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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者様、ヒロインはひとりで十分ですよね?〜異世界でお姫様に転生した私ですが、前世の初恋の彼が勇者として召喚されたのでこの恋、絶対に実らせます!〜

作者: 宮藤小夜

純愛()っていいですよね。

皆様初めまして、前世平凡女子高生!からのトラ転して異世界のお姫様になったオルリウィーク帝国第一王女のカトレア・クウィリスタ・オルリウィークです。


この世界には魔王がいて、その配下の魔族や魔獣もいて人々は困っていて、国王であるお父様の「そうだ、伝説の勇者召喚をしよう」の一声であれよあれよという間に勇者を召喚!


そして召喚された勇者がまさかの前世での初恋の君、小暮優成くんだった!

優成君はイケメンで優しくて頭もよくて、ちょっと天然なとこがあるとこが可愛いと評判の学校でモッテモテでファンクラブまであるようなすごい人だった。


私は優成くんの周りにいる自信たっぷりな美女軍団を羨ましいと眺めつつ、優成くんのことを見ていた。


朝、優成くんの家から学校まで何もないように見守り、同じクラスだからこその特権で勉強中の優成くんを眺め、ご飯を食べている優成くんを眺め、放課後は部活中の優成くんを眺めてそのままお家まで見守って。


毎日優成くんを眺めて充実した日々を過ごしていたのに…!


放課後、優成くんの部活終わりにいつも通り見守っていたらトラックが優成くんに向かって走っていくのが見えて、優成くんは気付いてなくて、頭が真っ白になって、気付いたら優成くんの背中を思いっきり押してた。


ドン、と何かがぶつかる音、一瞬すごく体が痛くなって、誰かの悲鳴が聞こえて、何人かが喋ってる音が聞こえたけど何を言っているのかわからなくて、最後に思ったのは体があたたかかったことと、優成くんは大丈夫だったかなってことと、あのトラック運転手を呪ってやるという気持ちだった。


そして死んで目が覚めたら異世界のお姫様になってたなんて…どこの漫画の世界ですかといいたくなる。


しかもこの体、胸は少し控えめだけど超可愛い。前世と比べるとほこりと宝石くらい違う。

【美人:3】【可愛い:7】みたいな感じ。前世でもこの姿だったなら優成君に話しかけたりとかできたのかな。うぅ、やっぱり初恋が叶わないって本当だったや。でも優成君以上に好きになれる男の子なんてこの世界に存在しないし…。優成君、もう一度だけでも会いたかったな…。



っと、思ってたら召喚されたのが優成君だったんですよ!え、これ夢?もしくは幻覚?

癖で体がこの場から逃げ出しそうになるけど動かない。だって、だって優成君と視線がばっちり合っているんだもの!え、かっこよ…好き。少し痩せました?顔っていうか表情全然動いてないし、雰囲気も少し変わってる気がする。でも見た目怪我とかはしてないからあの時私、ちゃんと優成くんのこと守れたんだね。よかった。


「そなたは勇者として我が国に召喚されたのだ。この世界のため、魔王を倒し世界に平和を!」


みたいなことをお父様が言っているけれど優成くんから目を逸らせない。え、好き。いっぱい好き。優成くん優成くん。


「わかりました。僕は勇者になって魔王を倒し…この世界を危険のない、平和な世界にしてみせます」


びっ…くりした。私に言われたのかと思った。優成くん何か少し雰囲気変わった?のかな?なんだろ、なんかぞわぞわする…。


「感謝する、勇者よ。では旅に同行する仲間を紹介しよう。数々の試練を乗り越え、この国を、この世界を平和な国にしたいと志を共にする者たちだ」



扉から入ってきたのは三人の女たち。…は?



協会のトップである教皇の娘、ロリ聖女のヒルシュガルデ

「勇者様、よろしくお願いいたしますわ」


冒険者のなかでも世界に数人しかいないとされるS級冒険者、姉御系剣士のロッテリア

「ふん、どのくらい動けるのか見物だな」


魔法使いの中のトップ、年齢不詳であるお色気系魔法使いのルークラーテ

「よろしくね〜ん、勇者様」








もう一度言わせていただくけれど…





は?





全員女?待って。これ前の世界で似たような光景見たことあるんだけど。は?ほんとに待って。この女どもと優成君の四人でパーティー組んで魔王を倒すまで長時間一緒に過ごしていくってこと?



ユルセナイんだけど?




「私も行きます」



その一言に一瞬静まり、すぐにざわつく周囲。「姫様がいかなくても」だの、「勇者たちに任せとけ」など否定的な言葉ばっかり。でもそんなのどうでもいい。だって優成君が行くならたとえ火の中水の中、魔王城だろうと地獄だろうとどこでもついていく所存です。だから説得すべきなのは有象無象ではなくただ一人!娘に甘いお父様である国王だけ!


「ならんぞ!そなたに何かあったらどうする!!許さんからな!」

「お父様!この国が勇者様を召喚したのです!ならば私も共に行き、運命を共にしたいと思います」

「だめじゃだめじゃ!」

「お父様!」


指を組んで、下から見上げるように首の角度を調整。ここで瞳をうるっとさせて…うなれ私の(前世とは違う可愛い顔の威力を纏いし)演技力!!


「私のお願い…聞いてくださらないんですか?」

「ぐうっ…!!!…ケガハ、シナイヨウニナ」


よし。完全勝利!お父様はいいとして、優成君優成君!


見た目は上品に、ゆっくりと優成君に近づきほほ笑む。


「私の名前はカトレアと申します。これからどうぞ、よろしくお願いいたしますね、勇者様」


なんで勇者様って呼ぶのかって?そんなの私が恥ずかしすぎて耐えられないからだよ!!好きな人の名前なんてそんな気やすく呼べるわけないじゃない!!



「カトレア様…」


「んんっ、…どうぞ、様なんてつけなくても大丈夫ですよ。よろしければそのままカトレアと呼んでください。これから一緒に旅をする仲間なんですから」


「うん。…うん。これからよろしくね、カトレアさん」



そういって優成君は笑った。ここにきて、初めて笑った顔を見た気がする。


それにしてもさっき…優成君はかみしめるように、なにか大事なものを呼ぶかのように私の名前を呼んでくれたような気がしたなんて、…気のせいよね?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





あの後、伝説の勇者様が召喚されたお祝いにパーティーが行われた。私は自身の立場を利用し、優成君に引っ付いて回った。もちろん、お邪魔虫どもも一緒にね。


「勇者様、こちらのお食事おいしいですよ?いかがでしょうか?」


聖女は勇者にあーんしようとし断られてた。私だってしたいのに!


「おいおい、そんなひょろっちい体で戦えんのかよ?しょうがねーからあたしがじきじきに鍛えてやるよ!」


女冒険者は優成君の体に触れあまつさえ腕を揉み上げていた。は?


「なにか悩みがあったら私が解決してあ・げ・る。お姉さんにまかせなさ~い」


魔法使いは胸を強調した服で話しかけていたが、優成君は興味なさげな無表情。ほっ。


ああ、いらいらする。私、前世では見ているだけで幸せだったのに欲張りになっちゃってる。

初めて視線が合って、初めて言葉を交わして、今の名前を呼んでもらえて…ああ。





やっぱり私、本当に、本当に心の底から…







優成君。あなたが好きです。






だから…





私は部屋に戻り、そっと彼を呼んだ。


「ねぇ、ポチ」

「はいよっと、なんですかお姫様」


その声に合わせ、すっと姿を現したのは全身を黒に包んだ赤い目をした少年だった。


「あのね、あの女冒険者、邪魔なんだけど。いいかんじにやってきてくれない?あ、殺しは無しでね」

「あー…別に、あの程度の奴なら俺はいいっすけど、なんかあったんですか?」

「何か…何かですって?あの女、優成君に触れたのよ?信じられる?世界に数人しかいないS級冒険者だからって優成君に対してあんなに気安く…」

「お姫様が言う優成君って「気安く呼ばないで」…え~っと、勇者様?に対して筋肉量とか調べるためにただ触れたただけじゃないですか」

「調べるためだろうと何だろうと優成君に対してあんな簡単に触れたのが許せないのよ」

「心せっま」

「いますぐに旅をできないよう、もう二度と優成君の目の前に現れる気が起きないよう徹底的にやってきて」

「は~…はいはい。しょうがないなぁ。お姫様のおおせのとおりに」


あきれたような声音で返事をした彼は現れた時と同じようにすっとその姿を消した。

これで明日にはもうあの女冒険者はいなくなるだろう。

ああ、笑顔が止まらない。



ねぇ優成君。私、今世こそはあなたに好きになってもらえるように頑張るね!





















気になる子がいる。



高校に入ってから毎日その姿を見かけるけれど、決して視線はあわない女の子。

家で飼っている猫に似てて、話しかけたら、かまってみたらどんな顔をするんだろう。

よく見かけて、話しかけたくて気になると言うことを友達に伝えたらそれは恋だって言われた。


そっか。これが恋なんだ。


それからは少しだけ気恥ずかしくて、今日こそは話しかけよう、と思っても近づこうとすると消える。

僕は結構運動神経がいい方だと思うけれど、彼女に近づくだけで一気に距離を取られてたり、目の前から消える。彼女は忍者か超能力者かもしれない。


そんなこんなで彼女に話しかけることができず、部活終わりの帰り道。

誰かに背中を思い切り押され、振り返ったら彼女と初めて目があった。


そこからは、思い出したくもない。


信号無視の居眠り運転だった。周りの人の悲鳴に、真っ赤に染まりどんどんと冷たくなる彼女の体。

あっためてあげないとと思い、彼女をそっと抱きしめた。

そしたら彼女は少しだけ微笑んで、そのまま目を閉じた。


あのトラックは、僕の方に目掛けてきていた。

彼女は僕を庇ってくれた。


なんとも言えない感情が頭から体、全身をぐるぐるとしている。


明日こそ話しかけようだなんて、遅すぎた。もし、僕が勇気を出して、彼女を追いかけ続けて話しかけていたら、僕を庇って死んでしまった彼女のことを知れただろうか。


後悔ばかりの日々だった。彼女がいなくなってから笑うことができなくなった。世界が色をなくしたようだった。


だから、勇者召喚というもので異世界に来た時、君を見た時は驚いた。姿が違っても彼女だとすぐにわかった。


王様が言う。魔王を倒して平和な世界にしてくれと。

もし魔王を倒したら、彼女のこの世界での危険は無くなるだろうか。

だったらなるよ。勇者に。


どんなものからも絶対に守る。もう、絶対に死なせない。


あぁ、久々に笑えた気がする。

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