これってよこどり?
私には今、気になる人がいます。私の名前は子門忍。十七歳。高校二年生。その気になる人っていうのは、後ろの席の昴友晴君。私、お父さんの転勤で、一か月前、ここに引っ越してきたの。というか、帰ってきたの。うちのお父さん、転勤が多くて、中三の夏の終わりに引っ越したんだけど、また帰ってきたの。
「しーのぶっ。」
「忍ちゃんっ。」
「あーそーぼ。」私、クラスでは案外人気者。私を呼び捨てにしたこいつは、真奈美。私の幼稚園からの幼馴染。本名は、未来真奈美。そう、友晴君の彼女。受け入れがたいけど本当なの。でも私、時々、友晴君と登下校したりするの。家が近所だから。
「忍。どうしたの、ボーっとして。」
「ああ真奈美。ごめん、ごめん。」
「忍、ちょっとみんなであそぼっ。」
「わかった。」 ピーンポーンパーンポーン
「じゃあね、忍ちゃん。またね。」
「バイバイ。また明日ね。」
タッタッタ、私、下校の時、一番の楽しみがあるの。それはね・・・・
「友晴くーーん。」友晴君はちらっと振り向くと、片手を挙げて合図した。そう、私の楽しみはね、毎日、友晴君と下校すること。私と友晴君の家は隣同士だから、よく一緒に帰ってるんだ。それもあって好きになっちゃったみたい。
次の日の昼休み、友晴君と真奈美が私の机に来た。
「忍。」
「なに?」
「今度私達、緑の丘にピクニックに行くんだけど、忍もくる?」
「いいの?なら行きたいっ。」
「ならきまりっ、日付は明日。忍は手ぶらでいいよ。」
「うん、じゃあ。」
そして次の日、緑の丘で待ち合わせ。そうそう、緑の丘っていうのは私達三人の秘密の場所。私たちの町にある小高い丘。緑の原っぱが広がっているから、緑の丘って名前なの。どう?いい名前でしょ。
「行ってきまーす。」
「おはよっ。」
「おはよう。友晴君、真奈美。」
「お弁当にしよっ。」
「ハフハフ。アツアツで美味しいね。」
「マジ。」
「ハアー。眠くなっちゃった。あそこでちょっと寝よ。」そういって私達三人は草の上に横になった。
十分後、
「フワァー。あれ、友晴君、起きてたの?真奈美も起こさなきゃ。」私は顔を赤らめて、真奈美の肩に手をかけた。
「あっいいよ。良く寝てるから。」すると友晴君は、ゆっくりとこちらへ近づいてきて、私の肩をつかむと、
「オレは、忍のことが好きだ。真奈美より、何百倍も忍の方が好きだ。おれと付き合ってくれ!」
「ちょっとまって。真奈美は、真奈美は?」
「真奈美とは、もう別れたんだ。真奈美はもう少しで、転勤でお父さんと海外に行く。だから忍に告白したんだ。どうだ、だめか。」
「ううん、そんなことないよ。私も友晴君のことが好き。」
真奈美が海外に行くなら、未練もなかった。友晴君の彼女になった日は、私の横取りが終わった日。 (お・わ・り)