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知らない声〜耳鳴り

高校時代は眩しい季節。でもその分、陰が暗くなることもある。そして、その影は時に残酷な風を吹かせる。

「んじゃこれ、オレのロッカーに入れておくな。」

 そう言って、結果をまとめたプリントを抱えたオレはひとりで自分たちの教室に向かった。

 田宮も同じ中学だったが、高校を起点に帰ろうとすると、逆方向、学校の北門から出てバスで帰る方が近いと聞いて、オレたちは3階の廊下で別れた。

 そういえば高校になってから、登下校の時に田宮とは会ったことがないことを思い出した。

 一年の時はやっぱり心細かったから、田宮のことも輝のことも、何かにつけて、よく姿を探してた。

 輝は、声をかけて一緒に歩くことはなくても、駅で見かけたり、途中の道の前を歩いているのを見つけて、ホッとすることもあった。

 でも、田宮はまったく、見かけることさえなかった。時間が合わないのかな、と思っていたがそういうことだったのか。

 田宮の家に行ったことがある気がするし、ちょっと考えればわかることだけど、言われるまで忘れてたんだから、なんだかだなぁという気分だった。

 

 2階の教室のロッカーにプリントを片付けて帰ろうとした時、思わぬ人に呼び止められた。

 「ねえ、そこのキミ、樺沢君?ちょっとこれ、運ぶの手伝ってくれない?」

 振り向くと、隣の輝のクラスから担任の葉山先生が顔を出して、オレを呼んでいた。

 見ると、足元に美術の教材らしきものがいくつも積み上げられていた。

 「あ、はい。」

 すっかり帰る体制になっていたオレは、とりあえずカバンを教室に戻して、先生のところに駆け寄った。

 「ありがとう。助かったわ。樺沢くん。」

 3階の美術室まで教材を運んだ後、葉山先生にもう一度名前を呼ばれて、驚いた。

 何故なら、オレの選択授業は音楽だから、いくら隣のクラスとはいえ、美術の先生に名前や顔を覚えられてるとは思っていなかったのだ。

 「オレの名前…。」

 「ああ、知ってるわよ。ウチのクラスの保里くんと仲良しでしょ。いつも一緒にいて目立ってるから、保里くんに聞いたら、隣のクラスの樺沢くんだって。中学からの友だちだって聞いたわよ。」

 「え?そうですか?」

 「そうよ。保里くん、すごい嬉しそうに話してくれたわよ。」

 そうなのか…。と、なんかもうちょっと話したかったが、先生も急いでいるようで、ありがとうね、手を振ると、行ってしまった。

 オレと輝、いつも一緒にいて、目立ってる?中学からの友だち?

 まぁ、輝はあれだけのイケメンだから、目立つのは当たり前だけど、オレと一緒にいて?

 そんなことある?と、首を捻りながら階段を降りていると。

 バン!

 玄関と反対側の渡り廊下に出る通用口の方から、何かを蹴ったか、殴ったような音が聞こえて、オレはビクッとして、思わず音のした方を見た。

 扉が10センチくらい開いている。

 誰かいるのか?

 恐る恐る、近づいてみると、聞き覚えのある、でも誰とはわからない声が聞こえてきた。

 「そんな怒るなよ、希良。手、ケガするぞ。キレイな顔が台無しだぜ。」

 希良?田宮がいるのか。この声、誰だっけ。そう思って、もう一歩近くに寄ると、田宮の声が聞こえてきたが、それはこれまで聞いたことのない、冷たく怒りに満ちた声だった。

 「宮﨑、お前、なに様なんだよ。みずきのこと、あんな目で見て。」

 「希良が悪いんだろう。あんな、半端なやつ可愛がるから。」

 瑞稀?オレのこと?この声、宮﨑か。いや、でも、半端なやつって、何それ。

 「まったく、成績も顔も、中途半端で、見てて腹立つんだよ。」

 あー、なるほどね、って、納得してどうする。

 まぁ、でも、この2人じゃ、そう言われても仕方ないな。

 宮﨑は学年の成績トップ争いの常連だし、田宮は言うまでもないハイスペックイケメンだし。

 「みずきは、お前とは違うんだよ。」

 どうやら、オレを庇ってくれてるらしい田宮の低い声が、腹に響いてくる。

 「お前には、オレがいるのに。大体、本人の前じゃ、そんな風に呼べないんだろ。あーでも、希良はそこがいいのか。可愛いみずきちゃん、な。」

 宮﨑が何を言ってるのか、まったく意味がわからない。

 「なんで、あんなヤツがお前と一緒にいるんだよ。」

 宮﨑のその言葉を聞いた瞬間、オレの頭の中で何かが壊れるような気がして、耳の奥でキーンと音がした。

 思わず耳を押さえてうずくまった。

 その時、ガンッと音がして、田宮の今までで一番、怒りのこもった声が聞こえてきた。

 「ふざけんなよ。今度、みずきにあんなことやったら、お前とはもう無いからな。」

 多分、田宮はオレのことで怒ってて、オレを庇ってくれてるんだと思う。

 でもやっぱり、何を言ってるのか、わからない。

 耳鳴りはますますひどくなって、もう息が苦しい。

 オレはここにいちゃいけない、と本能的にそう思って、体を屈め、這うようにしてその場を離れた。

 下駄箱まで来て、音を立てないように靴を履き替え、扉を開けると、少し呼吸が楽になった気がした。

 やっとの思いで校門に辿り着き、オレは息もせずに、ダッシュで学校の前の坂を駆け下りた。

なんかもう、どんどん暗くなって、どうしようかと思ってます。

ホントはもっとポップな感じにしたいのに。

でも、なんだか着地点は見えてきたので…なんとか、なんとか、書き上げたいです!


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