婚約破棄されるなんてずるい! 私もされたい!
「アーシェ! お前との婚約を破棄する!」
「俺は”真実の愛”を見つけた!」
夜会を彩るきらびやかなシャンデリアの下、王子ルファードの怒声が響き渡った。
ホールに集まった貴族たちの視線が、一斉に私たちへと突き刺さる。
「そして、私はここにいるクロエと新たに婚約を結ぶ!」
名前を呼ばれたのは、私の義妹。
今も王子の隣で、甘えるように腕に絡みついている。
いつも何かにつけては「お姉様ばかりずるい」と私のドレスやアクセサリーを強請っていたが、とうとう婚約者にまで手を付けたようだ。
私は、無言で咎めるようにクロエを睨みつける。
しかしそんな私に対して、彼女の第一声は予想だにしないものだった。
「お姉様、ずるい!」
「婚約破棄されるなんて、ずるいずるいっ! しかもこんな注目される場で!」
「私も(婚約破棄)されたい!!」
「え?」
「は?」
王子も私も思わずポカンと口を開く。
呆気にとられていると、クロエは王子の方へ顔を向けた。
「今、私たち婚約したってことですよね?」
「え、ああ……」
「では今から浮気してきますから、良い感じのタイミングと舞台で婚約破棄お願いします!」
「!?」
クロエは満面の笑顔でそう言い放つと、令嬢たちから人気のある騎士の元へと一目散に走り去っていく。
「ガロン様~。格好良いですぅ~! 私とデートして~~!」
ホールに響き渡るクロエの黄色い声。
ターゲットにされた件の騎士は、警護のために持ち場を離れられないのか、助けを求めるように周囲を見回している。
その場にポツンと取り残された王子。
伸ばした手が空を切る姿が痛々しい。
静まり返る会場。
その場にいた貴族たちは「何だこれは」という困惑の眼差しで、残された王子を見つめている。
「え、あれ……? 婚約……」
どうやらまだ王子は、現実が受け入れられないようだ。
無理もない。
大勢の前で婚約を発表した次の瞬間に、浮気に走られたのだから。
私はため息をつき、ドレスの裾を整えながら告げる。
「我が義妹は、一度『ずるい』と言ったら、とても面倒な性分なのです。……素晴らしい”真実の愛”を見つけられましたわね。おめでとうございます」
「ま、待て! 違う、私は……! 」
「婚約破棄、確かに承りました。どうぞお幸せに」
私は慌てる王子をその場に置き去りにし、優雅に一礼してホールの出口へと歩き出す。
これで私は自由の身。
これからは何にも縛られずに、好きに生きよう。
……しかし、一つだけ確かなことがある。
それは、クロエの「ずるい!」のせいで、この国の社交界はしばらく大騒ぎになるということだ。
「ガロン様~~! 素敵~~!」
ホールの外まで聞こえてくる義妹の嬌声に、頭が痛くなってくる。
「はぁ……。当分の間、隣国へ留学(避難)でもしようかしら……」
なお「海外旅行ずるい!」とついてくる模様。
※この作品はAIちゃんとの共同作品となります。




