2話 政府の公式発表「【能力】と【代償】について」
・【能力】の発祥は、抑えきれない感情の発露によって起こる。どのような感情でも起こり得るが、性質上、負の感情の方が発現確立が高いことが確認されている(絶望・憎悪・歓喜・他)
・【能力】を発祥したものは、特別な【能力】を得る代わりに、【代償】としてそれに見合う何かを失う。得た【能力】が強力であればあるほど、【代償】も比例して大きくなる。
・【代償】として払うものは、物とは限らない。感情や記憶など、我々の常識では一般に支払いが不可能と考えられるものも、その対象に含まれる。
・【代償】を誰に、或いは何に差し出しているのか、詳しいことは不明。患者自身の思い込みであるという案が支持された事もあったが、これは、遠見、透視、霊視など、【視る】事に関する様々な【能力】と引き換えに、【通常の視力】を失った男の例を筆頭とする、その他様々な例によって否定されている。
・得る【能力】は、【能力】発祥の時の感情、及び当人の愛好によって大きく左右される事が確認されている。前述の男は、盗撮により過去八度逮捕されている。【視る】という事への関心が人一倍強かった事が理由だと推測される。七度目の逮捕の際、刑務所内部で【能力】の発現を確認した。その時の詳細は別紙参照。
・【代償】には、大きく分けて3つのタイプがある。
1、【能力】を使用した回数に比例して、その都度【代償】を支払っていくタイプ。これは、物理的な【能力】に多く見られる。このタイプの患者は、【能力】を使わなければ普通の人間と変わらない。
2、【能力】が発祥した時点で、先に全ての【代償】を支払ってしまうタイプ。前述の盗撮常習犯はこのタイプに当てはまる。彼は、両方の眼球を【代償】として支払い、特殊な右目(らしき物体)を手に入れた。
3、【能力】と【代償】の関係は比例していると前述したものの、詳しい所は現在調査中である。一見、【代償】だけを支払い続けているように見られる患者、【能力】だけを得続けているように見える患者も、確かに存在しているのである。これを、特殊なタイプとして、3つ目の枠を設けた。【能力】と【代償】は、総和で比例しているのかもしれない。更に詳しい考察については、別紙を参照の事。
・なお、【能力】の使用は、特別な事情が無い限りこれを一切禁止とする。もし許可無く使用が発覚した場合、ただちに法的制裁を与える。