イケメンのお友だち〜たく兄
短い高校時代、人生の通過点でも、それはかけがえのない時間。つまずいても、つまずかなくても、真っ直ぐに進めても、進めなくても。
※今回はひたすら明るい会話が続きますので、ご安心ください。
結局、夕飯をご馳走になることになって、満足した叔母さんが部屋を出ていくと、オレはあらためて、今日の本題を切り出した。
「それでさ、いち兄、そろそろ塾ってか、予備校、決めようと思って。部活、今度の大会で辞めることにしたから。」
「おう、やっとその気になったか。それも、お友だちのおかげか?そうだな、みー、ここまで頑張ったんだから、K塾、行ったら?」
「え?」
どうかな、と相談する前にそう言われて、面食らう。
「何?不満?」
「いや、そうじゃなくて、行ける?オレ?着いていける?ってか、入れる?まず?」
最初に聞きたかったことを並べ立てると、いち兄は「そうだな。」とちょっと笑ってから、さっき渡したコピーをみて、それをオレの前に差し出した。
「まず、大事なのがここ、みー、一度も成績落としてないだろ。苦手な古文とかも、平均以上はキープしてきたし、それが今回、お友だち?のおかげ?でアップしてる。」
指差されたところにはこれまでの成績がグラフで表示されていた。
お友だちのおかげ、ってところを変に強調されたのは気になるけど、そう言われると確かにその通りだった。
「想像するに、そのお友だち?K塾の特進に行くんだろ?」
「あ、うん。そうらしい…です。」
「で、一緒に通いたいんだろ?みーとしても、その、お友だちも?」
「あー、うん、そうかな…。」
「だったら、チャレンジしてみれば?多分、入れると思うし、みーなら、入ってからも頑張れるよ。兄ちゃんはわかるぞ。」
お友だちと一緒にな、と謎の目配せ付きで太鼓判(仮)を押された。
何故、いちいち、お友だちを強調してくるのかは、わけわかんないけど、この前、輝と話したことを思い出して、オレはホッとしたし、なんかすごく嬉しくなった。「うん、頑張ってみる。」
そう言って、小さく頷いたオレの頭を、いち兄がまた、ぐしゃぐしゃに撫でた。
いち兄との話を終えて、リビングに行くと、ダイニングテーブルにはどうした?というほどの料理が並んでた。
座って、と、おばさんに言われていち兄と並んで座ると、突然、後ろから襲われた。
「みー助!」
長い腕で頭を抱え込まれて、いち兄の時と同じく、髪の毛がぐしゃぐしゃにされた。
「た、たく兄!いたの?久しぶりだね。」
「なんだよ、みー助。そのよそよそしい態度は。兄貴のとこばっかり行かないで、オレんとこも来いよ。」
いち兄の弟、たく兄は大学に入ってから,何かと忙しいらしく、最近、会えてなかったのだ。
「仕方ないだろ、匠。お前、みーが来る時、いつもいないんだから。」
いち兄がそう言って、たく兄の腕を払い、オレを解放してくれた。
「そうだよな〜。だから今日は急いで帰ってきたんだぜ。みー助、今日、泊まって行けよ。オレと寝ようぜ。」
「あら、それはいいわ。みーちゃん、そうなさいな。」
叔母さんまで、たく兄の後押しをしてくるが、こっちにも都合というものもあるわけで。
「あー、いや、せっかくなんだけど、明日、朝から部活があるから。帰らないと。」
「えー、なんだよ。サボれよ、一回くらい。ダメなの?」
そう言われても。明日も輝と約束しているし、さっきいち兄と話したこと、早く報告したいと思っているから。
「無理言うなよ、匠。みーはお友だちと約束があるんだよ。な?」
何故、それを?いや、多分、適当に言ったんだと思うけど、いち兄の助け舟で、たく兄は引き下がってくれた。
「なんだよ、お友だち?それじゃ仕方ないなぁ。」
たく兄も何故かお友だち、を強調して、そう諦めの言葉を吐いた。
その代わりにこの後、たく兄と一緒にゲームして、バスがなくなるまでいて、帰りはたく兄の車で送ってもらうという、オレに良いことばかりの条件がつけられた。
昔から、ここの家族はオレに甘い。
子どもの頃、上に性格強めの姉が2人いて、振り回されてばかりだったオレは、なんでも好きなことをさせてくれて、物知りで頼もしい兄ちゃんが2人もいるこの家が大好きだった。
高校生になった今も、それは変わらない。
来たら大歓迎されるし、食べ物も、ゲームも、漫画も潤沢で、おまけに宿題や勉強のわからないところも教えてくれる。
輝とのことが無ければ、泊まっていくのも全然、ありなのだ。
「お友だちって、どんなヤツ?」
味噌汁をすすりながら、たく兄が聞いてくる。
「どんなって…」
ボキャブラリーの少ないオレが詰まる。
「どこ中?」
いち兄が別の角度から責めてくる。
「あ、同じ、ニ中。」
「何、それで最近、仲良くなったの?確かみー助以外、2人?3人?くらいだろ?ニ中から行ったヤツ。なんて名前?」
たく兄にそう言われて、確かにと、ちょっと考える。
「うん、オレとそいつも入れて3人。いや、だから、前から仲良くなかったわけじゃなくて。同じ部活だったし。良いヤツだし。一緒に試験勉強したのが初めてってだけで。あ、保里 輝って名前。」
そう、だよな。あらためて友だちになってくれって言われたけど、それもなんかおかしなことかも、とオレはまた考え込んでしまう。
「ふーん。なんか、聞いたことある名前。一言で言うと?どんなキャラ?」
唐揚げを飲み込んだ、いち兄がまた、別角度から詰めてくる。
「一言?え〜っと、ハイスペックイケメン?」
口の中の唐揚げをもぐもぐしながら言った、その言葉に、兄ちゃん2人が食いつく。
「へー、そうなんだ。」と意味深な顔をするいち兄。
で、すぐにお互いを指差して、
「どっち系?」と聞いてくる。
「ちょっと、あんたたち、やめなさい、そういうの。」
ご飯のおかわりを盛ってくれながら、おばさんがたしなめるが、そうなのだ。同じ血が流れているのに、平凡な顔をしてるオレと違って、ここの兄弟はイケメンなのだ。
「うーん、どっちでもない。クール系、モデル顔かな。」
ちなみにいち兄はすっきりした、爽やか系イケメンだし、たく兄は眉のキリッとした日本男子系のイケメンだ。
「なんだよ、みーはそういうタイプが好みか?」
「好みって、友だちだよ?」
何言ってんの?と眉をしかめたオレの頬を横からいち兄がつついてきた。
「友だちって言っても、好みは出るんだよ。無意識にな。」
「ってことは、みー助を選んだそいつは、可愛い系が好きなんだな。」
向かいに座っているたく兄が長い腕を伸ばして、オレの頭をポンポン、と撫でるように叩いた。
何、それ?と、もう一度顔をしかめたが、ここの兄弟にはそんなことは通用しない。さらに。
「そうね、そのお友だち?みーちゃんを選ぶなんて、良い趣味してるじゃない。今度、連れてらっしゃいよ。おばさん、ご馳走しちゃう。」
なんだか全員がバグってる。
まぁ、でも、輝をここに連れてくるのは、自分の家に連れて行くよりも、ハードルが低い気がする。
ただ、今みたいにオレをカワイコちゃん扱いされるところは、正直、見られたくはない。
前回、事件のことを書きましたが、これからはその後起きたこと、解決するまでのことをぐるぐる回りながら、書いていきます。
伏線回収、うまくいくかなぁ〜?
なかなか進まないこともありますが、よろしければ、お付き合いください。




