表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/32

9話 シグレ

改悪前の作品から読んでくれている人は直ぐに分かると思いますが、新キャラです。改悪版があまりにも元とずれているので(大筋はずれていませんが)、いっその事もっとぶらしてしまえ、という事で登場していただきました。もしかするとこの調子で(結果的に、バッドエンド的なハッピーエンドか、ハッピーエンドにみえるようなバッドエンドのどちらかにはなるでしょうが)アナザーエンドに到達するかもしれません。面白くなるように努力しますので、これからもよろしくお願いします。

「あれ?」

僕がそう言って立ち止まると、しおりはどうした茉莉まつり君、とでも言いたげな迷惑そうな目をして振り返る。

が、そんなどこかさげすむような目も――どうかしていると自分でも思うが――特に気にならなくなって来たので、そのままよく目を凝らす。何か人影が見えたような気がしたのだ。

「ん? はあん。茉莉君。君はなかなか目ざといね。というか、やっぱり君は何かおかしいんじゃないか? 是非とも君の【能力】を教えて欲しい所だ」

それは出来ない。

しないのではなく出来ない。

何故なら僕は、自分の【能力】も【代償】も、何故か綺麗さっぱり忘れてしまっているのだ。もしかすると、僕は【能力者】ではない可能性すらある。随分と薄そうな可能性ではあるが。

「それはまた……今度ね」

しかし僕はそう言ってお茶を濁す。今更ではあるし、自分の考えにも少し反するが、やはり僕は栞をいまいち信用し切れていないのかもしれない。

「その今度はいつ来るんだろうね」

その言い回しに、微妙に心を見透かされている心境になりつつも、少し影に近づいてみる。

「あ、茉莉君。あんまり近づかない方がいいよ」

「何で?」

と、もう一歩踏み出しながら言うと、答えは前方から控えめに帰って来た。

「……こ、こないで」

と。目茶苦茶怯えたような声で。

「そんなに怯えなくても大丈夫だよ、時雨しぐれ君。彼は君をいじめたりしない」

「……本当に?」

「本当さ。私が君に嘘を付いた事があるかい?」

「……いっぱいある……けど」

「まあそうだね」

「あるのかよ!!」

「そりゃあるさ。私なんて体の半分は嘘で出来ているようなものだからね」

「それも嘘だろ? 君の冗談は分かりにくいし笑いにくいんだよ」

体の半分は水で出来ていますみたいに言うな。

「冗談ではないのだけれどね」

「ふぅん。それで時雨さん、だっけ。できればもう少しこっちに来てもらいたいんだけど」

「……いや。……来ないで」

うむう。何故こんなに怖がられているんだ。

「無理だよ。彼女は人間恐怖症なんだから」

さいですか。

何だか少しだけ疲れたので、心の中で溜め息をついた。


「だからさ、それがナンセンスだって言ってるんだよ俺は」

「意味が分からない。とりあえずナンセンスの意味が分からない」

「そっちかよ。いいか、ナンセンスっていうのは、無意味とかくだらないとか馬鹿げたとか言う意味だよ」

「そうか。でも何でそれがなんせんすなんだ?」

「気持ち悪い発音で言うなよ。だから、最初からハッピーエンドって分かってる物語に何の意味があるんだって言ってるんだよ」

後ろから、二人の男の声が聞こえてきた。

振り返って見ると、一人は英知えいちのようだ。もう一人は……初めて見る顔だった。

「ふむ、ちょうどよかった南風みなかぜ君。時雨君をちょっと呼んでくれないか?」

その栞の呼びかけに対し、二人同時に僕を見つけ、

「おう茉莉、お前はハッピーエンドが決められている創作品についてどう思うよ?」

「そこのお前!! 時雨をいじめたら殴るくらいでは許さねえからな!!」

と片や陽気に、片や怒号交じりに声を掛けて来た。

僕はどちらに先に対処しようかなあ、と考えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ