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Night of the lonely spy   作者: 果汁ミルク
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嫌われた男

カレンと結婚したのは確か、俺がスパイになる前だった。

もともと病弱なカレンは、俺と結婚するのを何度か拒んだが付き合って五年、晴れて俺たちは結婚した。

それから約十五年、いや十四年。俺は子供達と三人暮らしをしていた。家庭は裕福だし金だってあまり余っている。

ただ、子供達……ジョンとレヲナは俺を好かなかった。どんな方法をとろうとも可愛い仕草をしてはくれない。

十二歳のジョンには模型の車を買った。四歳のレヲナには巨大くまのぬいぐるみ。それをもらっても二人が口を合わせていうことは同じだった。


「こんなのいらない。母さんをくれ」


ごめん、それしか俺は口に出せなかった。



「ベル、今日の仕事はこれだ。目を通しといて」

「はい。なんだ、今日は日本語の通訳か」


俺、ベルナルド・アカーシャは表向きは通訳者だ。

大体の国なら話せる。通訳者としてはベテランな方らしいが、親が二人とも通訳者だった俺としては、何度も仕事場を見てきた。

だからか、あまり親近感をわかない。ジョンやレヲナには、通訳者になって欲しいとは思わないが、一度だけでも


「仕事してるパパかっこいい」


と、言われたいもんだななんて思ったりする。

書類に目を通しながらそんなことを考えていたら、助手のサラが俺の隣に立った。サラはこの部署に数少ない黒人で綺麗な女性だ。

まぁ、カレンには敵わないが。


「ベル、もうすぐ現場へ行くわよ。まずは……」


と、日程が書かれた手帳を取り出し読み出すサラ。忘れっぽい俺のためにこうして、まとめてくれるのはありがたいが表向きの仕事だから俺はあまり関心がない。



「ただいま帰りましたっと」

「おー、ベル。ネタは少しでも掴んだか?」

「毎回毎回いいネタがあると思うなよ、アッシュ」


ポッチャリしたアッシュから漂うドーナッツの香り。これで何個目だと聞きたいぐらいの量は食べてるだろう。まぁ、仕方ないさ。最近、奥さんが家を出ていってしまったのだから。


裏でこんな仕事をしてると結婚相手に見捨てられることは、少なくないだろう。この仕事をしても離れなかったカレンはやはりいい女だ。


「なんだよ、その様子じゃ掴めなかったのかよ」

「お前はどうなんだよ、最近ここで泊まってるんだろ。調べる時間多い…………あ」

「仕方ねーだろ!家に帰るとあいつとの思い出を思い出しちまうんだよ!」

「わりぃわりぃ」


俺は本業を進めるため、椅子についた。

今の時刻は、午後八時三十二分。

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