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魔導書はかく語りき  作者: 絢野悠
《魔法少女と血濡れの英雄》
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五十一話

 目を開いてすぐ、魔女四人がこちらに向かっているのが見えた。その後を追うのは魔女スリエル。俺の元に現存する魔女が集合しつつあるというのは恐怖を感じざるを得ない。強大な魔導力が五つも近づいてくるのだから当然だ。


 魔女四人は俺の前で振り返り、四人全員で障壁を展開した。


「貴様らああああああああああ!」


 手を伸ばしたスリエルだったが障壁に行く手を阻まれる。魔導力を込めて障壁を壊そうとしたのだろうが魔導力が足りない。四人の魔女が一点に魔導力を集中させているからだろう。


「そう簡単にやらせると思うか? お前がロウへと駆け寄ってきたのもなにをしようとしているかわかったからだ。まあ、もう遅いがな」


 ヴェルが腕を前に伸ばしながらそう言った。


「そんなことをしても無駄だ。お前たちは私が殺す」

「無駄と思っていながらも追撃してきたのはどうしてだろうな?」


 俺から顔を見ることはできないが、なんとなくヴェルが笑っているような気がする。こういうときに笑うのはヴェルの特徴でもある。


 しかし均衡が崩れるのも時間の問題だ。スリエルの笑みがそれを物語っている。


 疲労しているというのもあるのだろうが、そもそもの地盤が違うのだ。それにスリエルではないが、平和ボケした魔女というのも間違ってはいないだろう。だが腐っても魔女だということは忘れてはいけない。


「うざったい糞虫どもめが……!」


 スリエルの腕に魔導力が集約していく。


 ゴリっと、重い音がした。


 少しずつではあるが障壁にヒビが入り始めた。元々スリエルの魔導力は魔女四人を合わせても到底敵わない。にも関わらず今の障壁がスリエルに対して機能したのには理由がある。


「もういいぞ、イズミ」


 そう、俺の近くにイズミが来ていたのだ。


「でも……」

「破壊されてからだと逃げるのが遅れる。大丈夫だ、もう用事は済んだからな」

「わかりました。引き続き支援はしますが――」

「なにが支援だ。こっからが本番だろうが」


 イズミは眉尻を下げながら笑っていた。


「障壁、解除します」


 イズミの魔導術が解除された瞬間に障壁が破られた。やはり魔女四人だけの魔導力ではスリエルにはまるで歯が立たない。


 一直線にスリエルの右腕が伸びてくる。


「そうはさせん」


 ヴェルが両手でスリエルの腕を掴み引き寄せる。いや、引き寄せようとした。


「できるわけがなかろう」


 スリエルの左手から放たれた光弾によって吹き飛ばされた。


 ヴェルはしっかりと腕を掴んでいたのか、スリエルの右腕は千切れてなくなっていた。


 それがどうしたと言わんばかりに突き進んでくるスリエル。千切れたはずの腕が一瞬にして元に戻る。


 他の魔女もヴェル同様に俺を守ろうとしてくれた。


 当然だ。今の俺は黄と黒の大魔導書を持っているのと同等の能力があるのだから。


「邪魔だ!」


 俺が後方へと逃げるまでの時間を魔女たちが稼ぐ。そうして俺は逃げることに成功し、同時に他の契約者たちと合流する。魔女たちも余計なダメージを負わないように努めているんだろう。攻撃はせずに防御で凌いでいた。


 ヴォルフのクローンは今でもかなりの数が残っている。ならばどうして俺を守り、同時に自分もほぼ被弾せずにいられるのか。


 答えは簡単だ。


「今になって魔法少女を……!」


 そう、ここまで魔法少女をほとんど使役してこなかった。理由は魔導力の温存だった。


 確かに魔法少女を使った方が効率がよく体力を温存することはできるだろう。だが問題は、体力は魔導術で回復させることができるだろうが、魔導力は基本的に時間経過でしか回復させる方法がないという点だ。だから俺たちは魔法少女や魔導書を極力使わないようにここまできた。


 そして「温存する必要性」がなくなった。弱体化したスリエル、四人の魔女、七つの大魔導書。ようやくすべてのピースが揃ったのだ。

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