帰ってきたら孤児院が大変なようです
46話
エルフィナ・エルウッドがマリンウッドの支援のため旅立ってから各責任者たちは大忙しだった。
処理すべき問題は毎日のようにやってくる。
エルフの多いこの国の責任者は当然エルフが多く、他の国に比べてより多くの経験を積んだ優秀な者たちが次々と書類を処理していく。
そんなエルウッドでも不正を働く者は必ず出てくる。
どれほどトップが優秀でも抜け道は必ずあるものだ。
特に自分が甘い蜜をすするためならば、他人が不幸になろうとどうでもいいと思っている貴族などは国の資金を自分に横流しするよう細工をするのは簡単にやってのける。
以前にミナトの介入によって上級貴族から下級貴族に落とされることになったダブリンなどはいい例である。
彼は以前ほどの権力は持ち合わせていないが、今も部下を使って甘い蜜をすすっている。
同様のことは多々あるが多忙のため見落とされている。
上司も忙しいが当然末端も超忙しいのである。
そしてそこに働くのは大半がそんな貴族の子供である。
能力がある者なら冬前にはさっさと出世してしまっている。
この役所に残っている大半は出世もできずにいるものばかりだ。
そんな役所にジャミスはきていた。
「先日お伺いした、孤児院運営の補助金の件なんですけど以前に比べてかなり少なくなってしまっているんですが、どういうことなんでしょうか。」
「私に言われましてもちょっとわかりかねます。」
「じゃあ誰に言えばわかるんですか?こちらは子供たちの命がかかってるんですよ。」
「でも補助金自体は入金されているんですよね。ならそれでなんとかしてください。」
「何とかなるなら何とかしています。これからどんどん寒くなるのに暖もとれません。みんな死んでしまいます。」
「じゃあ自分たちで木でも拾って燃やしたらいいんじゃないですか。」
職員は手を止めることもなく淡々と仕事している。
自分に害が及ぶわけではないのでどうでもいいのである。
「次の方が待っているからもういいですよね。」
そう言って追い返してしまう。
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学園都市から帰還してから3日が過ぎた。
まだ王都エルウッドにエルフィナさんは帰還しておらず、リオンはローウッド王国に戻った後だった。
ムサシさんとメリッサさんは城に部屋を用意されて客人扱いとなった。
アンジェリカはリリスとリリイと同じ部屋で過ごすようだ。
この3日間は馬車でうけたダメージを抜くために各々自由に過ごしていた。
そして今日からはみんな通常業務に戻っている。
リーナは公務にシズクさんはリーナの補佐に、カティアとプリシアは専属メイドとして、レインは護衛?、ユカ、チヨちゃんはメイド見習いとして活動を始めた。
俺はやりたいことがたくさんあるが、まずはメリッサさんからのプレッシャーがきついのでゼスト商会に行って会長を紹介しようと思う。
メリッサさんを連れてゼスト商会を訪れたが会長は留守で代わりにレオンさんが対応してくれた。
「ミナトさん戻ってきたんですね。」
「3日ほど前に帰ってきました。」
「ミナトさんのいない間にラーメンの醬油味のほうも大人気で売り上げもずっと右肩上がりですよ。まだ醬油味の方は2号店までしか出せてないのが残念です。」
「今日は実はこちらの学園都市で学園長をしているメリッサさんが、支店を出してほしいとのことで紹介に来たんですよ。」
「それはそれは。わたしはゼスト商会副会長のレオンと申します。」
「紹介どうり学園都市のアルカディア学園で学園長をやっているメリッサといいます。よろしくお願いします。」
「それで支店を出してほしいということですが具体的には?」
「我が学園都市及びにアルカディア学園の食堂でラーメンを出してほしいのです。私もまだ食していないが先ほど述べておられた醬油味のラーメンも含めて。」
「メリッサさんもラーメンの魅力に取りつかれたのですね。わかります。あれは素晴らしいものだ。」
「レオン殿もよくわかっていらっしゃる。」
そう言って2人は不気味な笑みを浮かべ始めた。
それからは2人で話を詰めていくみたいなので一言言ってお暇することにした。
ゼスト商会にはもっと色々な料理の紹介をしたいが、食材を定期的に仕入れるのが難しい。
その辺をなんとかしたいもんだ。
ゼスト商会を出て、商店街の方へと歩いて行くと怒鳴り声が聞こえてきた。
「さっさと帰れ。金もねえのにうちの前をうろつくんじゃねえ!」
何事かと思って声の方に行ってみると、野菜を売っているおっさんに怒鳴られている子供が見えた。
「あの、この子が何かしたんですか?」
「このガキがうちの商品のクズ切れでもいいから譲ってくれとうるさいから追っ払おうとしていたところだ。金もねえのに店の前で騒がれていい迷惑だ。」
「そうだったんですね。この子は私が説得しますからそんなに怒らないであげてください。」
「別にどっか行ってくれるなら何もしないよ。」
おっさんがそういうのでそこから子供を連れて路地へと入る。
「君、大丈夫かい。」
「あ、ありがとうございます。」
その子は下を向いてこっちを見ないが女の子っぽい。
がりがりに瘦せていて判別がしにくい。
「どうしてあの店にいたの?」
「あ、あの、その・・・・・・。」
「別に怒ったりしないから、お兄さんに話してみて。」
「み、みんなのご飯がないから。何か分けてもらえないかと思って。」
「みんなっていうのは何人くらいなんだい。」
「えっと、た、たくさんいます。」
もしかしたら孤児院の子供かもしれないが、あそこは国からの援助が再開されてるはずだからそんなに困ることはないはずだけど。
「よかったら、お兄さんを君の住んでるところに連れていってくれるかな?」
下を向いたままコクコクとうなづいて案内してくれる。
「ところで君の名前はなんていうのかな。」
「レンです。」
男の子か女の子か判断に迷う名前だ。
「レンか、いい名前だね。」
コクっとうなづいて進んでいく。
ついて行くと孤児院についた。
やはり孤児院の子供だったようだ。
孤児院は静まり返っていて活気がなく初めて訪れた時のようになっていた。
中に入っていくと「レンちゃん何処に行っていたの探したのよ。」と職員さんが出てきた。
レンちゃんが職員さんに駆け寄ってこちらを指さしている。
「気づかなくて申し訳ありません。そのどちら様でしょうか?」
「お久しぶりです。前に一度ここに来たミナトです。覚えておられませんか。」
「え、えーと、すいません。」
職員さんが困っている、おかしいなそんなに覚えにくい顔しているかな?
「前に来たときは女性を2人連れていたんですけど、覚えてませんか?」
「あ、あー、わかりました。あの時はお世話になりました。前よりも若くなっておられてわかりませんでした。」
そういえばレベルが上がって種族覚醒したから若くなったのを忘れていた。
「思い出してもらえたならよかったです。」
「そういえば名乗ってなかったですね。私はアンといいます。それで今日はどうかされましたか?」
「そこのレンちゃんに案内されて来たんですよ。」
「それはレンちゃんがお世話になってしまって、ありがとうございます。よければ院長に会っていってください。」
そう言って院長室へと連れて行ってくれた。
アンさんがノックして中に入ると頭を抱えている院長がいた。
「院長、ミナトさんが来られましたよ。」
そういって頭をあげた院長はこちらを見て
「どこにミナトさんがいらっしゃるのかしら。」と言う。
「お久しぶりです。院長さん。」
そういうとじーっとこちらをみて「あらミナトさんずいぶん若くなられましたね。わかりませんでした。」
「そんなに変わりましたかね?」
「ええもう全然違いますね。そういえばミナトさんに名乗ってませんでしたね。私エルウッド孤児院院長のジャミスといいます。名乗りが遅れて申し訳ありません。ところで今日はどうされましたか?」
「商店街でレンちゃんにあって、案内されてきたんですけど、なんかまた雰囲気が暗いですね。」
「実は前回ミナトさんが来てくださってからしばらくして補助金は再開されたんですけど、額がとてもじゃないですけど生活できるレベルではなくて、一度担当者に聞きに行ったんですけど額が減っている理由はわからないそうです。」
「それはおかしな話ですね。前に知り合いに聞いたときはかなりの額が出ていたと思ったんですけど。」
エルフィナさんから聞いた話では運営できない額ではなかったはずだけど、今はエルフィナさんがいないからどうにもできない。
どこかで不正がなされているとしてもどうしてあげることもできない。
「私たちはまあ我慢すればいいだけですからいいんですが、子供たちは成長期ですからしっかりと食べさせてあげたいんですけど、一日一食それもわずかしか食べさせてあげられなくて。」
よく見たら院長たちもかなりやせ細ってしまっている。
かなり深刻な状況に陥っているようだ。
「非常にお恥ずかしい話なんですけどまた少しでもいいので援助していただくことはできないでしょうか。」
院長がそう言いながら頭を下げてくる。
「頭をあげて下さい。そんなことをされなくても援助させていただきますよ。」
「ほんとうですか。ありがとうございます。」
「では少し待っていてもらえますか。」
そう言って一度孤児院を離れて路地裏でフルアーマーをきて冒険者ギルドへと向かう。
そしてギルドでオーク、ゴブリンロードなどの森の浅い部分にいるモンスターを買い取ってもらった。
金貨数百枚分を引き取ってもらってギルドを出る。
次に商店街に行って長持ちする野菜や芋、小麦粉を多めに購入してから孤児院へと戻った。
「院長とりあえずですが野菜とか買ってきたので保管庫に入れておきますね。」
「こんなに早くありがとうございます。」
「あと今日の分の食事も作っておきます。」
そういってコッコの骨で出汁をとった野菜スープをつくる。
あとは恒例のグスタフパンだ。
今回帰ってきたらたくさん渡されたのだ。
だいぶグスタフも腕をあげておいしくなったけどまだ硬いね。
あとはおまけでボアの肉で作ったベーコンを焼いて提供しよう。
もちろん保管庫にも塊を幾つか入れておいた。
それから院長室に戻って院長に金貨を100枚渡しておいた。
「これでしばらくはやっていけますかね?」
「こんなにたくさんいいんでしょうか。前のお礼もできていないのにありがとうございます。これだけあればしばらくは大丈夫だと思います。」
「それならよかったです。また手が空いたら偶に様子を見に来ますね。」
「ミナトさんならいつでも歓迎します。」
院長に見送られて孤児院を後にしたが、気になって仕方がなかった。
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