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1話 帝国の崩壊

「取り戻せ我らの土地を、取り戻せ我らの誇りを、取り戻せ我らの強いロワールを」

街のいたるところで響く、この言葉。人々はプラカードを持ち、列を成し行進しながら怒りを込めて叫んでいた。


 18年前にロワール帝国は隣国の小国であるドゥカに宣戦布告。その後、ドゥカと防衛協定を結んでいたノーランド帝国は同盟国のドノヴァ連邦王国とポールニアと共にロワール帝国に対し宣戦布告。

これらの国はかねてから植民地を巡り争っていたため関係は険悪であった。しかし、ロワール帝国の皇帝の后妃はノーランド帝国の女王の娘で、この両家は血縁関係にあった。

もともとこの婚姻は、植民地をめぐる対立によって悪化した関係を是正するため、宥和政策の一環として成立したものであった。

しかし、その意図は時とともに薄れ、やがてその結びつきは名目だけのものとなっていた。


 開戦当初、ロワール帝国は快進撃を見せたが、次第に数で勝る連合国に押され劣勢に傾く。

海上封鎖により食糧供給が不安定化し、徴兵による労働力不足は社会システムを歪ませ、民衆の生活を破壊した。

戦争末期には帝国各地で反乱が頻発し、やがて収拾がつかなくなり、帝国は連合側に講和交渉に向けた休戦を申し入れた。

講和交渉はポールニアの首都ハネスで行われ、その地名にちなんでハネス講和条約と称される。

連合国が課した講和条件は多額の賠償金と軍備の制限、すべての植民地の放棄、領土の割譲に加え、戦争の責任が全面的にロワール帝国にあることを認めるというものである。

ロワール帝国はこの条約に調印した。

そして、まもなく皇帝は戦争の責任を取る形で退位し、ロワール帝国は共和制へと移行することになる。


 その後、旧皇帝一家は国境近くのかつての別荘で移り住んだ。しかし、ある噂が流れた。

旧皇帝一家がノーランド帝国に亡命を計画しているというものであった。

それを聞きつけた民衆は別荘を襲撃し、旧皇帝は撲殺され、その家族もみな非業の死を遂げたと伝えられている。


 共和制へと移行したロワールであったが、戦争の傷は深く、復興は容易ではなかった。

領土の縮小による農地の減少は、戦時中から続く食糧危機をさらに悪化させる。

さらに、旧領土および植民地に居住していたロワール人が、難民として本国へ大量の流入により実態を圧迫した。

 政府は賠償金を支払うために大量の通貨を発行した。

その結果、ハイパーインフレが発生し、紙幣は紙くず同然となる。

かくして、ロワールの経済システムに深刻な打撃を与えた。

 この終わりの見えない困窮からロワールを救うべく、各地では新たな政治勢力が次々と結成されていった。

 そしてその中から、急速に勢力を拡大する一つの党が現れる。

――国家資本主義ロワール労働者党である。


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