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4、大人の味

 陽が落ちて、さらに寒気が厳しくなる中、私と先生は手袋を着けることなく手を繋ぎ、一緒にいる感触を大切にして歩いた。


 先生の暮らす家に辿り着き、私は遠慮がちにブーツを脱いで家に上がった。

 どう過ごしていいのか分からないが、熱っぽい身体は落ち着いてはくれなかった。


 電気を付け、テレビを付け、お酒を取り出した奥野先生。

 私はどういう心理が働いたのか分からないが、先生と同じものが無性に飲みたくなって、一緒にお酒を飲もうとした。

 だけど、ビールはとても苦くて耐えられなかった。先生は笑いながら席を立って冷蔵庫まで行くと、缶チューハイを持って私の隣に再び座った。

 CMでも見たことのある、炭酸飲料のようなパッケージをしたアルコール度数の低いお酒だった。

 これなら飲めるだろ? と言葉にする先生に従い、私はそれを飲んだ。確かに炭酸も入っていて飲みやすく、頭がすっきりするような美味しさだった。


 先生とお酒を飲みながら懐かしい話しを沢山した。

 ここまで付いてきてよかったと心底思った。きっと、あそこで別れていたらこんな経験をすることもなかっただろう。


 時が経ち、段々と眠気が増し瞳がとろんと落ちていく頃、先生は「ベッドに行こうか?」と誘った。いや、それが”誘ったように聞こえた”のは、その言葉で一気に酔いが醒めたからだ。

 先生の顔を見ると穏やかそうな表情に見えるが、まるでお酒を飲んでいるとは思えないくらい、酔っぱらっているようには見えなかった。

 だから、これから一緒にベッドに入るということは、直接的な言葉で言わなくてもそういう事なんだろうと何となく私には理解できた。


「シャワーを浴びてからでもいいですか? 身体が気持ち悪くて」


 私の言葉に先生は「もちろん」と返した。

 決心をするための一時しのぎの言葉、先生は大人の余裕を見せつけるように焦った様子一つ見せず私の言葉を容認した。


 ホッと胸を撫で下ろした私は先生にお風呂場の場所を教えてもらい、バスタオルを預かると、一人になって服を脱ぎ、浴室に入った。

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