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15話 アクウ

「……うをぅ」

思わず、鞘香さやかさんのような発音をしてしまった。このやたらと思い【びてびか】の存在感が強すぎるからだろうか。まぁ、これが無かったとしても何らかの驚きの声を出してはいただろうが。

茉莉まつり君。入り口で立ち止まるのは止めて貰えるかい?」

といいながらしおりは僕の背を軽く押し、部屋に完全に押し込んだあと、後ろ手でドアを閉めた。

「……これは、……図書館の時も思ったけど。……何と言うか……凄いね」

部屋の輪郭が分からない。壁が見えない。天上が見えない。それなのに僕の直ぐ後ろには栞が閉めたドアと壁が存在している。こんな光景が有り得てしまうのだから、【能力】というものが、改めて恐ろしくなる。

「凄いとはまた語彙ごいが貧困だね。……まぁ、その気持ちも分からなくはないが。すでに一度話したが、この広い部屋は、亜空あくう君の【能力】だよ」

「……」

「彼は【此処】の中でも相当強い【能力】の持ち主だ。もしかすると一番強いかもしれないね」

栞の説明に何処か違和感を感じた。

何だろう、何故だろう。


――――――――――――どうでもいい。


……否。

これは見逃していいような問題ではない。

「……栞? 君は全員の【能力】と【代償】を知っているのか?」

「……どういう意味かな?」

「僕の聞き方が悪かったのかもしれないけれど、そんな風に聞こえたんだけど」

「聞き間違いだろう、あるいは私が言い間違えてしまったのだろう。すまないね」

「いや、謝ってもらう必要はないんだけれど――」

何かすっきりしない。


――――――――――――。


まあいいか。

……と、背後でドアが開いた。

「あれ? シオリじゃねーか? どうしたんだ?」

背の高い男がドアを片手に立っていた。

「ああ、亜空君。ちょうどよかった。彼が昨日話した茉莉君だよ」

栞が手のひらを上にして僕を紹介する。

しかし亜空とやらの視線は僕のいる場所を素通りして、栞に戻った。

「はあ? 何処にいるんだ?」

「……。ああ、なるほど、茉莉君、もうちょっとこっちに来てくれ」

と言いつつ、栞がぐいと僕の手を引く。

結構前から思っていたけど、栞はかなり力が強い。

僕だって一応男なのだから、そんなに簡単に動かせるものではないと思うのだけれど。何も力を入れてないように見えるのに、ふわりと僕の体は引かれる。

……或いは。

或いはそれが栞の【能力】なのだろうか。


「ああ、そうだったそうだった。ついつい忘れちまうんだよなー、自分の【代償】なのに」

と亜空が言い、

「よろしくな、茉莉とやら」

右手を差し出してきた。

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