのはすぐにわかった。


 五つのカップと向かい合う。長めの瞬きを一つ。


「1と2をオープン」


 なにもない、か。これはまずいな、無理矢理オープンしてないカップを差して点数を取りにいくのもいい。黒を取る可能性の方が高いけど。


 無難に0点を取ってもいいのだが……。


「よし、じゃあ5をチェック」


 カップが浮き上がる。黒球だ。


「マイナス三点ですね。それではどうぞ」

「クソ、やっちまったな」



【ロウファン:-3点、タルタロッサ:1点】



 負けるわけにはいかないんだが、四点の開きは結構デカイ。でも俺が入れる場所は決まっている。


「いいぞ」

「はい、どうも。それでは2と3をオープン」


 2には黒球、3はなにもなし。


「じゃあ3をチェックで点数は0ですね。では私が」


 リードしたらゼロを取りにいく作戦か。口調と雰囲気に似合わずエゲツない。徹底的にやるつもりだなこりゃ。


 クルッと回って背を向けて、またクルッと回ってまた戻る。目が回りそうなほどに展開が早い。


「んじゃ、1と2をオープン」


 1に赤球、2に黒球。


「1をチェック。俺のターンだ」


 点数差が三点に縮まった



【ロウファン:-2点、タルタロッサ:1点】



 俺はすぐにカップに球を入れた。


「では3と4をオープン」


 両方ともなにもない。タルタロッサは3をチェックした。


 ホントに徹底してるな。完全に事故待ちって感じだ。こっちも事故待ちするしかないんだが、このゲームに関しては向こうのがウワテだろう。


 タルタロッサのターン。俺は1と2をオープン。1に赤球が入っていたのでそれをチェック。これで俺と彼女の点差はニ点だ。まだ俺はマイナス一点だから、ここからなんとか巻き返さないといけない。


 が、その直後に3をチェックされてタルタロッサの点数はプラス二点に。だが負けじと俺も4をチェックしてプラマイゼロに。点差は二点だが、同じ場所で戦うにはもう少しだけ時間が必要だ。

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