チュートリアルは終わらない 2
4話
ミナトが気を失ってから一日が過ぎた。
ようやくオーラ(気)の回復したミナトが目を覚ます。
「いてて、なんで俺は床で寝てたんだっけ?」
「ようやく起きたわね。ミナトはスキルにオーラ(気)を注ぎ込みすぎて倒れたのよ。覚えてないの?」
「そういえばそうだった。じゃあ早速ガチャを回してみるか。」
「そうね。何が出るか楽しみね。」
早速スキルを起動するとガチャポンがあらわれた。
ガチャポン画面には初回10連無料(お試し)とチャージ済みオーラ(気)の数値が出ている。
とりあえず初回無料分をやってみようとハンドルを回してみるとカプセルが転がってきて消えていく。
「カプセルが見えたけど出てこないぞ。」
「全部アイテムボックスに入ってるわよ。」
アイテムボックスを開いてみるとカプセル10と表示されている。
それを押すとカプセルのまま取り出すか中身だけか選べるようだ。
しかもアイテムボックス内で全部開封も可能らしい。
何が入っているのか気になるので一括開封してみると、パーツセットA×2、パーツセットC×2、パーツセットD、バッテリーパック、小麦粉、鍋の蓋、火打ち石、砂糖という結果だった。
「パーツセットってなんなんだ?それよりも砂糖とか出てきたがこれはありがたい。」
「初回からなかなかいいのが出てきたじゃない。砂糖ってそんなに嬉しいの?」
「こちらにきて調味料って塩しか見てないから嬉しいさ。もっと調味料がそろえばいろいろ料理ができる。そうしたらティピにも食べさせてあげるよ。」
「ふーん。楽しみにしてるわ。それはおいといてパーツセットを出してちょうだい。」
「この謎のパーツをどうするんだ?」
「これに気工錬金を使うのよ。」
そういうのでスキルを使用するとなんとル〇バみたいなユニットになった。
「これこそが気工師の真骨頂よ。」
と、どや顔するティピだがこちらはまだそのすごさがよくわかってないので反応に困る。
「・・・・・・んでこれは何ができるんだ?」
「なによその微妙な反応は。もっと喜びなさいよ。」
「喜べったって何ができるものかもわからないのに喜べないよ。」
「実際に使ってみるしかないわね。まずはこの子にオーラ(気)を注いでエネルギーを充電するのよ。」
ル〇バに手を当ててオーラ(気)を発動するとエネルギーが充電されていく。
ゲージが満タンになったらそれは動き出した。
そして何故か俺の周りをグルグル回っている。
なんだろう掃除されるんだろうかと考えていると
「じゃあその子を連れて森に行きましょ。」
と言うとティピは森へと向かって行くので後ろをついていく。
森につくとル〇バは勝手に動き出して奥へと入って行ってしまった。
「行っちゃったんだけど。」と見送っていると
「ちょっと待ってなさいな。」というので待っていると『薬草を入手しました』とマップに表示された。
「何もしてないのに薬草が手に入ったんだけど。」
「そうよ、あのユニットは自動でアイテム収集してくれるのよ。しかも充電が切れたら自動でアイテムボックスに帰るわ。さらにミナトのレベルが上がっていけばあの子の能力も上がって鉱石なんかも採掘できるようになるのよ。」
「すごいじゃないか。」
「でしょう。だからもっと喜びなさいよって言ったのよ。」
「こいつがあればアイテム集め放題じゃないか。しかも成長するときたもんだ。素晴らしすぎる。」
「そうよ、だからミナトはレベル上げとチャージを頑張って、どんどんガチャを回して他のタイプを作るのよ。そうすればチュートリアルクリアに近づけるわ。」
「そうなのか。よーし頑張るぞー。あっそうだこのユニットはG-1と名付けよう。」
「G-1ねいいんじゃない。」
そうして家に帰ってガチャポンにチャージする。
メーターが50まで貯まったので一気に回してみた。
結果はパーツセットA×5、パーツセットB×2、パーツセットC×4、パーツセットD×4、パーツセットE×4、砂糖×4、
バッテリーパック×6、小麦粉×4、胡椒×3、鉄屑×3、鉄板×3、茶葉×6、牛乳×2となった。
本当に色々出てくるガチャでビックリだ。
新たにパーツを組み合わせて気工錬金を試みたがパーツセットBの数が足りないようでうまくいかなかった。
それから3週間がたった。
レベルを上げつつ、ガチャポンにチャージして回してを繰り返しているとついにパーツの数が揃ったので、気工錬金をしてみると全長4メートルぐらいのライオンのようなユニットになった。
名称は機甲獅子となっている。
「カッコイイじゃないか。」と呟くとなんか嬉しそうにしている感じがする。
「早速、実力を見てみましょ。」
とティピが言うので、試しに森につれていくとあっさりとゴブリンを倒してしまった。
「申し分ない強さだよ。」というと嬉しそうにしっぽの部分が揺れている。
そいつにライオン型のユニットということでライガーと名付けその日からはライガーとの連携で戦うようにした。
しかしライガーが強すぎてついていけなかった。
悔しがって地面をたたいているとライガーが申し訳なさそうにしている。
「ミナトはもっとレベル上げないとね。」
とティピに言われ、訓練に熱が入るのだった。
それから2ヶ月が経過した。
レベル上げをしながら、ガチャポンにチャージをし、G-1を増やし、ライガーの強化をして過ごした。
特に3体になった気工師ガチャとGシリーズのおかげで薬草だけでなく木の実や果物、調味料も手に入るようになったことには本当に感謝したい。
おかげで食事の質が向上したので、やる気も上がった。
そしてこの期間で学んだことは基本的に戦闘はライガーに任せて自分は補助に徹することだった。
レベルが50になった時ティピがもっと森の奥へ行こうと言ってきた。
ライガーのおかげで戦闘も楽になり特に何も考えずに森の奥へと入っていった。
そこではゴブリンよりも大きなホブゴブリンが小隊と共に待ち受けていた。
「いよいよ次の敵はゴブリンリーダーより上のホブゴブリンよ。気合い入れていってね。」
「わかった。」と告げて戦闘に突入する。
ホブゴブリンの手前にはゴブリンリーダーが陣取っているがライガーにとっては敵ではない。
ライガーがゴブリンリーダーを相手にしている間にゴブリンアーチャーを投石でやっつけていく。
ゴブリンアーチャーを2体倒している間にライガーはゴブリンリーダーを倒し終えホブゴブリンに向かっていく。
流石にライガーでもホブゴブリンにはすんなり勝てず手こずっている。
なんとか援護しようと集中していると「ミナト後ろよ。」というティピの声で振り返るとこちらに突撃してくるホブゴブリンがみえた。
ホブゴブリンを迎え撃つために態勢を整えて身構えると横からゴブリンリーダーがあらわれて襲い掛かってくる。
そちらを棍棒で弾き飛ばすと目前にまで迫っていたホブゴブリンの攻撃をなんとか躱しその勢いのまま回り込んでホブゴブリンに棍棒で殴りつける。
しかしそれを防御されて後ろに下がるとゴブリンリーダーが合流し2対1になった。
先にゴブリンリーダーを倒そうと棍棒で突きを放ってゴブリンリーダーを飛ばすが追撃前にホブゴブリンが殴りかかってきたのでそれを後ろに跳んで躱す。
今度はホブゴブリンに突きを放つが躱されてしまい、逆にカウンターでパンチをくらってしまう。
5メートルくらい飛ばされるがすぐに立ち上がる。
しかしホブゴブリンが拳を振り下ろしてくるのが見えたので横に跳んで躱す。
地面に拳がめり込んだ隙をついてホブゴブリンに棍棒を振り下ろすとそれがクリティカルヒットしてホブゴブリンが倒れる。
後ろから突っ込んできたゴブリンリーダーを蹴り飛ばし、ホブゴブリンに追撃を加える。
ホブゴブリンが立ち上がる前に連続で突きを放つとついにホブゴブリンが倒れた。
それを見たゴブリンリーダーは逃げていった。
ダメージが大きいのでポーションを飲む。
身体が楽になったところでライガーのほうに向かうと3体のホブゴブリンが倒れており、現在2体と戦っていた。
ライガーに集中しているホブゴブリンの後ろから全力で棍棒を振り下ろす。
その一撃でホブゴブリンがよろめきライガーの斬撃が決まった。
ホブゴブリンが崩れ落ち、残り1体となった。
そのホブゴブリンもライガーの斬撃で倒すことができた。
「危なかったぁ。また死ぬかと思ったよ。」
「お疲れミナト。」
「お疲れティピ、ライガー、ホブゴブリンが出てくるなんて聞いてないよ。」
「あら、言ってなかったかしら。」
「この戦闘だけでレベルが55になったよ。ほんとライガーがいなかったらまた村長の家行きだったよ。」
「あらおめでとうミナト。何とかなったんだからいいじゃない。ほら、今日はホブゴブリンを回収してさっさとかえりましょ。」
そう言って先に飛んでいくティピ。
ホブゴブリンを回収しつつ後を追いかける。
ライガーをアイテムボックスに入れて回復させつつ帰途に就く。
帰ってからは身体を拭いてから塩、胡椒で味付けをしたオーク肉を焼いてパンに挟んでティピと食べた。
食後にホットミルクを飲んでゆっくりとしてから布団に入る。
日課のガチャポンにチャージをしていたらティピが話しかけてきた。
「ねぇミナト、このチュートリアルの終了条件知りたい?」
「どうしたんだ急に。」
「どうなの知りたい?」
「ちょっと前までは早く知りたかったけど、最近はどうでもいいって思ってる。」
「どうしてなの?」
「ちょっと前までの俺だったら今日のホブゴブリンにきっと殺されていただろう。でも最近はライガーがいてくれて戦闘は楽になったし、G-1達のおかげでポーションなんかも楽に手に入るし、ティピのおかげでそれなりに楽しく過ごせてるから。条件達成までゆっくりと強くなるのもいいかなって。」
「わたしもミナトがここにきてくれて毎日楽しいわよ。それにわたしがやらかしたこの世界で腐らずに頑張ってくれてるミナトに感謝してる。」
「やらかしたのは別に悪気があったわけじゃないんだろ。それにここにきてなくても日本と違ってモンスターのいる世界で生きていくために毎日騎士団の訓練に参加してたんだ。いきなりゴブリンに殺されるなんて思ってなかったけど死んでも生き返れるここで頑張らない理由がないよ。」
「そう言ってくれると助かるわ。」
「ありがとうティピ。こちらこそ感謝してる。あのまま騎士団の訓練に参加していてもここまで強くなるのにもっと時間がかかっただろうし。だから別に知らなくてもいいよ。」
「そうわかったわ。じゃあ言わない。」
そう言ってティピは布団に入ってきた。
「おやすみ。」