桶狭間の花粉症との戦い
【登場人物】
[織田軍の面々]
・織田…殿と呼ばれる。今川打倒に燃える。花粉症無し。
・森…織田家家臣。花粉症持ち。
・林…織田家家臣。花粉症持ち。
・新介…織田家家臣。花粉症無し。
・小平太…織田家家臣。花粉症無し。
・藤吉郎…織田家家臣。花粉症無し。
[今川軍の面々]
・今川…太守と呼ばれる。桶狭間山にて休息中。
・松井…今川の側近。
永禄三年五月十九日(新暦:1560年6月12日)、駿河国と遠江国の太守・今川が勢力拡大の為、尾張国へと侵攻。尾張国の小大名・織田は、これに立ち向かおうとしていた。
織田「よーし!それでは俺たちは今から攻め入ってくる今川の野郎を討つ!そして日本全国に俺たちの名を知らしめる!良いか!?」
新介&小平太「オー!!」
森「殿、よろしいですか?」
織田「なんじゃ?森。」
森「今日のところは出陣を取りやめることをおすすめいたします。ズルル…(鼻)」
織田「森…なぜじゃ?」
森「只今、今川軍は休息中のようですし、それなら我らも今の内に英気をやじなっだおうがよいがど…ズゥルル(鼻)!」
織田「たわけたことを言うな!アイツらは俺たちを舐めてかかっている。その上、今は休息中で気が緩んでいる。まさしく好機だろうが!な!?」
新介&小平太「そうだ!そうだ!」
森「グンッ…(鼻)左様でございまずが…グンッ…(鼻)」
織田「さあでは飯を一杯食ったら出陣しようとするかの。」
林「殿、よろしいでしょうか?」
織田「何じゃ林?」
林「私も本日のところは出陣を取りやめることをおすすめいたします。ズンッ(鼻)!」
織田「林まで何を言ってんだ。今川に怖気づいたか?」
林「そうではござらぬ。ズンッ(鼻)!今川の軍勢は我らの軍勢とは比にならぬ多さであります。ズンッ(鼻)!このまま立ち向かうのは危険過ぎます。ズーンッ(鼻)!ですから数を覆す戦略を慎重に立ててから…」
(林に顔を近づける織田)
織田「じゃあ既に策はあるのか?」
林「………ズルルルルルルルル…(鼻)」
織田「無いのであれば無駄口を叩くな。おい!藤吉郎!」
藤吉郎「ヘイ!」
織田「飯を一杯用意しろ。腹ごしらえだ。」
藤吉郎「ヘイ!ただいま!」
森&林「はぁ〜…ズルル…(鼻)」
藤吉郎「お待たせしました。飯をお持ちしました!」
織田「おう!ではいただこう!」(勢いよく平らげる)
藤吉郎「もう食べ終わりましたか!」
織田「ぐずぐずしている暇はない!それでは皆の物!しゅつ…」
森「殿!!」
織田「なっ!なんじゃ!?」
森「我々もしっかり殿のために戦えるよう腹ごしらえをざぜでいだだぎどうござる!ズルンッ(鼻)!」
林「私も!殿のために英気を養いどうござる!ズルンッ(鼻)!」
織田「おう!そうかそうか!二人ともついに腹を括ったか!よし藤吉郎!俺と家臣たちの分も持ってこい!」
藤吉郎「ヘイ!では私もいただきまする!」
森&林「ふぅ〜…ズズッ(鼻)…」
(目を合わせる森&林)
森(どうします…?)
林(殿はそう簡単に翻意せぬじゃろう…)
森(正直、この花粉の中では槍を上手く扱えませぬ!)
林(わしも目を掻いている間に討ち取られるわ!)
森(かくなる上は…離反…いや、花粉ごときで離反したなど末代までの恥!)
林(そのようなことをすれば家の名誉にも関わる…!)
藤吉郎「お待たせしました!みなさまどうぞお召し上がりください!そして私もありがたくいただきます!」
新介「ようし!これを食べたら戦じゃ!今川の首を討ち取る前にちゃんと本人の同意を得てやる!」
小平太「その同意はちゃんと書面で行えよ!」
森&林(いいよな!あの二人は花粉症無くて!)
織田「ナハハハハ!今川はどんな顔をするかの~」
林 (モグ…モグ…モグ…モグ…モグ…モグ…)
森 (ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ…)
(ゆっくりと飯を食べる林を見る森)
森(林殿、随分と緩やかに食べますな。)
林(時間を稼ぐのじゃ!ワシはこの中では年長故、多少遅くとも怪しまれることはないはずじゃ!)
森(にしても一口が小さすぎますぞ!鉄砲弾より小さい!)
林(そういうお主はなにか手を打っておるのか!もう半分食い終わりそうではないか!)
森(私は…)
(最後の一口を食べ終わる森)
森「よし!もう一杯…ズズンッ(鼻)!いだだごうどずるがの!ズルンッ(鼻)!」
織田「おう森、お主はよう食べるな。」
新介「ならば拙者もいただく!尾張白山くらいの量を盛るんじゃ!」
小平太「それ、尾張三山の中で一番"低い"山だからな!」
藤吉郎「あいわかりました!ではわたくしも!」
(猿のような速さで飛んでいき、猿のような足取りで戻ってくる藤吉郎)
藤吉郎「お待たせしました!」
森「おう!ズンッ(鼻)!いだだごう!ズンッ(鼻)!」(この猿!持って来るの速いっての!)
新介&小平太「いただくぞ!!」
森 (ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ…)
新介&小平太 (バクバクバクバクバクバク…)
森「よし!ズーンッ(鼻)!もう一杯じゃ!ズンッ(鼻)!」
織田「まだ食うのか!?」
森「私に英気を!」
織田「そ、そうか。藤吉郎!」
藤吉郎「はい!森様!ただいま!」
林(森、まさか延々と飯を食らい続ける気か…!?)
森(ここからは、己との勝負です!)
林(お主、その腹で万が一の時に腹を切れるのか…想像したくもない!)
織田「おい林、飯がまだ茶碗の縁よりも高いではないか。」
林「ハッ…ズズンッ(鼻)!命を落とすやもしれぬ戦の前で…ズンッ(鼻)!最後の飯になるやもしれぬ…ズンッ(鼻)!故、味わいたく……ズンッ(鼻)!」
織田「林…そこまで戦のことを……。」
林「殿の勝利のためにも!」
織田「……………なら早く食えよ。」
林「はっ!承知!」
林 (ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ…)
森(林殿…)
林(森、すまん! あとはお主に任せた!)
藤吉郎「お待たせしました~!さぁ森様!」
森「おう!ズンッ(鼻)!かたじけない!ズンッ(鼻)!」
新介「バクバクバクバクバクバク…あー俺はもう十分かなー…バクバクバクバクバクバク…腹八分目を超えそう…バクバクバクバクバクバク…飯が胃に溜まり過ぎて肺に溢れ出しそう…バクバクバクバクバクバク…」
小平太「なんでお前さっきから空の茶碗から空気掻っ込んでんだ?」
新介「味変したい…」
森&林(あの二人に花粉の呪詛をかけてやりたい…!)
織田「ようし!皆、十分に英気を養ったであろう!これより、今川討伐に出陣する!」
新介&小平太「ウオォォォォォォツ!!」
森&林「ズウゥゥゥゥゥゥゥツ(鼻)!!」
(林が立ち上がる)
林「殿ー!」
織田「どうした林!まだ飯か!」
林「いいえ!飯は十分です!ズンッ(鼻)!士気を上げましょうもっと!ズンッ(鼻)!そうだ『敦盛』!殿は『敦盛』を好まれましたな!あれを我々の前で是非ども披露じでいだだぎだい!ズウンッ(鼻)!そうだよなみんな!ンゲホッ(咳)!」
森「あー!私も!ズンッ(鼻)!殿の舞を見とうございます!ズンッ(鼻)!」
織田「い、今からか!?」
林「最後に殿の姿を目に焼き付けて…」(充血した目を掻く)
森「焼き付けて…」(充血した目を掻く)
織田「…うーん…相手はあの今川、勝てば織田の名が日の本に轟く…。その前に、織田の当主である俺が余裕の面持ちで舞を踊ったとなれば…織田は伝説として未来に語り継がれる…。」
森&林「うんうんズンッ!」
織田「ようし!皆の者!その目にワシの姿をよーく焼き付けるのだ!」
森&林&新介&小平太&藤吉郎「はは~~~っ!!」
(扇子を開く織田)
織田「に~ん~げ~ん~ご~じゅう~ね~ん~…」
林(良いですぞ、良いですぞ、さあ本気の舞をお見せくだされ!)
織田「げ~て~ん~の~う~ち~を~く~ら~ぶ~れ~ば~…」
森(束の間の休息じゃ…)
(舞を終える織田)
織田「みなぎってきたぞ~!」
新介「いよっ!殿!」
小平太「いよっ!殿!」
藤吉郎「いよっ!殿!」
林「もういっちょ!殿!」
織田「何!? もう一度だと!?」
森「もういっちょ!殿!」
織田「なんでじゃ!?なぜまたやるのじゃ!?」
森「今川が…ズンッ(鼻)!これから相手にするのは今川…ズンッ(鼻)!あの今川…まだ足りない…士気がまだ足りない…ズウンッ(鼻)!」
林「この数的不利の打ち破るには…ズンッ(鼻)!士気で有利にならなければ…ズンッ(鼻)!殿…量を補うために質を…ズンッ(鼻)!我々の士気の質をもっとあげなければ!ズンッ(鼻)!グッ(喉)!」
織田「二人とも、俺に依存し過ぎじゃないか…?」
森&林「殿っ!ズンッ(鼻)!」
小平太「あんな森様と林様、見たことないぞ…」
新介「あの二人をおかずに飯食いたかったな…」
織田「怖い…この二人、今川より怖い…仕方ない。ではもう一度!」
森&林「イヨッ!」
織田「に~ん~げ~ん~ご~じゅう~ね~ん~…」
森&林「ハーイッ!」
織田「げ~て~ん~の~う~ち~を~く~ら~ぶ~れ~ば~…」
藤吉郎「ウキッ♪」
(舞を終える織田)
織田「よし、では…いよいよ今川を…」
森&林「どのぉ!(殿ぉ!)ズンッ…(鼻)!もういっぢょ!ズンッ(鼻)!」
織田「ぬぅぅ…もう終わりだ!」
森&林「なんででずが!?ズンッ(鼻)!」
織田「なんださっきからお前ら二人は!飯食いまくるだの、『敦盛』踊れ踊れだの、これから戦だぞ? 本当ならもうとっくに出陣してサッと討ち取ってサッと帰ってくるとこだぞ!」
森「殿、ズーッ(鼻)!殿にはおわがりにならないがもじれまぜんが…ズーッ(鼻)!我らには、我らにしがわがらぬズンッ(鼻)!戦の先見がございまず!ズウンッ(鼻)!」
織田「森よ!お前は神仏にでもなったつもりか!」
林「殿、ズルンッ(鼻)!私には神仏のような力はありまぜんが…ズンッ(鼻)!戦に関しては…ズンッ(鼻)!"鼻が利く"のです!ズゥゥゥウン(鼻)!」
織田「あーもう!つべこべ言うな!もう行くぞ!全軍出立じゃ!」
森&林「お待ちをー!!」
新介「森様、林様、悩みなら後で私が聞きますから。お二人が生きて帰ればですが…あーこの新介も生きて帰るかわかりませんから、ま~~~聞けたら聞きます。」
小平太「あんま聞く気ないだろ。」
藤吉郎「さあ皆さま行きますぞ!我らの手で今川を…冷たっ!」
織田「んっ?」
森&林「これは…」
(空が黒い雲で覆われ、冷たい雫がたくさん落下してくる)
ーザーーーーッ…
新介&小平太「雨だ…」
森&林「………」(雨天の空を見つめる)
織田「これは吉か凶か…」
森&林「ヨッシャァァァァァァァァァァ!!」
新介&小平太&藤吉郎「!?」
織田「は?」
森「殿!行きましょう!さあ!今川を打ち破りにいきましょう!」
織田「な…こ、今度はなんじゃ…。」
林「急ぎましょう殿!この雨が降っている間が我らにとって絶好の好機です!」
森「ッシャァ!行くぞ!」(槍を持つ)
織田「待て待て!急にどうした!」
林「新介!小平太!藤吉郎!ワシについてこい!共に今川の首を取ろうぞ!」
新介「どういうノリ?ボケ?」
小平太「気が触れた?」
藤吉郎「お元気ですな~」
森&林「出陣じゃ!」
織田「待ーて!待て!お前たち、出陣は雨が上がってからだ。」
森「はーっ!?殿!さっきまで行くぞ行くぞと奮い立っていたではないですか!?」
織田「雨の中では兵たちの体がいとも簡単に疲弊してしまう。今川のもとに到着する前に負けてしまうだろ。」
森「おい新介!小平太!藤吉郎!お前たち大丈夫だよな!?」
新介「い、行けたら行きます。」
小平太「確実に行かないやつだ。」
藤吉郎「私はいつでも!」
織田「おい森!兵に変な圧をかけるな!」
林「何を言いますか殿!武士に二言はござらぬぞ!」
織田「どの口が言ってるんだお前は!」
森「殿…」
林「殿…」
森「殿…」
林「殿…」
森「殿…」
林「殿…」
(織田に詰め寄る森&林)
織田「………雨よ…止め!」
森&林「!?」
(本当に雨が止む)
一同「……………」
織田「今じゃ!全軍進め!」
新介&小平太&藤吉郎「ウォォォォォォォォォォ!!」
森&林「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ(鼻)!カァァァァァァァァァァ(喉)!」
~ 一方その頃、桶狭間山・今川の陣にて ~
松井「太守様、太守様、雨が上がりましたぞ。」
(松井の呼びかけで輿の簾から顔を出す今川)
今川「…あっそう…次の雨が止んだら。起こして。」
松井「太守様!」
(どこからか大勢の足音が聞こえてくる)
松井「…なんじゃ?」
伝令「申し上げます!目が赤く、歯をむき出しにした顔の武将の軍勢がこちらに迫っています!」
松井「殿!起きてください!殿!殿ー!ズルルルルンッ(鼻)!!」
その後、休息中だった今川は鬼の形相で突撃してきた織田の軍勢によってあっけなく討ち取られた。そして自然の脅威に振り回されていた森と林は、なんとか生きてカチドキを上げることができた。
この戦いによって織田は着々と勢力を伸ばしていき、天下統一への歩みを進めていった。今風に言えば尾張国というローカルな存在から全国区の存在へとブレイクしていくのであった。
「桶狭間の花粉症との戦い」ー完ー
※史実を基にしたフィクションです。
※登場する歴史上の人物の人格・行動・言動はすべて作者の空想であり、ご本人様とは関係ありません。




