冬は鍋
昨日の今日でもう来たということは焦ってるようだ。
「院長、今日からムサシさんに来てもらいますね。」
「よろしくお願いします。でもその方は腕はたつのでしょうか。」
「それは保証しますよ。」
とりあえずアイリスを残して城へと帰ってきた。
ムサシさんは部屋で待っていたので孤児院でのことを話すとすぐに立ち上がり
「ミナト殿それはすぐに向かわねばならぬでござる。」
と言って走り出そうとする。
ムサシさんに全力で走られたら追いつけない。
「ちょっと待ってください。そんなに急がなくても護衛はおいてますから。」
「すまんでござる。つい気が急いてしまったでござる。」
止まってくれてよかったです。
ムサシさんの本気度がうかがえたきがした。
ムサシさんを伴って孤児院に戻ると「ムサシさんじゃないですか。」とアンさんが迎えてくれた。
院長も出てきて「あなたがムサシさんですか。よろしくお願いしますね。」
「拙者に任せてくだされ。あんなチンピラなぞ全て返り討ちにして見せるでござるよ。」
「それは頼もしい言葉ですわ。」
「子供達も安心できます。」
アンさんも院長も歓迎してくれるみたいだ。
その様子を見たので安心してアイリスを連れて孤児院を後にした。
そのまま、ぶらりと商店街によってみると立派な白菜があったので他の野菜と一緒に購入した。
他にも何か買おうかとみていると人だかりができている。
何があるのかと見てみると
「すいません。もうちょっとだけ待ってください。」
「さっきから待ってくれと言われてもなあ。こっちだって貸した金を回収できないと上から怒られるんだよ。」
「でも契約ではまだ2ヶ月あるじゃないですか。」
「期日は変わることもあるんだよ。返せないっていうなら娘を連れていくぜ。」
「お願いですから待ってください。娘だけは許してください。」
母娘が借金取りに迫られているようで返せないなら娘を連れていくようだ。
強引な取り立てをしているようで、孤児院の件といい子供を集めてるのかな?
とりあえずアイリスに仲裁に行ってもらう。
こんな時は騎士の肩書は効果があるね。
「一体何の騒ぎですか?」
「ああ、騎士様どうか助けてください。」
「関係ないやつはすっこんでろ。これは俺とこいつらの話し合いなんだ。」
「それにしては穏やかでないですね。まだ期限の残っている借金に子供を連れて行こうとするのはいかがなものかと思いますが。」
アイリスの登場で相手は焦りを見せている。
「借金してる方が悪いだろ。それをいつ取り立てようと勝手だろ。」
「しかしまだ期限はあるんですよね。じゃあ悪いのはあなたということになりますね。そして契約違反ではないんですか。」
「急に期限がかわったんだよ。」
「そんなことを言ったら契約の意味はないでしょう。」
「あんたには関係のないことだろう。いいからもう帰ってくれよ。」
「わかりました。あなたが帰ったら私も帰りましょう。」
アイリスが引かないと思ったからか男は悪態をついて帰っていった。
母娘にお礼を言われてアイリスが戻ってきた。
「さすがに騎士の肩書は伊達じゃないな。」
「こんな事は警備隊の仕事なんですけど。」
「いいじゃないか。役に立ったんだから。それに警備隊も忙しいのか来ないみたいだし。」
「困ったものです。」
「じゃあ日も暮れそうだし帰ろうか。」
城へと帰って夕食の支度をする。
最近は寒さが厳しくなってきてるから鍋を作ろうと思う。
材料を切って皿に盛り付ける。
今回はコッコで出汁をとって、肉はオーク肉を部位ごとに薄切りにして、コッコはひき肉にしてすりおろした生姜とニンニク、ネギ、酒、醬油を混ぜて肉団子にしておく。
さて準備はできたのでまずは部屋に持っていく。
コンロは錬金で作った携帯用を使用する。
コンロに気鉱石(白)をセットして鍋をおく。
具材を投入して蓋をしてあとはユカに任せておく。
今日はこの部屋にカティアとプリシア、グスタフも来ている。
グスタフは仕事はいいのだろうか。
ユカ以外は鍋を知らないので不思議そうにみていたよ。
さてもう一つは王族用の食卓へと持っていく。
ミリアリアさん、リーナ、シズクさん、セバスさん、リリスとリリイ、アンジェリカが待っていた。
「今日は変わったものを出してくれるそうだの。」
「ええ鍋という料理です。寒い日には最高ですよ。」
携帯コンロを取り出して鍋を火にかける。
出汁があったまっって来たので具材を投入して煮る。
段々といい匂いが漂っていく。
「いい匂いですわ。」と言いながらリーナのお腹が鳴った。
恥ずかしそうに下を向くリーナが可愛い。
自家製ポン酢を器に入れて配り、煮えたらそれぞれに掬って配っていくと先にセバスさんが食べる。
「大変美味しいですな。」
「お好みでポン酢を加えて食べてくださいね。」
セバスさんの毒見が終わりみんな器を手にする。
「「「「「いただきます。」」」」」
「出汁が効いていてとても美味しいです。」
「私はポン酢をたっぷりがいいですね。」
「妾はポン酢を少しが丁度良い。」
「にい、美味しい。」
「義兄様、もっとポン酢が欲しいです。」
好みはそれぞれだけど好評のようだがリリスだけはポン酢を入れすぎではないだろうか。
さてでは久しぶりの鍋を味わうとしますか。
うん、出汁が良く出てるし具材からのエキスも相まってうまい。
鍋は具材を入れるごとに美味しくなっていくんだよね。
「おかわりをお願いできますか。」
最初はセバスさんだった。
「私もお願いします。できたら団子を多めで。」
「リーナ、それはずるいですよ。」
「具材はまだまだありますから大丈夫ですよ。」
「妾は肉を多めで頼む。」
みんなにおかわりをよそっていく。
具材がなくなったので締めの雑炊を作る。
これもお好みでポン酢を使ってもらう。
出汁が効いているから十分美味しいけどね。
一通り食べ終わったので片付けて、食後のお茶を入れ、デザートにプリンを取り出して配る。
「久しぶりのプリンではないか。」
「偶にはデザートを食べながら話をしませんか。」
「何かあったんですか。」
「実は・・・・・・。」
この間からの孤児院の件と今日の借金取りの件を話していく。
「そんなことがあったんですね。」
「いろいろ重なっている今が好機だと思った貴族がいるのやもしれんの。」
「いろいろとは?」
「1つはエルフィナが騎士団と出てしまっていること。2つ目にアヅチ帝国の内乱で難民が増えていて警備隊の手が回っていない、3つ目は冬支度でどこも忙しいかの。」
「特にエルフィナ義伯母上がいないのが一番大きいですね。義伯母上がいると貴族の持つ私兵なんて意味がないです。そのことをこの王都に住む貴族はよく理解していますから。」
そう言われると納得できる。
特にこの王都でやましいことを企むやつからしたら、エルフィナさんがいない今は好機到来と思うよね。
まあ孤児院はムサシさんがいるから手出しは出来なくなるだろう。
「ところでミナト明日、明後日は暇かしら?」
「特に予定はないけど。」
「よかったわ。明日で新米騎士の訓練が最後だから一緒に見に行きませんか。」
「そうなんだ。それは面白そうだ。是非行きたいね。」
「じゃあ明日朝食後にミナトの部屋に行きますね。」
というやり取りを楽しそうにミリアリアさんが見ていた。
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