10 夕食
救急隊員といつものやりとりをして〈こおりやま〉に帰ると、まだやってたので、「まだやってるんですか」と言った。
「今日のところはおうちに持って帰ったらどうです? ほらっ、明日は土曜日なんですよ! 一時間かけて決着がつかないなら、明日に持ち越したらいいじゃない!」
守道が「ねっ」とウインク越しに念押しをすると、三人は顔を見合わせて「うーん」と唸った。
「──っていうことがあってね」
その日の夕飯時に、明子に話してみる。
「店長さん、大丈夫かな」
「今年中に答えが出ることは無いだろうね〜」
「なんで?」
「人の心は簡単じゃないもの。明子で考えてみなよ。俺が結婚するってなったらどう思う?」
「詐欺かなって」
「あはは。でしょ〜? それをもうちょっとクリーミーに薄めた感じが今の氷山親子! 今年中に話が終わることなんてないよ」
明子は味噌汁のわかめを弄りながら、聞いてみる。
「お兄ちゃん、彼女とかいないの?」
「えっ?」
「彼女、とか」
「いないよ〜ん。いるわけないじゃん俺に。欲しいとも思わないしね。たぶん俺は一生独身マン。悲しいなあ」
「タイプとかないの?」
「ゴースト」
「そっちじゃなくて」
「なんで妹と飯時にそんな、恋愛のお話しなくちゃならないのさ。あきれるなあ」
「いいじゃんやろうよ。私高校生だよ」
「俺は二十二歳の大男で〜す」
守道はサバの味噌煮をふわふわ笑いながらつついて答えた。
「歳上とか好きじゃないの? そうじゃなくても歳下とかさ……」
「いやあ、俺って結構偏見持つタイプよ? 一歳でも歳離れてたら妹とか姉とか弟とか兄とかで見ちゃうなあ」
「へぇ〜〜そうなんだ。五歳歳下とかは?」
「五歳ってそれ、お前と同い年じゃ〜ん。嫌でしょ、兄貴の恋人が自分と同い年って。あっははは。そもそも俺人に好かれたことないから。人を好きになるのも無駄だよ」
「そうかな。お兄ちゃん、優しいからちゃんと人と関われば……ちゃんと人に好かれる人だと思うよ。だって、私とはちゃんと関わってくれたじゃん。私お兄ちゃんのこと好きだよ」
「いいのいいの」
「なにが?」
「人に好かれたらこの世に未練湧いちゃう」
「えっ?」
夕食の時間は過ぎていく。




