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ムサシさんが恋をした

49話



次の日、プリシアとミレイヌを呼んでアイリスを紹介した。


同じスキル持ちなので話を聞いてあげてとお願いしておいた。


だから護衛にはレインを連れて出かけることにしたら、暇を持て余すムサシさんが一緒についてきた。


「拙者ここの食事はとても気に入ったでござるがやることがないのも困りものでござる。」とのこと。


孤児院に様子を見に行くだけなのだけど、暇つぶしになるならそれもいいかと思う。


孤児院に向かう途中で商店街へと寄って差し入れできそうなものを見繕う。


そうして孤児院に着いたら何やらトラブルの予感。


いつもは活気がない感じだけど今日は、チンピラっぽいのが孤児院の敷地内に複数いる。


とりあえず様子を見ながら敷地内へと入っていくと


「俺たちがこの孤児院を援助してやるって言ってんだよ。」


「結構です。あなたたちみたいなのがここに来ると子供たちが怖がりますから帰ってください。」


どうやらこのチンピラに対応しているのはアンさんのようだ。


奥の建物から覗いている子供たちが見えている。


「こっちの善意に対して帰れはないんじゃないかい。」


「では具体的にどう援助してくださるというのですか。」


「俺たちが孤児院に入って一緒に暮らしながら子供たちの里親を探してやるのよ。そうしたらここにも金が入って俺たちも楽しい思いができていいだろう。」


「そんなのはお断りです。どうせ子供たちを欲しがる変態貴族に渡すのが目的なんでしょう。」


図星をつかれたのか話をしているチンピラが焦っているように見える。


「そんなことはねえよ。本当に善意で里親をだな。」


「ここの運営は院長が頑張ってくださっているので大丈夫です。それに支援してくれる方もいますから。」


「な、なんだとそれはどこのどいつだ。支援されているなんて話は聞いてないぞ。」


「どこの誰でもいいでしょう。あなたたちには関係ありませんから。帰ってください。」


「糞、こうなったら無理矢理でも押し入ってやる。ついでにあんたも俺たちのおもちゃにしてやるぜ。」


そう言ってチンピラがアンさんの手をつかむ。


「きゃあ、やめてください。」


止めに入ろうとした瞬間、俺よりも早くムサシさんが動いた。


ムサシさんは一瞬で移動してチンピラの手をひねり上げる。


「嫌がる女性に手を出そうとは見逃せるものではないでござるな。」


「いででででで。だれだてめえ。」


「拙者は通りがかりの侍でござるよ。痛い目にあいたくなければ帰るでござる。」


「てめえらこいつをやっちまえ。」


とチンピラが叫ぶが部下は既にレインによって制圧されている。


「起きているのはお主だけでござるよ。」


「なっ。ち、ちくしょう覚えてやがれ。」


捨て台詞を残してチンピラは走っていった。


倒したチンピラの処理はレインに任せておいた。


「あの助けてくださってありがとうございました。私はアンと言います。」


アンさんがお礼を言うので


「なあに大したことはござらんよ。」


そう言って振り返ったムサシさんが急に挙動不審になる。


「せ、せ、拙者はムサシというものでござる。き、今日はあちらのミナト殿の付き合いできたでござるよ。」


ムサシさんがこちらを手で示す。


「まあミナトさんようこそ。」


こちらに気づいたアンさんが声をかけてくれたので近づいていく。


「たまたま、様子を見にきたんですけどさっきのは誰だったんですか?」


「私にもよくわかりません。でも孤児院の子供を狙って貴族の子飼いのチンピラはたまに来るので、今回もその手合いかと思います。いつもは院長が追い返すんですけど今日はちょっと出かけていて。ムサシさんのおかげで助かりました。」


「い、いやいや。せ、拙者は大したことはしてないでござる。」


ムサシさんのこんな姿は初めてだ。


「ムサシさんは謙遜なお侍様なのですね。」


そう言われて照れているムサシさん。


「とりあえずお邪魔しても大丈夫ですか。」


「ああすいません。表にいるのも変ですよね。どうぞ中へ入ってください。」


「お邪魔するでござる。」


中に入ると前に会ったレンちゃんが迎えてくれた。


「お兄さんいらっしゃい。」


そう言って足に抱き着いてくる。


「やあレンちゃん。」そう言って頭をなでなでしてあげると嬉しそうだ。


みんながいる部屋に行ってクッキーを出してあげると子供たちが群がってくる。


「こらこら、あなたたちきちんとミナトさんにお礼を言ってから順番に並びなさい。」


「「「ミナトさんありがとうございます。」」」


アンさんが注意するとみんなでお礼を言って順番に並んでいく。


「はいはい。急がなくてもみんなの分はちゃんとあるからね。」


全員に配り終えるとアンさんにも渡してお茶を飲む。


「さっきみたいな輩はよく来るんですか?」


「そんなにはきませんよ。今日みたいに大勢で来るのは初めてのことです。」


「じゃあほんとにタイミングが良かったですね。」


「ええ本当に助かりました。まさか院長の不在時に来るなんて思ってなかったので。慌てて私が応対したのですけど私では追い返せず困ってました。」


「目的は子供たちということなんですかね?」


「そうだと思います。子供を売れっていう貴族は多いんです。」


「それはけしからん奴らでござるな。捕まえておいた方が良かったでござるかな。」


「いいえ、追い返してくださってよかったです。子供たちに怖い思いはさせたくはありませんから。」


「今日はもう来ないと思いますけど、院長が帰ってくるまではここにいますね。」


「それは助かりますわ。」


ということで院長が戻ってきた夕暮れ時まで子供たちと遊んですごした。


帰り道にムサシさんが神妙な顔つきで


「ミナト殿、一つ聞いてよいでござるか」と聞いてきた。


「そんなかしこまらなくても何でも聞いてください。」


「あの孤児院の、アン殿は結婚しているのでござろうか?」


「それは聞いたことがないですね。でも孤児院に住んでるみたいだし独身なんじゃないですか。それがどうかしたんですか。」


「言っても笑わないでござるか。」


「わらいませんよ。」


「拙者、初めて恋をしてしまったかもしれんでござる。」


「それはいいことじゃないですか。やはりアンさんですか。」


「そうでござる。これまで生きてきてこんな気持ちは初めてでござる。」


「そうなら応援しますよ。じゃあ明日からムサシさんが孤児院の用心棒になったらいいんじゃないですか。」


「どうやってでござろうか。」


「私が院長に掛け合いますよ。」


「ほんとでござるか。よろしく頼むでござるよ。」


「近い、近いですよ。ムサシさん。」


ムサシさんが勢い余って顔を近づけてくる。


そうして城に帰って夕食を作って部屋にもっていくと、少しすっきりしたような顔をしたアイリスが待っていた。


「ミナト様、プリシアとミレイヌを紹介してくださってありがとうございました。」


「少しは悩みが晴れたならいいんだけど。」


「まだ答えは出ませんが、少しだけ楽になりました。」


「じゃあ、夕食を食べようか。」


そういってテーブルにプレートとスープを並べていく。


「兄さん、うちもう腹ペコやねん。」


「それは急がないとね。」


レインがお茶を入れてくれてテーブルを囲んで


「「「「「いただきます。」」」」」


食事が終わってからすっかり忘れてたけどみんなにシルバータイガーの皮で作ったコートを渡していく。


「兄さん、こんなんもらってええのん。」


「兄様、ありがとうございます。」


「ミナト様、ありがとうございます。」


「ミナトさん、ありがとう。うれしい。」


「私までいただいてしまっていいんでしょうか。」


「だいぶ寒くなってきたからね。適当に使って。」


そう言ってからカティアとプリシアにも持っていく。


「「ミナト様、ありがとうございます(ですわ)。」」


次にリーナのところにいくとミリアリアさんがいた。


「どうかしましたかミナト。」


「寒くなってきたからこれを渡しておこうと思ってね。ミリアリアさんもどうぞ。」


2人にもシルバータイガーの皮で作ったコートを渡しておく。


「童も、もらってよいのか。」


「もちろんです。このコートの性能は寒さを防ぐだけじゃなくて、防刃性能も高いんですよ。」


「ありがとうミナト。」


「感謝するぞ。」


「喜んでもらえたならよかったです。では失礼しますね。」


そう言って部屋を後にして風呂に向かうと相変わらず待ち受けているカティアとプリシア。


今日は2人なのね。


最近はローテーションだったので珍しい。


「お待ちしていましたわミナト様。さっこちらへどうぞ。」


「いつも言ってるけど一人でできるからね。」


「それも私たちの仕事ですから。」


ということで今日もなされるがままになった。


読んでくださってありがとうございます。


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