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私を愛してみてください  作者: 優愛
第1章
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第18話 新たなる任務③



※交合を示す内容(通常より度合い高め)があります※

 



 私に質問を投げかけたジハイト様は、エメラルドの瞳を光らせ、こちらの様子を窺い始める。

 

 理由を口にしてもよいのだろうか。

 いつも楽観的なジハイト様が珍しく、笑みを浮かべながらも警戒しているかのような動きを見せたことから、私は回答するのを躊躇った。



 なぜ、ジハイト様は沢山の女性を囲み遊ぶことができるのか。

 

 その理由は、ジハイト様が衝動(リビドー)を抑えることのできない異常性格を持っており、薬物や術式などの対処療法を用いても、それを制御することが不可能であるため。

 衝動を抑制し続けた場合、器物を破損する行為や誰彼構わず危害を加えるなど、全く手がつけられない状態になってしまう。

 許容量を超えた際に破裂する、貯水庫のように。

 内包されていたもの(情動)が激しく流れ出て、止まらなくなるのだ。

 つまり。

 ジハイト様を自由にさせる所以は、ジハイト様が持つ衝動(リビドー)欲求を上手く抑え、王宮内に平穏な状況を作るためである。

 

 

 …………というのが表向けの理由で、実の所は、ジハイト様の身体的特徴が関係している。


 

 子を成すことができない。

 

 ジハイト様は無精子症を患っているのだと、私は王太子妃になった際に知らされた。

 その病は、最高峰の治療を施しても治すことのできなかったもので、ジハイト様が王位継承権を失う決定打になったと言われている。


 世継ぎを成す。それを絶対的に課せられている、セーグ国の王族。

 その第1子となる王子が子を成せないという事柄は、王族内で大きな混乱を起こしたことだろう。

 本来ならば。

 秩序を乱すことを嫌い、争いを避けるよう統率している国王が、継承権争いに(多くの女性と)発展しそうな条件(関わりを持つ)や周囲から批判を受けるであろう公務の放棄を、許可するはずがない。

 

 ジハイト様の体質に惻隠の情を示したのか。

 それとも。

 ジハイト様は、本当に、衝動(リビドー)のコントロールが難しい性質を持っているからか。

 はたまた、別の何かがあるのか。

 

 正確な理由はわからないが、ジハイト様が自分勝手に振る舞うことを許可したのには、なにか相当な事があったと推測できる。

 人目に触れない離宮での生活を与え、“遊び”は秘密裏になるよう手筈を整える。

 そのような条件が付いているとはいえ。



 

 『周囲へはもちろん、本人に対しても口を固く閉ざすよう願います』


 ジハイト様の()を聞いた際、身内(王族)だけが共有している内輪の話である旨を、私は宰相から言い渡されていた。

 そういった点と、精神的なダメージを与えるような発言は避けたほうが良いと思った点。

 それら2点から、私は、ジハイト様から受けた質問への回答を躊躇ったわけなのだが。

 


「もっしも~しぃ。もしかして、理由知らなかったぁ〜?知らないなら知らないって、はっきりちゃんと、わかるように言ってくれないとぉ」

 

 不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめ、発言するよう促してくるジハイト様には、そう言った配慮は不要のようだ。



「……ご病気だから、ですよね」


「も~。はっきり言ってって、言ったのに〜。あ、子種がないからとは言い辛いって~?あはははっ。それをハッキリ言えないなんて、王太子妃として、まだまだだね~。まさか、哀れに思ったとか~?僕、な~んも気にしてないし、言っていいって言ったよ~?」


 声を上げ愉快に笑うジハイト様は、こちらの心意を確認するかのように、私の両眼を捉えたまま離さない。

 

 私を試して遊んでいる行動。加えて、先程からやけに瞳を見つめてくる動作。

 それらは非常に不快なのだが、体の動きが鈍くなっている私は牽制する(にらむ)こともままならない。

 身体を上手く動かせない私が、ゆっくり視線だけを傍に逸らすと、ジハイト様は「ははっ」と笑った。


 

「まぁ、そういうわけだからぁ、僕とシテも身籠る心配はしなくていいよ〜。病気とかトラブル防止の避妊具(準備)はするしぃ、念のための避妊薬も何回か飲んでもらうけど~。それも、ただクソマッッッズイ薬を飲まなきゃいけないだけっていうねぇ。まぁ、イヤイヤ言いながらそれを飲んでる様子とかぁ、それを飲んでまで僕とシタイってなる在り方が、可愛かったりするんだけどさぁ〜!」


 痛快無比と言える状態のジハイト様に、私は唖然失笑する。


 驚愕的な“任務”について話をしている中、愉快そうに関係のない発言をする意味が、私には全く理解できない。

 ジハイト様の趣味嗜好など知りたくもなかったし、先程からの試し行動といい、ジハイト様にはやはり嫌悪感が湧く。

 私がジハイト様を軽蔑する最もたる理由。

 それは、こういった(不快感を与える)言動をする点だと改めて認識した。


「はぁ」

 

 口を慎んで欲しい。

 嫌悪の意味を込めた溜息を吐き、今できる最大限で軽蔑の眼差しを向ければ、ジハイト様の表情から笑みが消えた。

 そうして、真剣な顔つきをしたかと思えば、頭を左右に振りながら「はぁ~~~~~」と長めの溜息をつく。



「誤解されがちだけど~、僕、女性なら誰でも良いってわけじゃないんだよねぇ。女性を愛でたり抱いたりする時は、僕の好みだったり、大事にできると思った女性しか手を出さないの~。君みたいにツンツンした拗らせタイプは、愛でたいと思えるタイプじゃないんだよね〜」


 後ろに倒れ込む形でミルク色のソファに寄りかかったジハイト様は、両腕をソファの背もたれに投げやった。

 続けて、ソファに体を預けながら足を組む。

 陽気だった先程までとは打って変わり、ジハイト様の様子は、惰気満々なものへと変っていった。


「なによりさ、君レオンとしてるじゃん〜?身内、しかも、生意気な弟の手がついた女性とするなんて、本来なら絶対勘弁〜っ」


 舌を出し、嗚咽するような仕草をみせるジハイト様。

 私が嫌悪感を示した事で、何かのスイッチを入れてしまったのだろうか。


「とはいえ、父上の命令じゃ逃れられないわけだから~、上手く切り替えないとねぇ。はぁ~~あ」


 ジハイト様の態度が惰気なものに変わってからというもの、御饒舌が止まらない。


「そうそう~。僕、こう見えてぇ、女性に関しては色々勉強してきたんだよね~。経験値もかなりあるしぃ、抱けば、なにが君に足りてなくて、どうしたらいいかのアドバイス、できると思うよ〜」


 1人、喋り倒すジハイト様。

 

「だけど、僕のポリシーは絶対に崩したくないわけ〜。僕が指南する側なわけだし、僕の指示には従ってもらうからねぇ」


 そこまで話すと、ソファに預けていた体を起こし、口を閉じた。

 やっと話が終わったかと思うと、頤に手をやり、今度は舐めるような視線を私に向けてくる。

 

  容姿を詳しく確認している。

 そう感じ取った私は不快感を覚え、目を閉じるというせめてもの抵抗をした。

 

 しかし。

 

 虫が肌を這うような忌まわしい感覚は、視界を遮断していても私の身にまとわりついてくる。

 逃れられない不快な行為。

 それを受ける、ただソファに座ることしかできない私の内には、屈辱感と恐怖感が湧き上がってきた。


 

「ん〜、やっぱり、背格好はまあまあ似てるかぁ。ねえ、スルときは、プラチナブロンド色に髪の毛染めて、百合の香油つけてくれない~?あと行為の際は目隠しもお願いね〜」


 プラチナブロンドの髪。

 百合の香油。

 目隠し。

 聞き慣れた単語を耳にした私は、ゆっくりながらも目を見開いた。


「……それは、どういった了見です?」


 冷や汗が出始めた私に、ジハイト様はせせら笑った。


「僕さぁ、抱きたいと思った女性の中で、唯一彼女だけ抱けてないんだよね~。実際は色々違うだろうけど、こっちの想像力次第の話だから姿形が似てればなんとかなっちゃうんだぁ」


 色を失う話ばかり。

 それをする目前にいる人物は、人非人に違いない。

 嫌な予感がした私の脳裏に


「リリアに見立てて、スルってことだよ〜。君、体型はいいしぃ、リリアに似せることで、スタイル抜群のリリアを抱く気分になれるってわけ~」


 不敵な笑みと残酷な言葉が焼き付いた。



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