ままならぬこと
私は、六郎さんを愛している。この世界にいる誰よりも。
確かに二郎さんはハンサムだし、三郎さんは明るくてチャーミング。四郎さんは堅実だし、五郎さんは、理屈では割り切れないような魅力がある。
みんなとても素敵な方々。だけど、本当に好きなのは六郎さんなの。
でも、彼はちっぽけな私のことなんて見向きもしてくれない。
こんなに好きなのに。こんなに愛しているのに。どうして、振り向いてくれないの? ずっと背を向けたままなの? 一度でいいから隣に寄り添って、この目をじっと見つめて欲しい……。
とある小学校の教室にて、先生が生徒に向けて雑談をしていた。
「……と、いうわけで。サイコロの対面の和は必ず七になるんだ。じゃあ、ここで簡単な問題。サイコロを振って六が出た時、裏側にある数字は?」
「馬鹿にしないでよ。そんなの、一に決まってるじゃないか」