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もんじゃ焼きー名前呼び

中学が同じでも、友だちだと思っていても、知らないこと、わからないこと、たくさんある。

でも、知ること、近づくこともできる。

まずは一歩、近づいた2人。

 市の大会が目前に迫った土曜日の午後、団体戦、個人戦、それぞれに出場するメンバーが発表になった。

 オレはめでたく、両方とも選ばれて、小さくガッツポーズをした。

 でもそれより嬉しかったのは、保里が初めて団体戦のメンバーに選ばれたことだった。

 「やったな!保里!」

 オレは少し離れたところに立っていた保里のところまで行って、腕を掴んでぶん回した。

 「あ、ああ、ありがと。」

 「なんだよ、もっと喜べよ!」

 クールな表情を崩さないヤツをハグして、ぴょんぴょん飛び跳ねるオレ。

 でも、次の瞬間、保里が体を固くしたのがわかって、慌てて離れた。

 「あ、ごめん、嫌だった?ごめんな、オレ嬉しかったから。でもガキみたいだったな。ごめん。」

 「いや、別に嫌じゃないけど、ちょっとびっくりしたから。」

 ごめん、ごめん、と繰り返すオレの顔を照れたような笑顔で、見返してきた。

 あー笑顔のレベルが違う。こいつも。

 

 その日、久しぶりに保里とオレは一緒に帰った。

 晴れてレギュラー入りをした保里のお祝いをしようって、オレが誘ったのだ。

 他にも初めてレギュラーに選ばれた同級生も誘おうかと思ったけど、保里がオレと二人で、中学の近くにあるもんじゃ焼き屋に行きたいって言うので、二人だけで帰ることになった。

 「久しぶりだな、ここ。樺沢と来るのは初めてだけどな。」

 保里が何だかソワソワしている。

 「なー、前は良くきたけど、確かに保里とは来たことないな。今は高校と方向が違うからなー。」

 鉄板に油を引きながら、オレが答える。

 この店に来た時は基本、オレが焼きを担当するのが、オレと中学の友だちの間でなんとなく決まっていることなので、今日も何の断りもなく、手を進めていたが、保里がそれに何か言うこともない。

 「な、みずき。」突然、名前を呼ばれて、オレの手が止まる。

 「なんだよ、突然、名前呼び?」

 「お前、田宮と良く話す?」

 オレの問いには答えず、逆に質問を返された。

 「田宮?いや、そんなに話さないかな。あ、もちろん、同じクラスだから、中学の頃よりは話す機会は多いけど。なんで?」

 「あ、いや、ほら、この前みたいなこと、廊下で女子に囲まれてた?ああいうの、良くあるのかと気になって。」

 「あー、あれから上手く逃げてる。この前はありがとな。」

 「そか、なら良かった。」

 なんか、本当に聞きたいのは別のことなんじゃないかって感じだったけど、それ以上、二人とも田宮の話はしなかった。

 「てか、保里だって、いるんじゃないの?ファンの女子。中学の時はすごかったじゃん。」

 オレの言葉に保里は、あからさまに嫌な顔をした。

 「そうならないように、気をつけてるんだよ。だから、ほんとはレギュラー入りも素直に喜べない。目立つのヤダから。」

 「え、そうだったの?」

 「うん、ごめんな。せっかく喜んでくれてるのに、水差して。」

 驚いた。てっきり保里もオレと同じく、レギュラー入りを目指しているんだと思っていた。

 何故なら、朝練も、部活がない日の自主練も、必ず一緒だったから。

 だから、今回のこと、自分のことみたいに喜んだのに。イケメンも大変なんだな。

 「まぁでも、秋の大会までだよな。受験勉強、始めないとだし。」

 そうだった。考えたくないが、来年は受験生と呼ばれるようになるのだ。

 「お前、文系だろ?オレは一応理系だから、クラスも選択授業も被らないし、部活がなくなると、保里ともあんまり会えなくなるかなぁ。」

 「かがや、って呼んで。」

 唐突に言われて、きょとん顔で黙ったオレに保里、かがやが続けて言った。

 「オレもみずきって呼んでいい?学校でも、これから。」

 「いいけど、なんでまた、急にそんなこと。」

 呼び方なんてどうでもいいけど、急にそんなことを言って来たのが不思議だった。

 「急に、じゃないよ。もうずーっと、そう呼びたかったし、呼んで欲しかった。でも、なんか言えなくて。」

 と、話し出したかがやのはなしは、もんじゃを突きながらするようだ話しじゃないとオレは思ったけど、かがやに言わせると、もんじゃでも突きながらじゃなきゃ、恥ずかしくて話せない気持ちだったらしい。

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