表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/32

8話 弾と魂(たまとたま)

「……」

呆気に取られていた。あれだけの量の言葉を一度も噛まずに言い切った事にまず驚きだし――ニュースキャスターとかに向いているのではないだろうか――そもそも話の途中にほとんど間が空かなかった事に驚いた。どこで息継ぎをしていたのだろうか。

「ねえ!?」

フォリスは一応笑顔で僕を見ていたが、それは彼女が言う所の作り笑いなのだろう。

それでも僕は、彼女に聞かれた今笑っているように見えるか? という問いには迷わずに答える事ができる。

「見えるよ。かわいく笑えていると思うよ」

「……茉莉君って、本当に結構けろっとそう言う事言えるんだねー」

ん? いやいやおかしい。何がおかしいって、色々とおかしい。

「……今回ばっかりは助かったよ、千鶴子君」

「ああなるほど……なるほど」

千鶴子さんが【入った】のか。フォリスの中に。

……こういうのは思うだけにしておかないと。口に出してしまうとまた千鶴子さんに絡まれるだろう事は目に見えていた。

「あれ? 何かエッチな事考えてない? 茉莉君?」

「考えてません!!」

「はあん? どうかなぁ? 絶対エロい事考えてた目だったけどなぁ。獣みたいな目」

いやいや。そんな馬鹿な。そんな事は……どう考えても無い筈……なんだけどなあ。

「全員が全員君みたいに年中発情期な訳じゃないんだよ、千鶴子君」

意外な事に栞が助け舟を出してくれた。偏見かもしれないが、栞の事だから黙って成り行きを見守っているだろうと思っていたが。

「いやーだってさー、それにしては強く否定しすぎじゃない?」

う。確かに。逆に怪しく見えてしまったかもしれない。

「彼はそういう人間なんだよ。日本人はなかなかノーと言えないという常識をはずれていて、なかなかにいいじゃないか」

「うーん。ていうかあれ? 何かさ、あなた随分茉莉君の肩持つよね? どうしたの? 惚れたの?」

「そんな訳ないだろう」

ばっさりと言い切る栞。らしいっちゃらしいけど、もう少し恥らうとか何とかさぁ。そんな真正面から切られるとちょっと傷つくというか。

栞も栞で言いたい事はきっぱりというみたいだから、珍しいと思うけどなあ。そういう意味では。

「千鶴子さんこそどうしてこんな所に?」

話題をざっくりと変える為に聞いてみた。実際の所、体はまだ図書館なのかもしれないが。

「フォリスっちに会いたくなって」

なるほど。二人はそれなりに仲がいいらしい。ていうか「っち」って。そんな呼び方聞いたの小学校以来だぞ。

「……その状態は会うとは言わないんじゃないのかい?」

栞が僕も聞きたかった事を聞く。

「いやねー、超気持ちいいんだよ、フォリスの中」

何だろう。何でこの人がからむと微妙に卑猥な感じになるのだろう。ただ単に受け取り方の問題だろうか。

「……ていうか、感触あるんですか?」

聞いてしまったあと、まずったなーと思ったが、言ってしまったものはしょうがない。

「無いわよー、気持ちの問題? やーん、茉莉君のえっちー」

大体予想通りの返答が返って来た。

「あ、と、そろそろフォリスが【戻って】来るよ? どっか行くんなら今のうちに行くといいんじゃない? 茉莉君も今日中に全員と会うつもりなら、ここで時間をつぶしすぎるのもあれだしね」

急に真面目な調子になって千鶴子さんが言う。結局、この人のことは栞以上に分からないように思えた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ