12話 ハッピーエンド
もちろん終わりません。
最近前書きが多くてすみません。
流れを断ち切ってしまうのは分かっているのですが。
ここから数話分物語の終わり方について議論されますが、あくまでもフィクションです。ハッピーorバッドエンドの作品を批判している訳では無い事を、先に断っておきます。
作者的には、茉莉の考え方に一番近い感じです。
ネガティブな面として、栞的な考え方も持っています。
「それじゃあ茉莉の意見から聞こうか。ハッピーエンドとバッドエンドとどっちがいい?」
英知がそう口火を切った。
何で僕からなんだよ、別にいいけど。さっき歩きながら南風と話していた問題に対しては答えを返すのは難しいが、その質問に対して答えるのは比較的容易だ。
「僕は……どちらかと言うと、ハッピーエンドの方がいいな」
それが例え作り物の幸せでも、否、作り物の物語だからこそ。
「最初からそうなると分かってても、か?」
「うん、まあ、だから、どちらかと言えばという表現になるんだけれど」
「それでお前は?」
そう言って英知は栞を促す。何だろう、はっきりとは言えないけれど、英知は微妙に栞の事を敵視――表現はおかしいが、それ以外にしっくり来る表現もまた、思いつかない――しているような気がする。
「ふふ、聞かなくても分かるだろう? もちろん私はバッドエンド派だ」
「ふぅん? 何で」
英知が、いかにも「一応」聞くといった感じで問う。
「ハッピーエンドの物語に、リアリティが感じられないからさ。人生なんて往々《おうおう》にしてそんなに上手く行く訳が無いからね」
「だろうな。俺もそう思ってる」
投げやりに応答する英知。もしかして同属嫌悪なのかもしれない。
「なーんでだよ!! 絶対ハッピーエンドの方がいいに決まってるじゃないか!! なあ茉莉!?」
南風が元気よく割って入る。そんなに勢いよく僕に振られても。正直僕は、どちらかと言うと、二人の側な訳で。しかし
「まあ、そうだよね」
と、とりあえず、同意しておく。
「ほらみろ!! 何でわざわざバッドエンドの本なんて読む必要があるんだよ!!」
「というか、バッドエンドの本自体少ないんだけれどね」
と栞。
「売れないからな、少なくとも日本以外では」
と英知。なんだか息が合っているようにも見える。
「日本人は内容が面白ければ買うというけれど、茉莉君のような偽善者も多いから、それでも売り上げはよろしくない」
とまた栞が続ける。そこで僕の名前を変な感じで出さないでくれよ。
「おい!! お前偽善者なのか!?」
「違うよ……違うと思うよ」
「何で言い直した!! お前みたいな奴が時雨を悲しませるんだ!!」
「待て待て南風君。そもそも君、偽善者の意味が分かっているのかい?
「いや?」
「ならなおの事待つんだ。偽善者というのは、そんなに悪い言葉じゃない」
「そうなのか?」
「そうだ。……まあ考え方によるんだけれどね。それにそもそも、さっきのはつい口が滑った……言い方を間違えただけで、別に彼が偽善者だとまだ決まった訳でもない」
「まあまあ、それでだな、俺が本当に話したいのは、その先の話だ。つまり、結末が決まっている物語は、ナンセンスなんじゃないか? って話だ」
と言って、英知は栞を見て南風を飛ばして僕を見た。