表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

−少女− 第2話

 家に着いた私は、机にしまってあった石を取り出してながめながら、拾った時のことを思い出していた。薄汚れていたが、それでも夕日を浴びてキラキラと輝いていた。もしかしたら、何か宝石の原石ではと、心がときめき、家に持ち帰って丁寧ていねいに洗ったのだ。

 今もその石がなんであるのかは、わかっていない。宝石店で調べてもらおうとしたこともあったが、ただの石だったらと考えると気恥ずかしくて、やめてしまったのだった。たとえ、ありふれた石であろうとも、私にとっては特別な存在であることに、変わりないのだから。

 それ以来、石を机の引出しに仕舞しまい込み、私の目に触れることは、なくなったのだった。その晩から、例の夢を見始めた。最初の頃は、毎日といって良いくらいに頻繁ひんぱんに見ることと、目が覚めてもしっかりと覚えている内容に困惑したものだ。

 私は、その石を手に取り寝転びながら、あらためてながめてみた。すると、以前のように何故だか心がなごんだ。しかし、なんとも言えないような切ない気持ちにもなった。

 もしかしたら、いまだに毎日、その夢を見ているのかもしれない。しかし、仕事などの日常の繁忙感はんぼうかんの中で次第に記憶に残らなくなり、徐々に夢を見たという感覚が減ったのかもと思ったりした。

《それにしても、こんな無機質な石と、あの少女に同じ感情が込み上げてくるとは……》

 我ながら、自然と笑みが込み上げてきた。ただ、少女にもう一度あって、あの時に何を言おうとしていたのか、確かめてみたいと強く思った。

《また、逢えるだろうか……》

 そう考えながら、いつの間にか私は眠りに落ちていった……。

 私は、どこまでも続くかと思われる草原に立っていた。そのはるか遠くに薄っすらと森がかすんで見えた。

 以前にも何度となく、夢の中でこの風景を見た記憶がある。その時はどんな出来事があったのだろう。などと考えながら、私が草原の真ん中に立ち尽くしていると、少女に再び出逢った。

 出逢ったというよりは、現れたといった方が適切かもしれない。彼女は森の中から、宙に浮くように静かに、すっと近づいて来た。

 いつの間にか眠ってしまい、夢の中だという自覚のない私は驚いた。夕暮れに出逢った時も、突然に姿が景色に溶け込むよう現れた少女に神秘的なものを感じていたので、《超能力? 何か不思議な力を使えるのか……》

 目の前で起こった現象を、必死に頭の中で整理しようとしている私のことなどおかまいなしといった感じで少女は、私が持っている石と同じと思われるキラキラとした石を目の前にかざした。

「えっ、どうして……」

思わず、私の口から声が漏れた。何故なぜ、彼女があの石を持っているのだ。それとも、あれは私の物で、落としてしまったのだろうか。慌てて服やズボンをまさぐるように石を探すのを見て、彼女は首を横に振った。

 そして、心配そうに私を見つめているのだ。私に石を持っているか、と訴えるような眼差まなざしで……。

石はズボンのポケットの中にあった。私は、それを彼女の前に差し出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ