第1話 変わり者の転校生
新学期開けのテストも終わり、私こと真田凛子はうきうきしていた。今年こそ、明るいクラスで過ごしたい。そのために頑張らないと。
教室に入り、親友の凌川みちるに声をかける。
「おはよ、みっちゃん」
「おはよ~」
「凛子」
「あ、ほのもいたんだ。おはよ」
「おはよ。今年のクラスも中々だよ。まあさすがにあの二人はなりを潜めるだろうけどね」
「ああ、そういえばまた……」
親友の川島帆乃水もいたので挨拶を交わす。
私はちらりと彼女を見る。有栖川宮遙妃。昨年、佐波上愛莉と入学式の日に再会したらしい。しかし、喧嘩をしてしまい、クラスメートの女子を二つに分けて気まずい空気にさせた。私やみっちゃん、ほのは一応遙妃の方についた。
今、遙妃は数名の友人に囲まれている。とても幸せそうだ。
「凛子、そういえば転校生の女子が来るらしいよ」
「へえ。そりゃまた大変だね」
「この殺伐とした女子社会に馴染めるのかは重要だよねえ」
ほのは言いながら、ちらりと宮島香奈を見る。誰よりも早くに登校しているのに、ずっとぽつんと座っているだけ。誰とも交わろうとしない正真正銘の人嫌い。私達もそんな彼女を嫌っている。
先生がやってきたが、空席──佐波上愛莉の席は空いたままだった。
「今日は転校生を紹介しま~す」
入ってきた転校生はピンク色という、外国の人でもあり得なさそうな髪の色を持つ女子。どういう子なんだろ。
私も含めてクラス中がぽかんとする中、彼女は自己紹介をし始めた。
「シルディです。この髪は一応地毛なので気にしないでください」
「それじゃあ、席はあそこね」
出席番号の一番最後、委員長の宮島春香の後ろになった。このクラスで凄く目立っている気がした。
もちろん休み時間には女子が群がった。男子は興味なさげ、というかあの髪色を気味悪がっているのが多かった。
「ねえ、どこから来たの? 」
「遠くから。街の名前は言っても分からないと思う」
「好きなブランドは? 」
「特にないかなあ」
その他の質問の答え方もかなり変わっていた。私は皆がどんどん引き始めるのが分かった。
その転校生の側には昼休みまではまばらに人がいたが、放課後には飽きられていた。
私達も彼女には興味は抱かなかった。確かに面白そうだけど、触れない方が良い気がしてきた。本能的に避けたのだ。
だから私達は部活後に真っ直ぐ帰ろうと思っていた。だけれど、そう平穏には行かなかった。
転校生が私と同じ部活、という時点でもう最悪だが──。
「──ない」
「え、部長? 」
「先生の絵が、ない……」
「まさか、転校生!? 」
真っ先に転校生が疑われた。この場にいる人で怪しいと言えば、まだ詳しい趣味も性格も知らない転校生だが。