第一話 40歳、10歳に転生する
どうも、Twitterではピレネーというユーザーでアカウントを開いてます。長年見てきたアニメで気持ちが下がっちゃったので描きたくなりました。娯楽程度で楽しんでいただくと幸いです。
しくじり転生 〜ファンタズム・ザ・フューチャー〜
第一話 過労人、10歳に転生する。
8月9日、気温36度の真夏、俺は東片町の西部で道路の工事現場で働いていた。最近、あちこちで地震が頻繁に起きていて、道路のひび割れや盛り上がりの作業が多い。
?「暑い・・・」
俺は新庄敦。今年で40という歳を迎えた。身体の衰えがここまで来るのかというくらい動くのが辛く感じている。しかし、そんな甘えは仕事では通用しない。高齢の男なんて周りにはいくらでもいる。それに空調服を着ているためコレでもマシと思わないといけない。が・・・
新庄「ん?あれ・・・?」
空調服が止まった、どうやらバッテリー切れらしい。
新庄「マジかよ・・・まだ2時間しか使ってないぞ。」
年月が経つと同時に気温もどんどん上がる。地球温暖化というやつだ。コレばかりはホントどうしようもない。だから熱中症対策して中に保冷剤を入れるなり、空調服を着るなりして暑さを乗り越えていた。
リーダー「おーい、モタモタするなよ!コレ終わったら次のエリア行くんだからな!チャチャっと終わらせねえと帰れないぞ!」
空調服のバッテリーが切れるという最悪な事態、暑くて汗もドバドバ出る。しかしそんなこと構ってる場合じゃない。
新庄「くそったれ・・・やるしかない。」
俺は作業を急かせ、次の現場に向かった。
俺はリーダーにトラックで乗せてもらって移動していた。
リーダー「暑いなぁ、ホント、俺たちの若え頃はここまで暑い時期じゃなかったのにどんどん気温が上がってきてやがる。ついでにコロナで休日も出にくいしよ。」
新庄「ホントですよね。ちょっと前までここまで大変じゃなかったのに…ホント世知辛い世の中になりましたね。」
このご時世、新型コロナウイルスの感染拡大が年々増えてるので出かけるのは憂鬱になる。この問題、もう5年経ってるのに未だに改善されていない。コロナと共存して生きていこうと一部の政府はいうのだが…ニュースやメディアは不安を煽るわ、旅行者を批判するわで、自由に生きることすら辛い世の中になってしまった。
リーダー「俺たちの若い頃はこんなこと気にしないで遊んでたのに、なんでこんなことに…」
新庄「…若い頃…か…」
リーダーの言葉に俺は学生時代の頃を思い出した。
思えば俺の学生時代はろくでなしと言われても文句を言えない思い出ばかりだった。友達もろくに作れず、図書室や教室に引きこもり、好きな子にも話しかけられない。ついでに学力や運動能力も下位レベルでそれを気にして周りに気を遣ってしまうという、いじめられっ子あるあるの人間だった。母は楽しんどかないと後悔するよって助言はしてくれた。だけど、こんな自分が周りと遊ぶ資格あるのかなと、コンプレックスを気にする人間だったこともあり、それができなかった。それが中学生になっても、高校生になっても一向に変わらず、後悔だけを残す人生を送ってしまった。
新庄「こんな時代になるんなら、もっと努力して、楽しんで悔いのない学園生活送るべきだったな…」
俺はリーダーが聞こえないほどの小声で、そう呟いた。
そして作業現場に到着して、
リーダー「よし、ここからあの向こうまでやるぞ!全員機材用意しろよ!」
俺たちはリーダーの言う通り、道路を綺麗に塗り直すため機材を持とうとした、するとその時、
とんでもないほどの地震が起きた。震度は5、6、いやそれ以上、7だ。
リーダー「ちょ、やべえ!全員どこかに捕まれ!この揺れ大きいぞ!」
それはできない。恐怖と脅威的な揺れに立つことすらできなかった。さらに
新庄「え、ちょ…!」
道路が陥没し始めた。しかもその範囲、落下なんて余裕でできるほどデカい。
新庄「う、ああ、うわあああああああああああ!!!」
リーダー「新庄!」
俺は陥没した大穴に落下した。床はどこまでも深く、大きく、暗く、その中で俺は・・・
チュンチュンチュンチュンチュンチュン…
スズメが鳴いている音だろうか。
どうやら俺は生きていたようだ。目を覚ますと身体に違和感があったが、死なずに済んだことにほっとした。
新庄「どこだろう…病院で…あってるんだよな…」
周りを見渡すと白い空間、何もない。あるのは俺が寝込んでいるベッドのみ。
新庄「誰もいない。心拍数を測る心電図とかもないよな…」
病院なら、心電図や鏡、洗面所などはあるはず。だけどそれ以前にある違和感に気付いた。
新庄「なんか…声が高いような…あれ…身体もなんか小さい…」
しかも何故が綺麗な形をしていた。作業をやってさらに年も取ってるため、おじいちゃんじゃないかと思われるほどボロボロな手が本来の俺の手だ。
コツ、コツ、コツ、ドアの向こうから足音が聞こえてくる。
???「ではレオン君のご遺体はご親族の方へ御運びしなければいけませんね。」
???「しかし残念だよ…まだ10歳だろ…飛び降り自殺だなんて。相当辛かったんだろうだろうな…」
そんな声と共に警察の格好をした若い青年と黒いスーツを着た年相応の男性がドアの向こうから出てきた。
青年「!?」
男性「な、なんということだ…!」
自分の顔を見て驚く。
男性「すぐにご両親に連絡をするんだ!奇跡だ!奇跡が起きたぞ!」
青年「は、はい!」
新庄「え、あ、あの…」
状況がうまく飲み込めない。いや待て、自殺って言ったよな?もしかして自分のことを言ってるのか?そんなはずはない。確か自分は地震で陥没した道路の大穴に落ちた。自殺じゃない。しかし…ここは病院じゃない。警視庁か、警察病院…なのか?
男性「君大丈夫か!?どこか痛いところは!?」
新庄「あ、えーと…結構頭痛いです…。」
男性「はぁ〜そうか。心肺停止。脳波もないから助からなかったと思っておったが…よかった。ホントよかったよ。」
新庄「あの…なんか…心配かけてすいません。」
何故かめっちゃ心配してるけど、とりあえず謝った。色々飲み込めないけど。しかし男性の言葉に思考が止まる。
男性「君、レオン・マグネス君だね?少し待っててくれ。すぐにお父さんお母さんが来てくれるよ。」
新庄「…はい?」
自分の名前は覚えている。新庄淳。レオン・マグネスという名前じゃない。
「待って!俺そんな名前じゃ…」
否定する前に自分の身体を今一度確認する。
手は小さい。声も高い。明らかに俺の身体にしちゃ違和感だらけ。
男性「あ、こら君!無茶はいかんよ!」
ベッドから落ちた。立ち上がれない。脊髄が壊れているのだろうか。しかし俺は洗面所のありそうなトイレまで自力で行こうとした。
男性「どこへ行こうとするのかね?足の骨が折れているというのに…」
新庄「あの…鏡…鏡を見たいんです。」
男性「か、鏡…この部屋にはないが、代わりにビジョンはあるぞ。」
男性はスマホらしきものをポケットから取り出し自分に向けて差し出した。見るからに近未来型の携帯機のようだが…それ以上に驚いたことがある。
写るもの、それは自分じゃないことだ。
新庄「なんだ…これ…」
ベースは間違いなく俺に近い。でも所々違う。目は青色、髪は金色、オマケに40に見えない幼い顔つき。これほんとに俺か?
男性「何やら浮かない顔だが、とりあえず安静にしておくと良い。無理をするのも身体に障るからのう。あ、そうじゃ、何か持ってこようか。本とかゲームとか。」
新庄「あ、あの、えーと、結構です…」
男性「そうか、では私は教会に報告してくるから、困ったことがあったらそこのボタンを押してもらうと嬉しい。」
そう言って男性は俺をベッドまで大事に搬び真っ白な部屋をあとにした。
新庄・レオン「どうなってるんだ…」
しばらく悩んだ後、俺はアニメでよくある話を思い出す。異世界転生なろう作品だ。
主人公が不慮な事故で死亡した後、異世界に転生して魔法やら波動やらで敵をなぎ払い、俺つええええ!!をするあれだと思った。
新庄レオン「もしかして、俺もそんな世界に飛ばされたのか?」
それにしては変だ。俺が思いつくパターンは2つある。肉体共々異世界に移動するパターン。もう一つは赤ん坊から始まり、肉体が成っていく完全転生パターン。でもこれは違う。さっき聴こえたのがまだ10歳ということ、そして、レオン・マグネスという存在がいたこと。わかったのはこれぐらい、情報が足りない。もしかして俺は本当に死んで、別の死んだ人間に憑依したのか?
レオン「…分からん、事故死ならともかく、何がどうやったらこうなるのか分からん…。」
そう悩んでいるうちに誰かが入ってきた。
自分に似た大人の男女2人だ。
男「…っ!」
女「…レオン!」
俺の顔を見て嬉しかったのか悲しかったのか、泣きながら2人は俺に抱きついた。
レオン「ウェッ!?ちょっと…!」
女「レオン…よかった…!!」
男「レオン…!!」
レオン「…(もしかして…)」
この人たちが誰だか知らないがハッキリわかる。レオン・マグネスの父と母だ。と、思い込むのも良くないので一応確認する。
レオン「もしかして、お父さんお母さんですか?」
父「ああ、そうだ。」
母「私たちのこと、知らないの?」
レオン「一応、おじさんがこの後お父さんお母さんが来てくれるって言ってたからそうなのかなって…他のこと何もわかんなくて…」
両親「…っ!」
父母は互いに見つめる。
母「レオン、もしかして今までのこと、何もわからないの?」
レオン「…ゴメンなさい、何もわかんないです…」
父「…記憶喪失」
レオン「…(違いますお父さん、中身は別の人間なんです。)」
父「どこか痛むか?腕とか首とか。」
レオン「えーと、頭がすごく痛いです。あと足の骨が折れてるっておじさん言ってた。」
父「…なんてことだ。強く打った衝撃で記憶が全部…」
レオン「…(中身別の人間だから記憶以前の問題なんですけど。)」
母「だ、大丈夫よパパ。レオン何も思い出せないけど、これから記憶が戻っていくわよきっと。だからそう、落ち込まないで。家族みんなで取り戻していきましょ。」
父「…そうだな。とりあえず、院長と相談して身体の経過を見て、退院することから考えよう。記憶はゆっくり取り戻していけばいい。」
レオン「(中身別の人間だから無理なんですけどーッ!!!)」
とまぁ、こんな感じで俺の第二の人生が始まった…らしい。
ご試読ありがとうございました。いかがだったでしょうか。この作品はどこにでもありそうな転生作品に見えますよね。ですが次の回、とんでもない事実が明らかになります。恐らくこのご時世では表現が厳しいものになってると思います。ですがそんな人にも見てほしい、このままではいずれこうなるのではないかと考えさせられるものです。お楽しみに。