朝練ー2.5軍男子
一緒にいる時間が長くなれば、仲良くなる。仲良くなると、いろんなことが分かってくる。いるんなことが分かってくると…好きになる。じゃあ、ずっと見ていたら…?3人は今、どこにいるんだろう。希良と輝、一軍イケメン男子2人と2.5軍男子、瑞稀との不等辺三角形。高校2年生はまだふらふら、ゆらゆら。形が定まらないままだ。
「おはよう。朝練?」
チャイムギリギリに席に着いたオレに右斜め前の席から、えらく眩しい笑顔が降り注いできた。
「あ、おはよ。うん、大会近くて。」
ウチの学校はなかなかの進学校だから、どの部活もそんな強いわけじゃない。オレがいるテニス部も同じで、市の大会でさえ、目標は一回戦突破だ。
それでも、一年の終わりに掴んだ団体戦レギュラーのポジションは手放したくないし、個人戦の出場も狙ってるオレは、ほぼ欠かさず、朝練に出ている。
「そか、頑張ってんだな。」
「いや、うん、まぁな。」
そいつの眩しさから目を背けるように、鞄の中から教科書やらを取り出しながら素っ気なく答えた。
「はい、おはようございます〜。」
独特ないつもの挨拶をしながら、絶妙なタイミングで担任のナベ先こと、田辺先生が入ってきて、会話が終わる。
一限目が終わった次の休み時間、廊下に出たオレは予想通り、数人の女子に囲まれた。
「樺沢くん、ちょっといい?」
「あー、えっと、何?オレ、ちょっとトイレ…。」
「さっき、田宮くんと話してたわよね?何話してたの?」
その中のリーダーなのか、一人がずいっと前にでてきた。確か、目白さん?だったかな。
オレの意思や尿意は彼女たちにとってはどうでもいいことらしい。
「何って、ただ挨拶されただけだけど。あと、朝練かって聞かれただけで。」
「それで?」
「いや、それだけですけど。そうだって、答えただけで。」
ホントのことなのに、何が気に入らないのか、彼女たちはそこで顔を見合わせる。
大体、なんでオレがこんなこと話さなきゃいけないんだよ。正直なことを言えばそんな気持ちなのだが、ここは本能的に厄介なことを避けるため、それ以上は何も言わない。
気まずい沈黙が流れる。その時。
「樺沢、こんなとこいたのか!お前、部室の鍵持ってね?」
タイミングよく、隣のクラスから同じテニス部の保里が声をかけてきた。
田宮と人気を二分するイケメンの登場で、不満顔だった女子たちが、急に色めき出す。
「いや、オレは持ってないけど、最後、佐野だったかも。」
「そっか、樺沢、一緒に来てもらっていい?」
助かった、とオレはまだ何か言いたそうな女子たちに背を向け、保里の後ろに付いていく。
「何?忘れ物?」
「てか、さっさとトイレ行けよ。」
「え?あ、ああ、サンキュ。」
廊下を曲がったところで、そう言われて、オレはなんとかトイレに駆け込んだ。
もしかして、保里はオレを連れ出すために声をかけてくれたのか?
そんなことを思いながら、トイレから出ると、保里が待っていた。
「ごめん、部室行く時間なくなったな。次の休み時間でもいい?」
「いや、別に何もないし。」
「え?」
きょとんとしたオレの頭を、呆れた顔をした保里が突いた。
「何、あんなのに捕まって、真面目に相手してんだよって思ったから。」
ため息混じりに言われて、やっぱり、そうだったのか…とちょっと自分が情け無くなる。
「てか、あいつら、なんなの?」
「あー多分、田宮のファン?」
そう聞いた保里は、あからさまに嫌な顔をした。
「田宮、まだそんなのに囲まれてんのか。」首こそ振らないが、やれやれといった様子で、保里は教室に戻って行く。
無理もない。
「ありがとな!」保里の背中に声をかけてかけながら、オレはそう思っていた。
田宮と保里はオレと中学からの同級生だ。とは言っても、中学時代、同じクラスになったことはなく、ほとんど話したことはなかった。
オレはこの高校に受かった時には、奇跡だと職員室が湧いたそうだが、二人は違う。
一年の時から合格判定Aを取り続け、今に至る。
それだけじゃない。オレが二人と決定的に違うのはビジュだ。
二人とも中学からぐんぐん背が伸びて、今じゃ180越えの高身長、タイプは違うが、どっちもアイドルかモデルと言った感じのイケメンだ。
オレだって170後半の身長は持ってるし、自分で言うのもなんだが、ブサイクではないと思う。
でも、ヤツらはそんなもんじゃない。地方都市のさらに郊外に住んでいるから普段は良いものの、東京にでも出ようものなら、雨あられのように芸能事務所のスカウトさんが名刺を振らせるのだ。
パッチリとした目に愛嬌のある顔立ちの田宮希良。
そして涼しげな目元にスッキリしたクールな雰囲気の保里輝。
そんなヤツらに混ざれば、オレはどこをどう切っても、平凡。
一軍にはならない、二軍、いや、二軍半の平凡男子なのだ。
比べた自分にやめておけ、と言いたい。




